18day3
船の近くまで戻って来る。
「菜々美、ジュース取ってくるね」
「お願い」
菜々美がジュースをとってくる間、袋を準備する。と言っても用意はできているので、袋の反対側を繋ぐところを探すだけだ。
「紗枝なにかいいところない」
折れたりすることなく、なおかつ袋が海に入るくらいの距離にあるポールのようなものがあってほしい。
「あなたあれは」
そう言って紗枝は街灯を指差す。それは街灯であった。
「ちょうどいいか」
それは船がぶつかったときの衝撃のためか、海辺ギリギリに立っていた。近寄っていっても崩れる様子はなく、使えそうだ。
「よし縛るか」
街灯にロープを回し、固定する。結び方は2回ほど縛っておき簡単にはずれないようにしておき、菜々美を待つ。久しぶりに紗枝と2人きりになった気がする。
「紗枝これでよかったのかな」
「あなたが言うなら間違いはないよ」
「そう言われるのが1番心配なんだけど」
「あなた、ううん井上が言うから私はここまでやれたんだよ。井上はちゃんとやれてる」
「それならいいんだけど」
「不安なら私が」
「パパ、ママ持ってきたよ」
菜々美が何本かジュースを持ってくる。だからそれを受け取るのだが、紗枝は少し怒り気味だ。
「紗枝どうかした」
「ううん何でもないよあなた」
「それならいいけど」
紗枝のことは置いとくとして、ジュースを冷やす用意をする。と言っても袋に入れ、ゆっくりと海に浸すだけであるが。
「パパこれで終わり」
「うん、あとは待つだけ。ラジオでも聞いてようか」
「わかった」
海を眺めながら腰を下ろし、ラジオに耳を傾ける。
「さぁリスナーのみんな、リクエストは番号017513に電話してくれよ」
そして少し寂しげな、音楽が流れる。ラジオに文句を言うつもりはないが、何となく空気に合わない。せっかくなのでリクエストしてみる。
「あの」
「はいはい情報の提供かい、それともリクエストかい」
「陽気な曲をかけてくれない」
「陽気な曲、それだけ」
「それだけ」
「わかったぜ、それでラジオネームはどうするんだ」
「そこら辺のサラリーマンで」
「わかった」
リクエストが終わり、曲も終わる。
「さあ次はリクエスト曲だ、ラジオネームそこら辺のサラリーマンより陽気な曲をかけてほしいそうだ、じゃあ俺の好み出掛けてくぜ、まずはこの曲から」
陽気な曲に変わる、それを聞きながらジュースが冷えるのを待つ。
「パパあげてみてもいいかな」
5曲ほどの音楽が終わる頃菜々美はそう言い出す。
「ならあげてみようか」
そう言って引き上げ、袋からジュースを取り出すのだが、まだ冷えきってはいない。
「1晩待った方がいいかもね」
「そうみたいだね、菜々美待つよ」
と言うわけで1晩置いておくことにして拠点に戻った。




