7day2
「よし、それじゃあ全員ガソリン持ったか」
赤い専用のガソリン缶を持たされる。1人2缶、1缶5L程なので単純に言えば10kgの重りを持っての移動だ。少し気が滅入る。
「ようじゃあ行こうか、目的地は徒歩30分、ルートの安全は確保済みだから気楽で行こうか」
斎藤はそう言って歩き出す、残りの9人もそれに続く。武装は全員軽装で拳銃か大きくても紗枝と斎藤、それと見知らぬ男が持ってるサブマシンガン程度だ。
「はぁ井上断ってくれてもよかったんだぜ、と言うか断ってほしかった」
斎藤が話しかけてくる。
「仕方ないだろう、ガソリンは個人的にも必要だし」
「まあ、あんな報酬なら仕方ないか」
「そう言えば斎藤はどうして、あのホテルに」
「いやな、このシュミレーションが始まったときに戦い初めた一団に着いていったらいつの間にかな」
「そうなのか」
「そう言うお前はどうなんだよ」
「僕」
「ああ、あのかわいい子と、どこで知り合ったんだよナンパかこの野郎」
そう言って紗枝の方を指差す。それにつられてそちらを見るが紗枝が男に話しかけられているのだが無視している。
「初日にマンションで」
「ってことはなんだ、ずっと一緒に過ごしてるのかよ」
「ああ」
「くそっ理不尽だ、あんなかわいい子街中で歩いててもなかなか見かけないのに、連れ歩いてんのか」
「そう言う斎藤は誰か助けたとか無いのか」
「俺が助けたのは男ばっかりだよ、まあけどそのお陰かこいつを拾えたけどな」
そう言って斎藤は持っているサブマシンガン、P90を見せる。
「けど弾がないなら意味ないんじゃ」
「言うなよ、けど今日は大丈夫だぜ、マガジン5本も持ってきてるんだからな」
「期待してるよ」
「うるさい」
後ろから声をかけられる、女の声だ。
「ごめん」
「わかればいいのよ」
そこに紗枝が急に割り込んでくる。
「井上」
「紗枝、何」
「井上は私だけ見てればいいの」
抱きつかれてはいるのだが、声には何故か怒りがこもっている。
「分かった、分かったから落ち着いて」
「分かった、落ち着く、ごめんね急に」
すぐに落ち着く。
「ヤンデレか」
「斎藤」
「何でもねえよ、世の中あたり外れが大きいなってことだ」
斎藤の呟きは聞こえていたのだが、聞かなかったことにしておく。
「それで紗枝さっき誰かに声かけられてたけど」
「話しかけられてないよ、井上でも見間違えることあるんだ」
「そっか、なら紗枝武器は」
「サブ、マシンガンだっけそれは1発も使ってないよ、他は拳銃の弾は何発か使ったけど全部弾入れてるよ」
「ならいいや」
「けど井上、拳銃だけじゃ危なくないの」
「そうだな、と言うか井上AKどうした、確か持ってたはずだろう」
「あれ売った、反動が強くて制御できない」
要するに当たらず、無駄になってしまう弾が多いと言うわけだ。
「そうか、まあAKは反動強いらしいから仕方ないか。まあ今回の仕事が終わったらなんか買っとけばいい」
「それまでは私が井上を守るよ」
そんな無駄話をしながら足を動かし前に進む、すると大きな建物が見えてくる。
「あれが目的地のラジオ局だ」
それは5階建てのビルだ。
「おかしい」
斎藤が呟く。
「何が」
「誰もいない」
「中で仕事してるんじゃ」
「それでも1人は外に出てるはずなんだ、それなのに誰もいない」
あたりの空気が重くなってきた。




