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賢者ググレカスの優雅な日常 ~素敵な『賢者の館』ライフはじめました!~  作者: たまり
◆11章 灼熱の砂塵と勇者の逆襲 (ググレカスの大魔法 編)
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 ルゥまっしぐら

【お詫びと訂正のお知らせ】

昨日のタイトルの読みをなんと間違っておりました。

×慧眼(すいがん)

慧眼(けいがん)

こんな恥ずかしい間違いを皆さんはしないと思いますが、私のような生き恥を晒さないような立派な人間になってくださいね…(震え声)




 カシャリという乾いた音と共に、金属のオブジェが砂の上に落ちた。

 重みで半ば埋まった円筒形のリンゴほどの物体を、俺は指先でつついてから拾い上げた。


 ズシリとした感触と燻し銀のような光沢があり、表面には複雑にレンガを組み合わせたような文様が縦横に刻まれている。

 試しに魔力糸(マギワイヤー)で探ってみたが反応を示す様子は無い。呪詛や仕込みの魔法なども無く、ただの金属の塊だ。


 これが先ほどまで俺達を苦しめていた魔法生命体、ヤー・グゥチの「休眠体」とは俄かには信じがたい。


「完全に沈黙……というわけだ」


 俺は半笑いを浮かべて肩をすくめると、皆に見えるように高く掲げて見せた。


 ファリアもエルゴノートも、まさに「魔法のような」幕引きに呆気に取られるばかりだ。


「ググレ、終わった……のか!?」

「あの敵を一体どうやって?」

「そんな……そんな仕掛けがあるなんて……」


 エルゴノートにファリア、そしてレントミアも一様に戸惑いを口にする。

 それもそのはずだ。

 エルゴノートやファリアの物理攻撃では破壊不能な上に、魔法を完全に消滅させる能力を持った恐るべき太古の「戦術実験兵器」であったヤー・グゥチ。

 ルゥのような半獣人(これは「半魔法生命(・・・・・)」と呼んでいいだろう)に対しては「消滅」ではなく「一時停止」させることで無力化するという機能までも持っていたことになる。


「もう大丈夫のようだ。すまない。俺はぜんぜん役に立て無かったよ……」


 魔法が使えない状況下では分析もままならず、「魔法は消滅させる」「スライムなどの魔物も消滅させる」「半獣人やエルフは無力化(・・・)する」という機能を持ってることまでは知る由も無かった。

 倒れたルゥを目の当たりにして、てっきり命を奪われてしまったと半ば混乱し、冷静な判断も出来ず、本来は俺の役目であるはずの「一歩引いて考える賢者」としての役目を果たせなかった。

 

 戦闘のプロを自認していたディカマランの英雄達も同様で、いつのまにか「倒す」事ばかりに固着し完全に頭に血が上っていた。


 しかし――それが、冷静なリオラの観察眼で救われたのだ。


「そんなことないよググレ」

「あぁ! ググレは良くがんばったじゃないか」


「みんな……」


 ファリアやレントミアの声に俺は救われた気持ちになった。


「確かに停める方法が無くては、困りますものね……。でも、誰も気づきませんわ、あんな仕掛け」

 肩に舞い戻ったメティウスは俺を慰めるように言った。


「まぁな。だが俺はもう少し……どんな時も冷静になれなければダメだ」


 ――またこんな事があったら、その時こそ本当に仲間を失いかねないから……。


 俺はそんな思いを胸に、魔法生命体(ヤー・グゥチ)の休眠体を腰の袋に仕舞いこんだ。

 賢者の館に持ち帰り、実験室(ラボ)でいろいろと調べたい。


 ――賢者さまの便利道具(ガジェット)と似てますね。

 

 そんな一言で俺達を救ってくれたのは、普通の女の子のリオラだった。

 離れた場所から冷静に、そして自分の目線で物事を見ていたからこそ気がつけた。


「リオラ、ありがとう本当に助かったよ」

「いえ。そんな、私は別に何も……」


 照れたように、平服の裾を指で伸ばしたりつまんだり……。

 俺は「よしよし」と自然にリオラの頭を撫でていた。


 以前「撫でてください」と言ったとおり、リオラはそうやって褒めてやると喜ぶからだ。


 サラサラと柔らかい栗毛を指先に感じながら撫で、頭の後ろに手を滑らせてワシワシっと首根っこを揉みほぐしてやった。

「ひゃぅ!」

 リオラはくすぐったそうに身をよじると、子供みたいに笑いながら逃げた。

 その様子はやっぱり俺よりも3つ年下の「妹」という感じでて可愛い。


「そうだ……エルゴノート、ファリア」

 俺はくるり、と勇者と女戦士に向き直って一つ気になった事を尋ねてみる。


「格闘戦のとき、背中の窪みやレバーに気がつかなかった?」


「……んー? うーん。すまない」


 エルゴノートがしどろもどろする。筋肉がしゅんと小さくなって、先ほどまでの頼りになる筋肉兄貴とは一転して見えた。


「いや! いいんだ。ゴメン。別に攻めてるわけじゃないんだよ……」


 俺は頬を掻いた。

 ファリアも同じように気がつかなかったらしい。

 エルゴノートも必死だったのだ。未知の敵にファリアと共に果敢にも肉弾戦を挑んでくれたのだ。俺なんかたった二発のヘナチョコパンチで拳が痛くなってしまったというのに……。


「ともあれみんな、ありがとうな!」


 と――、


「復活。ルゥの魔法が解けたの!」


 マニュフェルノの弾んだ声に俺達は振り返った。

 そこには、照れたような笑みを浮かべる猫耳の剣士(サーベリア)――ルゥローニィが立っていた。


「ググレ殿、心配……かけたでござるね」


「ルゥ!」

「おぉ! 気がついたか!」

「ルゥローニィ!」


 少しふらついてはいるがスピアルノに肩を貸してもらい、ルゥはしっかりと立っていた。

「ルゥ猫、まだフラフラするっス?」

「大丈夫でござる。ありがとうスッピ」


 そう言ってルゥは一人で歩き、俺達の方やってきた。


「面目ないでござる。ググレ殿が逃げろと言っていたのでござるが、拙者……」


 すまなそうに俯いて、けれどすぐに顔を上げて。


「ググレ殿が来てくれたから、つい強気になって……しまったでござる」

 

 しゅんっ、と猫耳が垂れる。

 俺の姿を見た事で安心し、それが逆に隙を作ってしまったのだ。

 敵に対して集中しているいつものルゥであれば、「妙な魔法の気配」を察した時点で、飛退く事だって出来たはずだ。


「ははは! まぁ気にするな!」

 エルゴノートが明るく笑い、ガッシとルゥの肩を抱く。ちなみにパンツ一丁だ。

 リオラとメティウスが両目を隠してきゃっきゃっと笑っているし、そろそろ何か着て欲しいところだ。


「ルゥ、何はともあれよかったよ。俺も本気で心配したんだぞ」

 俺はエルゴノートの反対側から手を伸ばしルゥの頭を撫でた。指先にふわふわとした猫毛が心地よい。


「エルゴ殿、ググレ殿……!」

「お前はマニュやスッピーを逃がすため踏ん張ったんだ。よくやったよ」

「にゃ……」

 嬉しそうにルゥは以前と変わらない笑みを浮かべた。

 

 エルゴノートが調子に乗って、もう片方の手でルゥの首の下をウニウニ撫でながら、猫耳を唇ではむはむと挟んだりする。

 ルゥもルゥで反射的に目をつぶり「にゃー」とか声を出し始める。


「お、おぃ!? ずるいぞエルゴ、俺にも撫でさせてくれ!」


 俺も思わずネコスイッチ(?)が入り、ルゥの頬にすりすりと顔を寄せる。お日様の下にいたネコの匂いがほんのりとして安心する。


「あー、いいなこれ」

「うんうん、いいな」

 ネコ耳少年を愛でる半裸の勇者と賢者という図は、きっと平和を絵に描いたような勝利の光景に他ならないだろう。

「にゃ、にゃぁあ!? く、くすぐったいでござるよ二人ともっ」


「ルゥ猫……みんなに、愛されてるっスね……」


 スピアルノが半眼でつぶやく横で、マニュフェルノは濁った瞳で口元には妙な笑みを浮かべている。


「保存。この図は脳内で名前をつけて……保存!」


 平和な光景をスケッチブック代わりに脳内に保存するつもりらしい。

 強い日差しの下でメガネを光らせて興奮している様子のマニュだが……なんなんだ?


「ルゥ猫! なんでそんなにウットリしてるッス!?」

「もうッ! ググレ! いつまでやってんの!?」


 スピアルノとレントミアが半ギレでエルゴノートと俺の袖を引いた。

 

 ――と、いいところでプラムからの水晶ペンダント通信が入った。


『ググレさま、ぐぐれさまー!』


「プラム、長く待たせてすまなかったな。もう終わったからな、今そっちに皆で戻るよ」


『はいなのですー。でも、お客さまなのですよー?』


「お客……さま?」


 誰だろうか? 

 もしかして王都インクラムドの住民代表か? 賢者の館は広場の入り口で待機したままだ。

 解放軍が来たかのように気勢を上げていた住人達は、アーキテクトとの戦いが始まった途端クモの子を散らすように逃げてしまっていた。


『えーと、目玉のトンガリ帽子のおじさんですー』


「サウザウト・ヨルムーザぁ!?」


 俺は素っ頓狂な声をあげていた。

 

<つづく>


【作者よりの御礼】

なんとkoguma009さまよりレビューを頂きました!

心の篭ったレビューありがとうございますう!


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