11月21日 ペールサロー
11月21日
ペールサロー
Pale Sallow
#C8CEAC
R:200 G:206 B:172
11月21日 ペールサロー
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「ねこが生える木、ですか? それってネコヤナギのことですよね?」
俺は、ただちに依頼者に確認した。
そら、そうだよな。本気で、本当に、ねこが生えてくる木なんて……。
「違う。ネコヤナギじゃない。そのまんま、ねこが生えてくる木よ。その木を探してるの。」
俺は、二の句が継げなかった。そんな依頼、聞いたことがない。何かの冗談か?
「悪いけど、他をあたってくれませんか? ちょっと、こちらには、そういった特殊な植物についての知識を持ち合わせている者はいないんで。」
俺は、さっさと次の依頼を探すべく、掲示板の方へと移動しようとした。が、その依頼者は、俺の服の袖にしがみついてきた。ちびの割には結構、力が入っている。
「お願いします。どうしても、どうしても、ねこが生えてくる木を見つけなきゃならないの。他の人たちにも断られちゃって、もうお願いできる人が見つけられない……。」
とうとう依頼者は、わあわあ泣き出してしまった。ギルド内にいた職員やら、他の冒険者やら、依頼を出しに来ていた職人やらの視線が、一斉に集まる。痛い。
い、いや、そんな目で見ないでくださいよ。っていうか、他の冒険者連中! お前ら、断ったんだろ! 俺だけ悪者みたいなのって、ヒドくない?
しかも、俺の仲間であるはずの、緋色の髪の女剣士と銀髪の僧侶ときたら、まるで他人の振り。目を逸らしやがった。どういうこと?
「はあ。なんだって、そんな妙な木を探してるわけ? だいたい、聞いたことないんだけど。どっから仕入れた情報なのさ?」
仕方なく、俺の肘あたりにぶら下がるようにしているちっさな依頼者に問い返す。
「ずっと一緒だった私のねこが、1年前に虹を渡ってしまったんです。でも、ねこが生えてくる木を見つけられたら、また会えるって、おばあちゃんが……。」
……おばあちゃん情報ですか。
それは困りましたねぇ。
写真は、ネコヤナギの枝。
薄い柳色。淡く緑がかった灰色。
サロー(sallow)はヤナギのことらしいのです。
ヤナギというと、しだれ柳が思い浮かぶのですが、ヤナギの仲間は他にもいろいろあって、世界に約350種もあるそうです。
sallowという言葉は、やや古めかしい印象。古英語という表示がされていることもあります。
幹にサリチル酸が含まれていて、地域、時代によって、ヤナギの幹や葉、枝は、痛みをやわらげるために用いられたという記録があります。
ネコヤナギもヤナギの仲間ですね。花穂がモフモフ感溢れる、癒しの植物です(笑)。




