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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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月は沈み太陽が顔を出して空へと昇る。

私達は森から村へと戻り休養を取ることとした。

帰った当初は村の人達がこちらへと駆け寄ってきて怪我をした騎士や兵士に大丈夫だったのか心配をしてはくれたが途中であの獣人の野郎が前に出たせいで周囲の視線は全部そいつが持って行きやがった。


「王様がいるから大丈夫かぁ」とかいうどっからその根拠が出てくるのか分からない言葉で全ての行動がそいつに合わせるようになった。

寸のところまで騎士たちの治療をしてた者達は全て…医療をする衛生兵すらも持ってかれる。

それもこれもあの野郎が「宴の準備をしろーッ!」という掛け声をかけたからだ。


「不甲斐無い…がアレが傲慢の大罪…傲慢たる支配者よ…許せ嬢ちゃん」


そう私の足元にいる老兵が呟く。

私は衛生兵すらいなくなりテントの中ではその痛みに耐える声が響く兵達を癒す為に奮闘していた。


元々身体が脆い私にとって攻撃が当たるなんてことがあれば致命傷になる。

それに『回生』を使えばどっかが欠損してても復活できる…それに一人行動の方が多い。

だからこそ今の今まで他者や自分を回復出来るような魔術は開発してこなかったんだがまさかこうも急に必要になるとは…。


近くにあるものや自分で持ってる知識や虚空庫に入ってるものでなんとかしていく。

虚空庫の中は古い武器や色物ばかりでポーションといった異世界特有の万能治療薬は数が少ない。

ここにあるのを使っても全員に行き届かない。


とりあえず綺麗な布にポーションを浸し痛む部分に巻きつける。

後は消毒用アルコールはない為酒をかけ火炙りにしたり酒に入れた暗殺用針に糸を巻きつけ一人一人の肌を縫う。


外からは村人達の宴を祝う声が聞こえてくる。

騎士や兵士は当主の声すら聞かず走り回り準備をしていく。

そしてアルキアンは獣人の野郎に連れられその当人は高笑いしながら村人や子供達に囲われている。


「いけすかねぇ…魔法陣展開『鎮痛陣』」


とりあえずは痛みを減らす為急遽構築した魔法陣を展開する。

効果としてはただの痛みを鈍くするといったあの悪魔の呪いをモチーフに作った代物なのだが…上手く行って良かったと安堵した。

効果がどんなもんか試してないから心配したがとりあえずかなり深手を負った兵達も苦悶の表情を無くし眠ったのでこれで良かったのだろう。


「嬢ちゃん…とりあえずおじちゃん達は大丈夫よ?後は動けるおじちゃん達が治療するから」


「こんなんでも一応は昔神官してたんだ…えーと主よ?汝の…汝の愛?あーとなんだったか?」


「おいおいアイン…テメェ昔っつっても何十年も前だろ?その主とやらも見放されてんじゃねーの?ハハッ」


私がテントの外を眺めると何かを察したのか今の今まで治療を受け地に伏せていた経験豊富そうな老兵が声をかけてくる。

そうして昔神官だったという老兵とそれを揶揄う兵士の掛け合いでテント内は段々と活気が戻り足や腹に穴が空いたりしてた者までもが昔神官だったからと適当な詠唱を始める。


そこからはもう私が入ることができない状況だ。

ある者は痛みがないからと踊り出したり他の兵士や騎士は自分の治療をする。

更には本当に神官だった者が詠唱したことで傷はみるみる治っていく…ことはなく切り傷程度が治っていく。


正にどんちゃん騒ぎになり入る余地すらなくなる。

だからこそ私は魔法陣はそのままに宴の準備をしている外へと出た。


傲慢たる支配者それがあの獣人の野郎の大罪の能力…厄介極まる能力だ。

能力としては指導者としての圧倒的なカリスマ性やその指示を出せば従いたくなるような声。

更にはその本人自身の自己中心的思考や突拍子も無い行動と相まってヤバさが増している。


「唯一の救いは…怪我人を率ようとは思ってないところか」


あの支配を受けてないのは怪我をしたやつらだ。

ということは支配できる範囲というのは本人の匙加減といった感じなのだろう。

それに当主にもあまり効いていないように見えたからある程度の力を持った者への影響力は下がるのかな?


何にせよ獣人らしく弱肉強食を体現しているような奴だ。

私に効いていないのを見て私が弱いと感じたからこそあの態度だと思えば納得…はできないが理解できる。

能力頼りに敵の強弱を決めてる感じか。


目を向けると未だ村の人や子供達は獣人の周りに集まっている。

あれは圧倒的なカリスマ性で集まっているのだろうかそれとも王族だから媚を売ろうという獣の本能なのだろうか?

何にせよ昨日と違い子供達は遊ばないし私の側には集まらない。


「さぁて…宴なんて料理以外興味ないし今はコレをどうするかだな」


誰も怪我をしている奴らを助けないでその怪我をしてる奴らは必死に生きようとしているのが目に留まりつい手助けしてしまったが…。

虚空庫から黄土色に光る宝玉と今もなお鼓動し続ける大きな心臓を取り出す。

本来なら当主様の物になる予定だったが恩赦としてこのワイバーンから取れる最高品質の物を貰い受けた。


未知の素材だから何をどうするか迷う。

どちらも錬金術に使えそうだがどうせなら私の専門分野とかに活かしたい。

そう思いながらその2つを見続ける。

村には灯りが燈され風は美味しそうな匂いを運び時は過ぎていった。


*今回使った魔術一覧*


『鎮痛陣』:痛みを和らげる結界を貼る。急遽作り出した魔術の為あまり痛みを和らげることはできない気休め用。

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