14day5
山口に続いて、隠しシェルターの扉を潜る。するとそこは白で統一されていたり、ベッドが並べられていたりと上の病院の病室と一緒だが、薬の入ったロッカーや食料の入った段ボール、簡易トイレに風呂、テレビ用のモニター、ラジオ、それになぜかは知らないがカラオケセット、それにこの部屋だけ電気がついていた。
「あの筒より設備がいいだろう」
「筒って」
「スマホに表示されてる個人用シェルターだ」
「なるほど」
「あれじゃあ座ることはできても、体を伸ばせないからストレスが溜まるだろうが、ここならいくぶん動けるから最終日までのんびり過ごせるだろう」
山口はそういいながらベッドに身を投げる。
「それで誰か残ったりは」
「僕は残らない」
「井上が残らないなら私も」
「パパとママが残らないなら菜々美も外にいるよ」
「そうか、まあいい食料と銃だったな」
そう言って山口は立ち上がり、食料の入った段ボールに近寄る。
「まあいいか、これ事持っていけ」
そう言って段ボールをこちらに寄せる、中身はぎっしりと詰まった固形食料で誰もが一度は見たことがあるものだった。これなら持ち運びが楽だし、栄養価も高く、何より美味しい。さすがにこれだけでは飽きてしまうかもしれないが、様々な味があるし、何より他に食べ物も持っている。
「お前の分は」
「それがよ」
そう言いながら、山口が身を投げた、ベッドに近寄り、頭側の壁に触れると、そこが開き、似たような段ボールがかなり入っていた。
「これだけあるんだ、1つ2つ持ってかれたところでどうも思わないよ」
「そうみたいだな」
これだけあれば、飽きることはあるだろうが、餓死する恐れはなさそうだ。
「それと銃だが、俺の拠点としているビルの部屋の下の階にある」
「ならそのときパパに渡せばよかったんじゃないの」
「菜々美もし渡されてたらパパここまで来てないぞ」
物をもらって、仕事しないのは嫌な気はするが、こんなことでも命かけているのだ、できる限りリスクは避けるために断っていたと考える。
「それで閉めかたは」
「外のボタンを押してくれればいいあれが開閉ボタンだ」
「そうか」
「けどあなた、本当に中から閉められないの」
「あれを見ろ」
山口が出入り口付近の壁を指差す、そこには壊れたボタンがあり、たぶんそれが開閉ボタンなのだろうと推測する。
「はじめからああなってた」
たぶん船と同じように、簡単に安全地帯を利用させないための策なのだろう。
「話はこれくらいでいいか」
「ああ」
「なら出ていってドアを閉めてくれ」
そう言われ隠しシェルターから出る、開いたドアを挟み、山口と向き合う。
「何で外に残りたいかわからないが助かった、ちゃんと生き残って向こうで会おう」
「出来れば」
「そうか、じゃあな」
そう言われ僕はボタンを押す、ドアがゆっくりと閉まっていく。そうして閉まりきった。
「それであなたどうするの」
「ひとまず武器を取りに戻ろう」




