24 文化祭二日目③
その時突き当たりの両側から明らかに一般客じゃない人達が出てきた。
そして後ろ側も塞がれてしまった。
この人数なら私とメアリーで対処出来そうな気もするんだけど、メアリーは特に動く様子もない。
王妃様が口を開く。
「私達に何か用かしら?」
「えぇ。ちょっと私達に付いてきていただきたいんですよ」
リーダー格と思しき男は丁寧な言い方で要求してくる。
「ふーん。もし断ったらどうなるのかしら?」
「そうですねぇ。これを見ていただきたいんですが」
そう言って男は横にいる男からあるものを手渡され、それを見せつけた。
「? その包みたいのは何かしら?」
!? 王妃様は気付いていないが、それはダイナマイトと時計を組み合わせたタイプの爆弾だった。なんだってそんなものがあるのだろうか。
イデアさんも流石に「ひっ!」と呻き声を漏らした。
「おや。そちらの方々は知っているようですね。でしたら話は早い。これをこの学園の複数箇所に設置させていただきました」
なんだって! もしこれが爆発したら大変なことになるじゃないの。
しかし、王妃様とメアリーはなぜか黙ったままだ。
「おや、これのヤバさが分からないようですね。まぁいいでしょう」
流石にここで逆らうわけにもいかず、私達は彼らに従うままに誰もいない教室へ連れられてしまった。
そこで、手足をきつく縛られ、動けないよう机に固定されてしまった。
「こんな事していいと思ってるのかしら?」
「思ってなきゃこんな事しませんよ。ではこちらを置いておきますね」
王妃様の目の前に爆弾を置かれた。タイマーは短く三十分に設定されていた。
「…ふむ。これがどのくらいやばいのか理解できていないようなので、ご説明しますね」
男はタイマーのボタンを押した。
「ちょっ!」
「ひっ!」
「そちらの方々は威力を知っているようですね。まぁ、簡単に言うとこの数字がゼロになったら爆発します。どのくらいの威力かといいますと、炭鉱なんかで岩盤を破砕するのに使われるんですが、まぁそこまでの威力はありませんが、それをこれだけま用意したらどうなるかお分かりですね?」
男が用意した爆弾にはダイナマイトが十本束ねられていた。
「ダイアモンド王国のエテルナ王妃と言えば、かなり聡明な方だと聞いていたんですが、どうやら期待はずれだったようです。では我々は帰りますので、残りわずかな時間神にでも祈っていてください」
そんな女神様は私の隣で必死にもがいている。
えー、これやばいでしょ。どうするのよ。
男達はそのまま教室を出て去ってしまった。
「ちょ、これどうするんですか!」
「そうよ。これが爆発したら私達木っ端微塵よ」
「イデアさんは一回天界に戻って、この拘束解けないんですか?」
「拘束された状態じゃ帰れないのよ」
「えー。てか、メアリーならこれ力技で壊せるんじゃ…」
「ちょっと難しいですねー」
なんでそんな余裕綽々なのよ。全然分かってないのね?
そんな時一番爆風の被害を受けるであろう王妃様が落ち着いた様子で口を開く。
「まぁまぁそんなに慌てなくてもいいわよ」
どう言う事? もしかしてこれも何かのサプライズだって事?
その時、廊下の方で一方的に殴られる音が聞こえた。
数秒も経たずに静かになると、教室のドアが開けられ、何人もの騎士団の人達やメイドさん達が入ってきた。どゆこと?
「ごめんねぇ。あいつらが何かするってのは知ってたの。だから、前もってマークして対策してたのよ」
「そういう事は事前にお知らせ頂けると……」
「だってクリスちゃんの焦った顔みたいじゃない?」
わー悪趣味ー……。
男達は全員気絶し、拘束してあるのだそうだ。
今は括り付けられた拘束を解いてもらっていた。
「イデア様は知っていたはずなのに、どうしてそんなに焦っているんですの?」
「い…いやー演技ですよ。演技。全員シラーっとしてたらおかしいでしょう?」
「あら、そうね。迂闊だったわ。次は気をつけるわ。ほほほ…」
嘘だね。イデアさんが確実にビビってましたよ。三人組のコント師の一人みたいなビビり方してたもん。
しかし、爆弾を使ってくるなんて想定外だわ。
……………タイマーまだ動いてるよね?




