5月16日 ペールマスタード
5月16日
ペールマスタード
Pale Mustard
#A49627
R:164 G:150 B:39
5月16日 ペールマスタード
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「そのような事は聞いてはおらぬ。」
「それは、そちらの都合。我に文句を言うのは筋違いというものであろう。」
突如として、私の目の前で、2人が言い争いを始めてしまった。
金色の髪はサラサラとしていて艶やか、アイスブルーの瞳に形の良い口元。しかし、口を開くと、そこから紡ぎ出される言葉はピリリとしてやや辛辣。
フレデリック=フォン=ペールマスタードに関しては、それが、また良いというのが御令嬢方の間でのもっぱらの評判である。
そして一方は、流れるような漆黒の髪、やや緑がかったグレイの瞳にすっとした鼻筋。やはり、口から洩れる言葉はヒリヒリと氷のような冷たさだ。
エドヴァルド=フォン=ワサービは、東洋の血を引くという噂もあり、そのエキゾチックな顔立ちと、人を寄せ付けない雰囲気が、他の有象無象の輩の中にあって、清々しいというのが、やはり高貴な方々の間での定評となりつつあった。
その2人が何を言い争っているのかというと、今度、貴族院学校にて行われる舞踏会に、私、ビアンカ=ファナ=クインサーモンのパートナーとなるのはどちらであるか、ということなのだ。
実は、クインサーモン家は代々の当主が、ワサービ家当主と懇意にしてきたという経緯があり、エドヴァルドが私のパートナーとなるのは、ほぼ既定路線であったのだ。
しかしながら、貴族院学校に入学した頃から、素っ気ない態度を取りつつも、何かと私の行く先々に現れ、手助けをしてくれるフレデリックのことを、意識せずにはいられなくなっていたのも、これまた事実なのだ。
私にとっては、2人はともに、かけがえのない人物。
エドヴァルドは兄のような存在で、フレデリックは、なんというか、近くにいると体の奥が熱くなるような、心臓がドキドキするような、落ち着かない気分になるのだが、それは、決して嫌な気分ではなかった。
写真は粒マスタード。
濃くくすみがかった黄色。
さあ、サーモンに合うのは、マスタードか? ワサビか?
調理法にもよるけど……。




