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11月9日 樺色

11月9日

樺色

かばいろ

#CD5E3C


R:205 G:94 B:60

11月9日 樺色

*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*


夕飯を終え、食器を片付けている最中に電話が鳴った。それは、実家の母からだった。

「横浜のみっちゃんと相談したんだけど、今度の七回忌は11月にってことになったの。週末だけど、こっちに来ることできる?」


祖母が亡くなってから、もうそんなにも時間が経ってしまったのか。

時の過ぎる速さを思わずにはいられなかった。

祖母が亡くなったのは1月だったが、法事というのは前倒しにすることは問題ないらしい。

そして、祖母の兄弟姉妹たちも、それなりの高齢者となっており、寒さの厳しい時期の法事は難しいという判断が働いたようだ。


「もう、蒲やさんもお店を閉めることになったしね。」

蒲や、というのは、祖母がひいきにしていた鰻屋である。

母の話だと、店主も高齢となって体力的に厳しいということと、結局のところ、跡継ぎがいないということで、今年の末には店を閉めることになったという連絡が来たそうだ。


祖母は、いつもニコニコしている穏やかな人だった。

そして、何か良いことがあると、決まって樺やの鰻重を食べに行っていた。


「父さんが好きだったからねえ。」

「父さんって、お祖父ちゃんのこと?」

祖父は、私が生まれる前に亡くなっており、よく知らないのだった。


「そう、もともと、あんたのお祖父ちゃんが鰻好きだったのよ。母さんはそれほど好きじゃなかったはずなんだけど、いつの間にか、お祝い事がある時は鰻ってことになってたのよね。」


もう10年以上前になるが、あれは何がきっかけだったのか、祖母に付き合って2人で樺やへ鰻を食べに行ったことを思い出した。帰り道、大きな人工池のある公園で休憩した祖母は、そこの水辺に生えていたガマの穂を数本失敬したのだ。

「これは、お祖父ちゃんへのお土産ね。」

確か、そう言っていた。

その時は、ガマの穂がお土産なんて、お祖父ちゃんは兎年だったのだろうかと思ったが、どうも、あれは鰻の代わりだったらしい。蒲焼きの蒲はガマの穂のことだというし。

ただ、お墓に供えるには変な花だし、結局持ち帰ったガマの穂はどうなったのか? 記憶ははっきりしないのだった。


挿絵(By みてみん)

写真は、ガマの穂とスイレンのある池。


樺桜の樹皮の色、もしくはガマの穂の色が由来になった赤みの強い茶色。

ガマは蒲の字が充てられるため、「蒲色」という表記が使われることもあります。


昔、鰻は串にさして丸焼きにしていたらしく、それがガマの穂に似ていたようです。

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