12月26日 ゴールド
12月26日
ゴールド
Gold
#E6B422
R:230 G:180 B:34
12月26日 ゴールド
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「あなたが落とした鍋はこちらの銀の鍋ですか?」
「いや違う。そんなめんどくさいやつじゃない。」
女神は、一瞬ムッとした顔をしたが、そのまま泉の中へと戻っていった。そして、再び現れた時には、黄金に輝く鍋を手にしていた。
「では、あなたの落とした鍋はこちらの金の鍋ですか?」
「全然違う。いい加減にしてくれよ。さっさと俺の鍋を返してくれ。」
男はイライラとして、女神にむかって怒鳴り声をあげたのだった。
「俺の鍋はな、銅製の鍋なんだよ。そんな、キンキラしてるだけで、変形しやすくて、重い鍋なんか使えるか? ローン組んでやっとの思いで手に入れた『銅製お鍋・フライパン10点セット、今なら、もう1つオマケの鍋を付けちゃうぞ! 鍋の蓋と取っ手が外せる優れもの。ただいま混み合っております。あと30分で終了です。』のうちの一番使える鍋なんだよ! チクショウ! どうせオマケで付けてくれるんだったら、一番使える鍋を2つにしてくれりゃいいのに、おまけに付けられたのは小っせえミルクパンだったんだ。おい! 聞いてんのか?」
女神は、残念そうな顔をして言った。
「あの、やっぱり銅製の鍋っていいのですか? 私も欲しかったのだけど、10点セットは多過ぎて場所を取るから、躊躇してしまって……。使い込まれていて、いい感じのお鍋が泉の底に落ちてきたから、いただけるのなら、金の鍋も銀の鍋も、あと金の包丁と金のまな板と金のおしゃもじと金の菜箸、金のフライ返しも付けちゃいますけど……。」
男はあきれ返って言った。
「あんた料理なんかしてねえだろ。金なんて柔らか過ぎて、すぐ変形しちまうし、重くてあんたの細っこい腕じゃあ……。」
女神は、それに返して言った。
「私は、金銀の宝飾細工をつかさどる女神です。それなりに腕には自信がございます。この程度の重さなど大したことではありませんわ。」
写真は、鹿苑寺舎利殿「金閣」。
貴金属の金を想わせるオレンジがかった黄色。
掌編は、例の童話をベースにしたものなのですけど、なんで、女神の泉に鍋が落っこちたのか? とか、ツッコまないでやってください(願)。
女神が実は金銀の細工師だったとか、銅鍋欲しさに、使えない料理道具を押し付けようとしたとか、いろいろツッコミどころがあるのは、分かっています(汗)。




