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11月3日 黒茶

11月3日

黒茶

くろちゃ

#583822


R:88 G:56 B:34

11月3日 黒茶

*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*


「あの、すみません。必ず家に連れて帰るので、今日の就業時間中、この子を置かせてもらえませんか?」

朝一番、段ボール箱を抱えたままの後輩の口から出た言葉は、それだった。

段ボール箱の中には何かがいるらしい。


「他の人のアレルギーとか把握してないから、独断でOK出せないよ。」

私は、そう答えた。

「そうですよね。どうしたらいいでしょうか?」


そう言われてもな。

「警備員室へ行って、訊いてみるしかないかなあ。置いておけそうな場所を知ってるとしたら、あそこのおっちゃんたちだろうし。」

思わず口にした言葉に、後輩の曇った顔は、一挙に晴れた。


「ありがとうございます。早速行って来ます。」

「って、中にいるの何? そもそも警備員のおっちゃんたちがアウトの可能性もあるんだし。」

「黒と茶の混じった子です。」

「はあ?」


段ボール箱の中身は、黒と茶の混じった毛に覆われたウサギだった。


「……警察に届けた方が良くない?」

「この子、落とし物だってことですか?」

「そもそも、どっから拾ってきたの?」

「第一駐車場の端っこに置かれてあったんです。最初っから、この段ボールに入ってました。」

「第一って、社内の駐車場ってこと? それは、落とし物の線は無いか。捨てられたんだな。はあ、ちょっと待ってて。」

私は、警備員室へ内線をかけた。


「おはようございます。総務の林です。あの、あさイチに大変申し訳ないのですけど、第一駐車場に、ウサギが捨てられていたみたいで。」

「うなぎ?」

「ウ、サ、ギ。植木鉢のウ、鮭茶漬けのサ、義理人情のギ、です。」

「生きてるの?」

「死んではいませんね。」

「それ警備対象になるんかなあ?」

「拾得物として警察に届けるべきですかね? 一応、引き取り希望者はいるんですけど。就業時間中は、どっか別の所にいてもらわないと……。」

私は、後輩の方をチラリと見た。後輩は頷きで返事をしてみせた。


「ウサギだってさ。」

「は?」

「駐車場に捨てウサギがいたらしい。」

「捨てウサギ。また珍しいもん見つけたなあ。ウサギって食パンの耳食べるんだっけ?」

受話器の向こうの、のんびりとしたおっちゃんたちの会話が聞こえた。何とかなりそうだ。


「とりあえず、警備員室に連れてきて。あ、ウサギ入れとく箱が要るか……。」

「大丈夫です。箱入りです。」

「箱入りなのに、捨てられちゃったのか。可哀想に。」

黒と茶色の塊は、とりあえずの居場所を確保したのだった。

挿絵(By みてみん)

写真は、ウサギ。


黒みがかった茶色。


ウサギは草食動物で、餌は牧草やペレットが良いらしいです。

食パンの耳は、やめた方がよいようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] こ、こげ茶色・・・?
2021/11/04 07:59 退会済み
管理
[良い点] ウサギが落ちていたら、ええ、間違いなく拾います。 毛皮の色に関係なく(*´ω`*) 以下妄想の世界へ~~
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