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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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大きな巨体が重力に従い地に沈み地震のような音を響かせる。

首と胴体が切り離されたアースワイバーンはアルキアンの炎により傷は焼かれ血すら零れ落ちない。

そして身体が真っ二つに斬られたワイバーンは…未だ息をし踏ん張りながらその場に立ち続ける。


「まさかまだ生きているとは…」


これまで散々馬鹿にしていたがあくまでも竜の一種というべきかワイバーンは斬られた部分に膨大な魔力を集め生命を維持している。

脚は動かないがそこにいるだけで圧倒的な威圧を放ちその眼光はこちらを睨みつけ魔素を掻き乱す。

死に際にその生存本能と竜の威厳を示すプライドが今の戦場の生きる者全ての視線を集めた。


今まで戦い傷を負う者や騎士によりその首に刃を入れられている竜、漁夫の利を狙いこちらのことをじっと見つめていた魔物さえ息を呑む。

そして時は来る…魔素がアースワイバーンに集まり始めたのだ。

こんな現象は今まで見られた中でもごく僅かだがその現象には記録が残っている。


「これは…『変異』か!?総員魔法を放てッ!」


ある者は脅威と見做し、ある者はその現象が神に見染められた事象として崇めるようになる。

その現象はいつ何処で何故起こるのかは不明であり魔物と対峙する冒険者や騎士がごく稀にみる光景。

ブルーボアのような亜種が生まれることは多くのボアの中で生まれた突然変異種として区分されているがこうやって生身のまま変化することは『変異』という。

変異した個体はその危険性は更に増すことが多い。


魔素が集まりそのワイバーンは形を変えていく。

私達もそれを止めるように剣を振りその変異を止めようとするが寸の所で今まで騎士によって制圧されていたワイバーンが暴れその攻撃を弾く。

それは正に死に物狂いになり傷つけまいという勢いで自ら魔法や攻撃に走る。

アースワイバーンには仲間意識なんてものは無いと言われていたが…。


そして魔素が集まり繭のようになっていたソレが破れる。

翼が繭を破り姿を表すアースワイバーンのように表面に岩が生えており飛ぶための翼膜が張られているがその翼の先端には手のような形状に鋭い爪が生えておりそれを使い繭を破く。

元々重厚だったまばらの岩の鎧は更に密度を高めた岩の鎧へとなり下にあるはずの鱗すら見えない。


中でも異彩を放つその変わった特色としてみられるのが額にある怪しく光り輝く黄土色の第三の瞳。

風貌だけで威圧を放ち睨まれているだけなのに呼吸が浅くなり緊張感が走る。

過去にこんな魔物は発見された事例は私が知る限りない完全に新しい何の情報もない魔物。


そうして完全に繭を剥ぎ姿を現したアースワイバーンは周りを見渡す。

周りには変異のため散っていった同胞の亡骸。

アースワイバーンは息を吸う。


「全隊員退避ィッ!」


「全員…伏せろッ!」


アルキアンと当主様の叫び声が聞こえそれと同時にそれは起こった。

空間は歪み大地は震えたり隆起し植物は自然の刃となり空を舞い身体に傷をつける。

その声で地を操りその地に生きる植物は声に応え動き出す。

アースワイバーンは大地を操る支配者へと成り上がった瞬間を私達は目にした。


同胞が地に伏せその生命が終わったことによる嘆きは未だ止まらずアースワイバーンは咆哮を上げる。

ドラゴンハートは周りの魔素を取り込み魔力を生み出すためその魔力に底を尽かさずその暴虐を振り翳す。


騎士は動けずアルキアンですら身体を黒い炎で包み咆哮に耐えるしか出来ない。

なら私はどうかと言うと…当然痛みは感じない為攻撃は可能だが咆哮のお陰でアルキアンと同じく動けないというか前に進めない。

ならば身体に魔力を回しうつ伏せの体勢維持し手を前に突き出す。


魔素が乱れ更にはドラゴンハートがあるせいか魔法陣を形成するのですら苦難する。

竜種に魔法は効きづらいと聞くが恐らくこれが原因だ…ドラゴンハートが魔素を吸い取るせいで効力が減衰するのだろう。

だったらその減衰すらも超える魔力を注いだ魔術を放てばいいだけのこと。


この世界の古今東西の歴史書や物語でも強大な魔法によって竜を死へと至らせたという逸話が多い。

例えそれが嘘偽りであっても私はそれを信じて術を放とう。


手を標準に保つためいつ何時でもアースワイバーンから離さず脚を使い地に食い込ませ小柄な私でも空へ放り出されないようにする。

後は全身を使い上体を持ち上げる…奪われそうになりながらも魔力を手に集め魔法陣を作り出す。


「少しは大人しくしろ…『星ノ呪縛』ッ!」


標準を合わせ掌から魔法を生み出し6本ほどの鎖が撃ち出されてアースワイバーンの咆哮をあげ無防備に天に向かって上げられている首や巨体を支える両足や翼に巻きつく。

本来なら足元に魔法陣を展開して星ノ呪縛の拘束力を高めたかったんだが近くに設置すればするほど魔素を吸われ効力が低下するのだからしょうがない。


このままだと魔力効率が悪くて魔力消費量が多い。

私の魔力とアースワイバーンの体力勝負となるが…現状維持だとヤバいな。

アースワイバーンは星ノ呪縛により少しは咆哮が弱まったものの動けるのは大罪の力を持つアルキアンぐらいだ。

他の騎士や兵士はまだ動けるほど弱めれてない。


「ハハハッ!そこの人族達よ今までよく耐えたな…この勇者王たる俺が来たぞッ!トウッ!」


私がどうしようかと思い悩んでいるとそんな声が聞こえた。

夜空の月光に照らされ空に姿が見える…黒の毛皮を羽織り手は大きな爪を持つ。

そしてその爪でアースワイバーンの顔を引き裂いた。

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