12月8日 菜種油色
12月8日
菜種油色
なたねゆいろ
#A69425
R:166 G:148 B:37
12月8日 菜種油色
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暗がりの中、部屋の片隅で灯された火が、その周辺だけをほの明るく照らし出す。
貴重な油を無駄遣いしてはならないと分かっているが、どうしても、この文だけは、今夜のうちに読んでおきたかった。そして、返事もしたためたい。
お駒は、文の書かれた紙を手繰りながら、綴られた懐かしい字と紙の上で揺らめく炎の揺れを、目で追った。
「兄上、お懐かしゅうございます。」
火皿の中の黄色がかった液体は、まだ少しばかり余裕があるようだった。お駒は、素早く確かめてから、行灯の風よけを下ろした。
どこからか入ってくる隙間風が、一瞬、足元を通り抜けた。
お駒は、思わず身を震わせた。
そして、筆を取り、心配をかけないように慎重に言葉を選びつつ、兄とその友人である悠左衛門を想いながら、巻紙に文字を書き連ねていった。
写真は、行灯。ただし、現代の電灯が入ったタイプです。
江戸時代の代表的な照明器具行灯。
高価な蝋燭よりも安価な菜種油、さらにはイワシ油などが使われることが多かったようです。
その菜種油、アブラナの種から取られた植物油の、緑がかった濃い黄色。
今では、菜種油が灯油として用いられることは、ほとんどないと思われます。
が、一部で、てんぷら油として使われた後の廃油は、リサイクルされてバスの燃料などに使われたりしているとか。もっと、こういう試みは、広がっていくといいなと思います。




