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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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アースワイバーンと騎士達は衝突し森全体に大きな音を響かせる。

先程まで戦っていた者達は下がらせて治療しているがその傷口は深く衛生兵がいなくては生きることすらできない。

だがアースワイバーンは未だその勢いを落とさず攻撃していくため怪我人は増えるばかりだ。


「「おおぉぉぉッ!」」


「決して手を止めるなッ!魔法部隊よーい…放てッ!」


当主であるレイアン様は先頭でその指揮を取りアースワイバーンの攻撃に対し鱗を撫でるように剣で添えて軌道をずらす。

一人で1体のアースワイバーンと対峙しながらも指示を出す。

目は明らかにワイバーンの方を向いているというのにまるで後ろのいやこの戦場全体を見通しているようだ。


「流石当主様だね…そろそろ僕らも参戦しようか?準備は出来たかい?」


横ではアルキアンがそう言いながら自らの鎧を着ている様子が見えた。

私とアルキアンは今まで離れたところから魔法や魔術での応戦をしているよう言われていたがここまで消耗戦になって前線で戦う人がいなくなっているようじゃ私達子供の目から見てもヤバいと言えるようにまでなった。


「それじゃあ行くよ…憤怒の炎よ形を成せ『瞋恚武装』」


アルキアンが纏う鎧の節々から炎が漏れ剣に纏わりつき大剣へと形を変える。

炎は空気に散りその炎すら形を変え短剣の様になり矢の如く飛ぶ。

私達が狙うのは1体のアースワイバーン…どうやっても私達では集団の猛攻を止めることはできないが1体の猛攻なら二人で止められる。


アルキアンの大剣は横に振られ騎士に攻撃していたその1体に当てられその鱗を燃やしながら後ろへと仰け反らせる。

私は飛翔の魔術で空を駆け仰け反って上を向いたその顔面に急降下しナイフを突き立てる。

落ちないよう身体に魔力を流し身体強化を行いその顔面に刃が少し刺さったそのナイフを掴む


これほど硬い鱗で土も纏っているせいで普通の刃での攻撃はあまり通らない。

アルキアンの炎での攻撃はそのアースワイバーンの鱗を焼き落とすとなると有効な手段とも言えるが力強く押し付けないと熱して斬るということができない。

なら私には何が出来る…こうやって重力による落下の勢いで少しは突き刺さったナイフがあるなら。


「その内側からぶっ壊すッ!我流戦闘術初ノ術『崩撃』ィ!」


腕に魔力を高速で回し掌に魔力を集中させる。

一瞬の緩みを手に今一度の全力をナイフに込めて握り締めその先端こそが身体の一部であり指先であると錯覚を。


そうして放たれた一撃は鈍いながらも大きな音を響かせ空気に振動を与える。

鱗はヒビが少し入るぐらいだがその下にある筋肉には衝撃が入ったようで振動による反射で更に大きく暴れ『ゴリュ』という嫌な音が聞こえた。

何か今の暴れた反動で内臓が捻れたのだろう…いたる所から血が吹き出して止まらない。


頭に重い一撃が入ったことでリミッターが外れたように狂い出し痛みで同族にその重厚な翼が釘を打つように打ち付けられる。

ひとしきり暴れ掻き乱しそうして血は頭に溜まり吐き出した。

未だ生命活動が終了していないのは仮にも竜であるからだろう。


だが暴れたせいで骨はボロボロで同族の硬い鱗に自らの鱗をぶつけていたせいか骨が飛び出ている。

竜だというのに凄い身体能力を持ちながら自分の力に耐えられない肉体を持つだからこそ亜竜は成り損ないの竜なのだ。


「今だ…皆の者奮起しドラゴンハートをくり抜いてしまえッ!」


レイアン様がそう言い目の前のワイバーンに剣を突き仰け反らせると大声を上げる。

地に伏せる兵士や騎士は立ち上がり手に剣を握り魔法部隊はより一層大きな声で詠唱を行う。


もう動けない亜竜には用事がない。

アルキアンと私は次のアースワイバーンへと手を伸ばす。

アースワイバーンは同胞が死んだことにより大きな咆哮を上げその中の2体が突進してくるが私は飛翔で空へと舞い上がり標準を合わせる。


属性は無を象徴する丸に視界上で座標を見定める。

その肉体がその行動の後どう動くのか予想し私が放つ魔術の軌道を修正…修正完了。


「魔法陣展開…魔星砲発射準備完了…座標再修正…3.2.1..今ッ!」


私が空に避けたことでその重量で同胞を踏み潰しながら突進しいるはずの私が空にいることを確認し更なる突進を試みようとターンしているところを狙う。

その巨体でターンするにはその場で足踏みし留まる瞬間がある…そこに一撃を喰らわせる。


魔法陣から発射された魔星砲は光を放ちその通った後に軌跡の残光を残して巨体のアースワイバーンへと撃ち込まれ体勢を崩させる。

その瞬間を待ってたように黒い炎はその2体の身体を包み込む。

炎は鎖のようになりアースワイバーンを縛り付け鱗を焦がして高温が内部に伝わりその重厚の鎧の下にある肉を溶かす。

鎖から空に一つの火花が散りそこからアルキアンが大剣を持ち姿を現す。


「傷付く者の為潰れてしまえ…『烈怒破断』」


黒い大剣は黒い炎を更に纏い月を覆い隠す。

放たれ振り落とされたその大剣による一閃は1体のアースワイバーンの首を軽々と切り落とす。

落とされた地に黒い炎の旋風が巻き起こりその風に乗るようにして大剣は一回転し再び大剣は空を舞う。

そこから放たれた更なる一閃はもう1体のワイバーンの身体を真っ二つに裂いた。

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