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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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21 文化祭一日目④


 「いたっ…」

 「あ…ごめ……ってソフィア…」

 私を引っ張って連れてきたのはどうやらソフィアだったようだ。

 「急に引っ張って何? どうしたの?」

 「いや…ちょっとクリスと二人で話したいなって思って…」

 「別に言えばいいじゃない」

 「邪魔されるでしょ」

 あぁ…。まぁそうかもしれないけど…。

 どうしてソフィアがそんな事を言うのかよく分からないが、まぁ付き合ってあげますか。

 「で、ここまで連れてきて何なの?」

 「……ぉして……」

 「え? よく聞こえない」

 「もうっ! たまには私とデートして!」

 「えぇ…」

 いきなり唐突に何を言いだしたかと思えば、まさかのデートのお誘い。

 一日目ももう少しで終わろうというのに、このタイミングで?

 「まぁいいけど…、もう少しで一日目終わっちゃうよ?」

 「もう…それは仕方ないでしょ」

 「ま…まぁ…」

 「最近二人でどっか行ったりしてないじゃない?」

 まぁ確かに。以前は二人…と言ってもメイドさんは付いてきていたけど、まぁそうだね。最近は結構大人数で遊ぶ事多いわよね。

 「だから、まぁたまには二人っきりで過ごすのも悪くないかなって思ったワケ」

 「ふーん。まぁ、ソフィアがそうしたいならいいよ」

 「ホント? やったぁ。じゃあはいこれ」

 そう言って手渡してきたのは屋台の食べ物の入った袋だった。

 「クリスの事だから、あんまり食べてないんじゃないかなと思って」

 「いや、そんな事ないよ?」

 「そう? じゃあスタンプラリーの紙見せなさいよ」

 無理矢理奪い取ったソフィアは、ほらみたことかといった顔をする。

 「まぁ、クリスにしては行ってる方か。でもそれに入ってるのは食べてないでしょ?」

 開けてみると結構いろんなものが入っていた。

 フランクフルト、トルネードポテト、唐揚げ串、揚げ餅、チュロス、いちご飴。

 チュロス以外串に刺さっているから食べやすいわね。

 でもこんなにいっぱい食べられないわよ。揚げ物多いし。

 「ほら」

 ポーンと投げたのはラムネの瓶だった。飲み物もあるのはありがたい。でも…。

 「こんなに食べられないわよ」

 「夕飯の代わりになるでしょ。どうせ今日は好きな時間に帰っていいんだし、夜までやってるんだから。だらだらしましょうよ」

 そう言ってソフィアはベンチに座る。

 よく見たら似たようなカップルが他にもベンチに座っていた。

 ある意味カップルよねこれ。まぁ、ソフィアはそこまで考えてないだろうけどね。

 折角ソフィアが奢ってくれたんだし、一緒に食べるとしますか。

 「じゃあ折角だしいただくわね」

 「そうよ。クリスの為に買ってきたんだからね。感謝しなさいよ」

 「はいはい。そう言うことにしておきましょうか」

 「何よそれ…」


 ベンチに座りながら学園の方を見る。

 向こう側ではかなり賑わっているようだ。この先もこうして平和が続くといいんだけどなぁ。

 そう思いながら、唐揚げを一つ頬張る。

 「ん! これ美味しいわね。冷めてもパサパサしてないし、脂もしつこくない」

 「でしょう? それ美味しいわよね。私それ二十本買ったもん」

 なるほど。ソフィアは一店で複数個買うから達成出来なかったのね。

 まぁ、お姉様も複数個買ってはいそうだけど…。

 それから暫くはソフィアと学園に入ってからの事を色々話した。

 まだ一年経っていないのに、かなり濃い時間を過ごしているなと思った。

 しかし、ソフィアはいつもと違って随分と柔らかい雰囲気がある。

 よっぽど文化祭で遊びまわってストレス解消出来たんだろう。

 こうして食べながら話していると、結構時間が経つのが早い。

 空はほんのり藍色がかっていて、星がいくつか瞬き始めている。

 いちご飴を一つ頬張ったところで大きな声をかけられた。


 「あぁっ! こんなところにいたんですね!」

 向こうの方から大人数でこっちの方へやってくるクラスメイト達。

 ソフィアが小さく舌打ちをした。

 「全くソフィアは…」

 レオナルドが呆れた様な声を出す。すると、後からついてきたクラスメイト達が思い思いに喋り出す。

 「おや。デートの邪魔をしてしまったかな」「抜け駆けは良くない」「ずるいずるい。そこは私の場所なのに」「へぇ…そういう事するんだ…」「大丈夫。ソフィアならまだ…」「あらぁ。そういう事だったのねぇ」「もう邪魔しちゃダメじゃない」

 デートってこういうのだっけ?

 私付き合った事ないから分からないけど、多分違うと思うんだけどなぁ。

 ソフィアは大きくため息をつくと、すっくと立ち上がった。

 「もう。しょうがないわね。いいわ」

 そう言ってソフィアはベンチの上に乗っかった。

 「明日は私達クラスの出し物の本番よ。みんな覚悟は出来てる?」

 それに対してうちのクラスも他のクラスの生徒もノリがいいのか「出来てる!」と返した。

 それに満足したソフィアは宣言する。

 「絶対にうちの演劇で一位取るわよ」

 流石はA組の姉御ソフィアだ。みんなノリノリで声を上げていた。

 「ソフィアソフィア!」

 何人かがソフィアに寄ってきた。どうやらソフィアと仲のいい人たちの様だ。

 「何よ」

 「今夜はいっぱい騒ぐんでしょ?」

 「まぁそうね」

 「そうだろうと思っていっぱい買ってきたわ。ねぇーみんなー!」

 それに対して他の人達も食べ物を上に上げて見せた。

 「ほら。ソフィアの気に入ってた店の唐揚げ串百本買ってきたわ」

 「こっちはフランクフルト買い占めてきたわ」

 「たこ焼きにお好み焼き。あと焼きそばも買ってきたわよ」

 「おう。こっちはベビーカステラと今川焼き買ってきたぞ」

 「ちゃんと飲み物も用意したぞー」

 みんなソフィアが食い意地はってるって事知ってるのね。

 それにしてもすごい量だわ。


 「よーし。じゃあみんな明日に向けて騒ぐわよー。まずはレオナルド何か余興しなさいな」

 「えっ!?」

 焼きとうもろこしを座って頬張っていたレオナルドがびっくりして振り返る。

 「おやおや。では僕が最初に何か演じようかな」

 シェルミー様がそう言って何かのパフォーマンスを始めた。

 前夜祭みたいな感じで盛り上がっていた為か。近くにいたカップルはいなくなってしまったが、騒ぎたい生徒や先生達が集まって盛り上がっっていった。

 近くで咲き誇るハナミズキの木を見ながら騒いでると、まるでお花見のようだなと思ったのだった。


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