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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第8章

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01 プロローグ


 私の名前はルキナ。

 ルキナ・レッドグローリア・トリニティ・ダイアモンド。

 この国の第一王女よ。上には二人の兄がいてそれぞれライオネル第一王子とレオナルド第二王子。

 そんな第二王子であるレオナルドお兄様がついこの前婚約破棄をしたの。

 と言っても、茶番みたいなものなんだけど、いろいろあって今は婚約破棄が保留状態らしいの。

 つまりいつでも破棄できる状態にあるわけよね。

 自由参加のパーティとはいえ、かなりの人数の前で言ってしまったんだもの。今更撤回なんて出来るはず無いのよ。

 でも私はそんなレオナルドお兄様の意見を尊重したいと思うわ。

 だって、レオナルドお兄様の相手はあのクリティーヌ・オパールレインなんですもの。

 誰だって知ってる超有名人。

 オパールレイン家の三人目の子供で、ラピスラズリ商会の共同代表。そしてクリス教の女神様までやっているなんてホント凄いと思うの。

 でも私にとってはどうでもいいの。

 一番重要なのは、クリス様が女装した男子だっていう事。

 もう信じらんないわよね。あんなに可愛くて美しいのに男。

 どこからどう見ても女の子。体型も声も女の子。それなのに性別は男。

 もう奇跡の存在としか思えないわ。

 まぁ、私が何を言いたいかというと、私男大っ嫌いなのよね。

 この国の王女として生まれたからには、どこぞの知らない国の王子だか王太子と結婚させられてしまう訳でしょう?

 お父様はともかく二人のお兄様は全然大丈夫だけど、正直それ以外の男の人って無理なのよね。

 それを体臭やら歯いきれ臭い男となんて絶対に無理。

 でも、もし見た目が女の子だったら男の人とでも結婚出来るわ。

 つまりね。婚約破棄によって婚約が宙ぶらりん状態のクリス様をレオナルドお兄様不在の今が奪うチャンスだと思うの。

 レオナルドお兄様がトチ狂って海外へ行ってしまった今のうちに既成事実を作ってしまいましょう。

 善は急げって言うわよね。こう言う時はお母様に相談するのが吉よね。


 「お母様失礼しますわ」

 エテルナの執務室へ入ったルキナはカーテシーをして姿勢を正した。

 「あら。ルキナが訪ねてくれるなんて珍しいわね」

 「えぇ。実はお願いがあってきました」

 「あらあらー。ルキナがお願い事なんて珍しいわね。いいわ。私に出来ることなら何でも言ってちょうだい」

 「わぁ! お母様大好き!」

 エテルナは満更でもない様子で先を促す。

 「実はですね。私の結婚についてなんですが」

 その瞬間さっと顔を白くさせるエテルナ。

 「ちょ、ちょっと気が早くないかしら?」

 「いいえ。そんな事はありません! 今しかないのです」

 切羽詰まった様子のルキナに困惑しながら、話の内容を聞いていく。

 「えっと、それはどう言うことかしら?」

 「はい。レオナルドお兄様が婚約破棄した今、クリス様はフリーですよね!」

 それを聞いて得心したエテルナ。

 といっても、まだ完全に婚約破棄した訳ではない。ないのだが、よくよく考えたら、男と男の婚約を結ぶより、女と男でちゃんと婚約を結ぶべきなのではと思い直すエテルナ。

 「そうね。確かにそうだわ。何で今まで気づかなかったのかしら。寧ろそっちの方が自然よね?」

 可愛いルキナをどこぞのクソガキに嫁がせることなく、身近に置いておけるならこれほどいい提案はないと思うエテルナ。

 事の始まりは国王ことデボネアが勝手によく調べもせずに結んだ話だ。

 ルキナを可愛がるデボネアもこの件なら喜んで協力するかもしれない。

 そう思うと少しでも早く事を起こさなければならないとエテルナは立ち上がった。

 「分かったわルキナ。全部私に任せておきなさい」

 「さっすがお母様。話が早くて助かります」

 エテルナとしてもクリスは是非とも欲しい存在だ。半ば諦めていたが、降って湧いたこの話に乗らないわけにはいかないと、意気揚々と動き出したのだった。


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