13day8
走る、走る、走る。
「あれだけ音をたてれば当然か」
後ろからはゆっくりとだが確実にゾンビが追ってきている。だが足は遅いので少しずつ引き離す、すると先に走っている紗枝たちが見えてくる。追い付いたのだ。
「あなた無事」
「無事だよ、2人は」
「私は無事」
「はぁはぁはぁ、パパ、私も」
紗枝は余裕そうだが、菜々美は限界が近そうだ。後ろを振り替える、ゾンビは引き離していて少し位なら余裕はありそうだ。
「菜々美背中に」
「うん」
だからしゃがみ菜々美を背負う。重いが走れなくなるほどではない。
「あの子ばっかり」
「紗枝」
「ごめんあなた」
「ひとまずどこか休めるところに」
元の船を目指してもいいのかもしれないが、そこまで体力が続くかわからない、だから休めるところを見つけたい。
「パパ後ろから来てるよ」
菜々美がそういうので、後ろを向くとゾンビが大分近くまで来ている。だから走り出す。菜々美を背負ってるから少し遅くなるがそれでも降りきれるだけの速度は出ている。
「休めるところ」
路上に止めてある車を避けながら走る。いつのまにか大通りまで出てきていた。
「あなた前からも」
前からもゾンビが来るだから大通りを走り出す。
「海は」
「あっちに」
海の方向に向けて走る。と言うか逃げる。
「パパ横からゾンビが」
大通りにゾンビが引き寄せられているのか、集まってきている。少しも休む余裕がなく走り続けるしかなさそうだ。
「海まで逃げられるかな」
「あなたならできるよ」
「できるかな」
菜々美を背負っているので体力の消費が激しい。足が重くなってきている。
「パパ」
「大丈夫だ」
だがこんなところで殺されたくないから、諦めるわけにはいかない。だから足の重さを気にせずに走り続ける。
「はぁはぁはぁはぁ」
それでも限界はある、足がもつれかける。段々とゾンビとの距離が縮まる。
「パパ」
「あなた」
「おいこっちだ」
誰が呼んでいる、ビルのひとつからだ。
「前からもゾンビが」
その誰かを信用するしかなさそうだ。そのビルに向けて最後の力を振り絞り走る。そしてビルのなかに飛び込む。
「ようまたあったな」
「あなたは」
大型のリュックを背負っていた男がそこにいた。




