19day3
陸地に向けて泳ぎきる、その頃には爆発音は止んでいた。
「菜々美大丈夫」
「うん」
菜々美の声は弱々しい、今にも溺れそうであった。
「紗枝上れる」
「ごめんあなたできそうにないよ」
だからすぐにでも陸地に上がりたかったが、海面が大分低くなってしまい、陸地まで大きな壁ができてしまっていた。
「乗り上げて座礁したからか」
船は浜に乗り上げたのではなく、コンクリートの上に乗り上げてしまっていた。だからなだらかになっているところはなく、また普段はここから上らないのかはしごがある場所もなかった。
「あなたもう少し待ってみる、これが引き潮なら」
「いや菜々美の体力が持たない」
もし今の状態が、引き潮であるなら少し待ち、満ち潮になってから陸地に上がると言う手段もあるだろう。だがそれでは体力が少ない菜々美は溺れてしまい、さらに言うならこれが満ち潮なら僕たちですら溺れてしまう恐れがあった。
「ならなだらかな所があるところまで泳ぐとか」
それも考えれそうであったが、そこまで泳ぐにしても、誰か1人で行くとしても結局菜々美の体力不足で危険なことが考えられた。なら菜々美を見捨てる。
「いやそれはダメだ」
嫌な考えが浮かんだが、振り払う。だがそれをすれば僕と紗枝は助かるだろう。
「あなた急に」
「いや独り言」
何か使えるものがないかと探す。そのときに気づいたのだが、少しずつ明るくなっていく。要するに夜中にコンテナが爆発し、それから大分時間がたっているらしかった。明るくなったのだから何かないかと探す。そして見つけた。
「ロープだ」
街灯にくくりつけられたロープを見つける。それはジュースを冷やしていたものだった。
「あそこまで泳ぐぞ」
「うん」
そこまでは10mもなくすぐにたどり着く。ロープに手を伸ばし、力強く引く。動くようなことはなく上れそうだ。
「菜々美上れる」
「パパ頑張ってみるよ」
菜々美がロープを使い上る。少し時間はかかったが上りきった。次に紗枝が上る。簡単に上りきる。最後に僕だ。ロープを使い体を水面から持ち上げる。ロープが嫌な音をたてる。
「おおっ」
リュックが重たくなる。水を吸っているのだろう、だがロープを体に引き寄せるようにしながら持ち上げる。
「あなたロープが」
「うおおぉぉぉぉ」
最後の力のようなものを出す。
「はあはぁはぁ」
陸地に上がることはできた。だがロープは海に沈んでいった。
「バイクのところに行こう」




