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聖女殺しの恋 ―死に戻り悪女が妹聖女のキスで目覚めたら―  作者: 幽八花あかね
【二】二・星降る夜の加護と帝国の呪い

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121. 流星祭と新たな出会い〈8〉願い

 髪色に合わせた深緑色の甚平を着たドラコに、東国の花柄の浴衣を着た、薔薇色の髪のイラリア。


 大事なふたりの家族の姿に、なんだろう、遠い昔の()()の姿が被る。


 ――わかりやすい恰好……お忍びには向かないわね?


 イラリアの希望に乗って、家族三人とも珍しいお洒落をしてみたけれど。もっと地味でおとなしい恰好をしていた方が良かったのかもしれない。


 ――油断しているわね、オフィーリア。王女たる者、もっと警戒しなくては駄目よ。


 そう、心の中でエレオノーラが言っている、気がした。幻聴かもしれない。今更の心配を、前世の彼女のせいにしたい、ただの私の逃避かもしれない。


「……ところで、ジェームズ先生?」

「なんだ、イラリア」

「もしかして私の姉さまに触りました……?」

「じぇい? ままぇ?」


 イラリアは、にっこり顔で凄んでみせた。薔薇姫らしい笑顔の裏に、禍々しい気配を感じる。


「は? おまえが嫉妬するようなことはしていないが? ここまで連れてくるためと、不審者から遠ざけるためには触れた。手や腕、あとは肩と背中くらいだな。何も咎められることはしていない」

「ふーーん……随分と長く触れていたのでしょうか……先生の匂いが残っていたようですが……しかも『していない』って二回も言いましたね? 怪しい……」

「ふうん……あやしぃ……」


 イラリアの真似っ子か、ドラコがちょっと低い声をして彼女に続く。……可愛い。親馬鹿の自覚はあるけど、とっても可愛い。


 ――って、我が子に萌えている場合じゃないわ。誤解を解かなくちゃ。


「イラリア、言いがかりは止めて。先生の誠実さは、貴女も知っているところでしょう。本当に、私を守ってくださっただけよ」

「じゃあ、不審者って何のこと? 誤魔化しじゃないの?」

「話すと長くなるんだけど……」

「シルビアの同期だと名乗るやつと、シルビアを先輩と呼ぶやつが来て。秘密職のことまで明かして去っていった。その前者が不審者だ。意味わからんことを言ってオフィーリアに絡んできた」

「報告ありがとう、兄さん。その者らの名前は?」


 イラリアと距離をとらせるように、シルビアさんがジェームズ先生の肩を掴む。数歩下がらせる。


 暴走しはじめたイラリアを止めるのはなかなか骨が折れるが、こうしてちゃんとした大人がいるとありがたい。頼りになるものだ。


 シルビアさんに伝えるべきことを端的にまとめてくれた、ジェームズ先生も助かった。


「グラツィア・ゼアシスルと、キアラ・シャルデン。後者は身分証を見せてきた」

「その名を騙った者でなければ、私の同僚で間違いなさそうね。ふむ、グラツィアか……。まあ、今は置いておいて。とりあえず、呪いのことは、今すぐに何か起きるわけじゃないから解散でよし、と。お騒がせしました、オフィーリアさん」

「いえ、お疲れ様です……。ありがとうございました。シルビアさんも、先生も」

「ふたりとは、また後日、ということになるのかしらね。今夜のところは、兄さんと私はお暇するわ。――じゃあね、ドラコくん。ばいばい」

「ばいばい! しゅびあ、じぇい!」

「ああ、ばいばい。オフィーリアとイラリアも、じゃあな。また学校かどこかで」

「あ、はい! また……」

「シルビアさん、また今度〜!」


 あっさりと去っていくジェームズ先生とシルビアさんを見送って、私たちは三人きりになる。


「フィフィ姉さま」

「イラリア、最近ちょっと重いわよ。過度な嫉妬は美しくない」

「ゔっ……ごめんなさい」

「ドラコはいい子にしていたみたいでよかったわ。よしよし。またお菓子を買いましょうか」

「ん!」

「ね、姉さまっ、私の分は!?」

「仕方ないから買ってあげるわ。――行きましょう、ふたりとも」

「はい!」

「あい!」


 イラリアにドラコを抱いてもらったまま、私たちは、お店が並ぶ通りに戻った。またお菓子をたくさん買って、みんなで食べながら歩く。


 ――万が一は、ある、から。精霊の加護が強い、流星祭の日でも。


 さっきの妙な幻聴もどきのせいか、なんとなく不安になったから。不埒者が現れたらいつでも応じられるよう、警戒しながら人混みの中にいる。


「あ、流星――本格的に降りはじめたようです」

「あら、本当?」

「はい! ドラコも見てみて、お空! 流れ星がいっぱい!」

「にゃがれぼしー!」


 見上げると、数多の星が流れていた。


「ドラコ、あらためて、お誕生日おめでとう」

「ん! ありがと、ままぇ!」


 ――みんなが元気に過ごせますように。あわよくば、ドラコが大人になるまで、私も生きられますように。


 静かに願いをかけ、ドラコの頭を撫でる。ついでにイラリアの頭も撫でる。


 一年前は、こんなふうに、お祭りに出かけたりはしていなかった。


 イラリアが死の眠りについていたから、私は引きこもりで。ドラコを外で遊ばせてやれることも、なかなか、なくて……。


「愛しているわ、ふたりとも」

「私も、姉さまとドラコを愛してますよ〜!」

「どらこも!」


 今年も、たくさんの星が降る。

 たくさんの人が、星に願いをかけている。



――〈作者より〉――


お待たせしました。

121話です。


流星祭編おわりです!

(クララとレオンも出る…っていつかのあとがきで言ったような気がしないでもないんですが、そういえば出なかったので、次話以降どこかの回想で入れておきます)


次からは帝国の皇子とお見合いです〜

よろしくお願いします!



※追記

お待たせしております。また更新できておらず、申し訳ございません。12月は頑張りたいです…今週こそ…

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