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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第7章

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10 文化祭の出し物について④


           *      


 さて、今日も文化祭の出しもの決めの時間だ。

 文化祭実行委員である私とカリーナちゃんが黒板の前に立つ。

 委員長と副委員長は隣同士席に座って見ている。仲良いね。

 「じゃあ、今日は配役とか他の役割決めね」

 ソフィアからもらったメモ書き通りに黒板に書いていく。

 何故か、『コトネ役』のところに私の名前が書いてあり、『ピスティス役』のところにソフィアの名前が書いてあったが無視することにする。

 こういうのはちゃんと機会が与えられるべきだと思うの。その人ありきで作った作品で演技が良かったものなんて殆ど無いでしょう?

 「はい。じゃあやりたい人は手を挙げてね。自薦のみで他薦は認めません」

 「「「「「「「「「「えーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」 

 教室中にブーイングの嵐が轟く。

 「な…何か不満でも?」

 「どう考えてもコトネ役はクリスだろう」「そうだね。クリス嬢にこそ相応しい役だと思うよ」「そうですわ。そしてピスティス役は私がやれば完璧ですわ」「寝言は寝て言え」「!?」「そうだぞ。俺達はクリスとキスしたいんだ!」「何いってるの? クリス様とキスするのは私よ!」「いーえ私よ」「ひっこめアバズレ!」「うるせー童貞!」

 あーあ。みんな我を忘れて言い争ってるわ。そもそもどうして私とそんなキスしたいのよ?

 男の娘か女の子ならキスしてもいいけどさ。

 「はいはい! そこまでよー」

 事の成り行きを見ていたレベッカ先生が止める。

 「それ先生が出てもいいのかしら?」

 「いいわけねーだろ」「歳を考えろババア」「ババアに用はねぇんだよ」「誰得だよ」「副担とイチャイチャしてろや」

 口汚い言葉が続いていく。

 バゴォンという音が鳴り響き、一気に静かになる。

 壁の一部にレベッカ先生の拳がめり込んでいる。

 「今ババアって言ったやつ顔覚えてるからなぁ…。進級できると思うなよ!」

 とんでもない脅し文句だわ。

 一斉に男子生徒がレベッカ先生の前へ飛んでいき土下座している。

 まぁ、静かになったのは良かったわ。

 レベッカ先生が男子生徒達に赦す条件としてデートの約束を取り付けている。かわいそう…。


 さて、いろいろあったけど、自薦では一生決まらないだろうことは明白になったので、ここはくじ引きで決めていきましょう。

 「では、配役と他の裏方等の役割についてはくじ引きで決めていくわ。いいわね?」

 尚もブーイングされるが、知ったこっちゃない。

 こういうのは公平性が大事だと思うのよ。

 そして、その事を予想していたのか、カリーナちゃんがくじ引きのくじを作ってくれていた。流石仕事が早いね。もうツーカーの仲じゃないかな?

 「はいクリス」

 「ありがとカリーナちゃん」

 くじを適当な箱に入れる。

 「じゃあくじで決めていくから。好きな順番で引いてね」

 もうどれだけ嫌がったり叫んでも状況は変わらないと悟ったのか、みんな諦めて素直に並んでいる。

 最初からこうすれば良かったわ。

 しかし、何故か配役の方はあまり引かれず、大道具・小道具・衣装係・照明・音響ばっかり決まっていく。

 配役の方も脇役ばっかり決まっていく。

 まだ引いていないのはいつものメンバーだ。

 ソフィア・レオナルド・ジル様・シェルミー様・イヴ様・トミー様・カイラ様・カリーナちゃん。そして私だ。


 「ソフィアは監督兼脚本だから舞台に出るのはどうなの?」

 「だってそれじゃ私がキスできないじゃない!」

 欲望に忠実すぎない?

 しかし、ソフィアも思うところがあったのか、くじを引く順番を後の方にした。

 「私は……衣装係……」

 トミー様は衣装係に決定。

 「私は……メイク係かぁ…。まぁ、これはこれで」

 カイラ様はメイク係……と。

 「私は………ま…魔王!?」

 あーなんかぴったりかも。イヴ様は魔王役……と。

 イヴ様が魔王役に決まった事によりレオナルドとジル様とシェルミー様は口角を上げニマニマしていた。

 「では私の番ですわね………教師役っ! ハズレッ!」

 別にハズレではないでしょう? まぁ脇役だけれども…。

 「はっはっは! これは勝ちましたね。クリス」

 レオナルドが私を見て満面の笑みを見せている。

 一応、残ってる『コトネ』も『ピスティス』も女の子だけど女装するんか? できるんか?

 そしてレオナルドが引いたのは…。

 「!? まさか私がコトネ役だとは……でもクリスがピスティス役を引けば…」

 レオナルドはコトネ役に決まったが、レオナルドがくじの入った箱を私の前に差し出す。次に私が引かされるとは…。

 ちなみに、『コトネ役』がレオナルドに決まった瞬間に、ソフィアは監督兼脚本でいいとくじを引くのを拒否した。

 ずるい…。私も拒否したいんだけど?

 「どうしましたクリス? さぁどうぞ」

 うわぁ…。なんかやだなぁ…。レオナルドとお芝居して上手くできる気がしないわ。

 どうか神様女神様、私の願いを聞き入れてくれませんか?

 その時頭の中に声が響く。

 『え~やだなぁ…』

 『その声はイデアさん!』

 『そうよー。みんなの女神イデアよ~』

 間延びした声で応えるイデアさん。

 『イデアさんお願いします。くじを端役とかにしてくれませんか?』

 『え~…私クリスちゃんのキスシーンみたいなぁ…』

 『そこをなんとか……』

 『んー……分かったわぁ…。じゃーあー、文化祭私も行くから一緒に回りましょう? ソフィアちゃんも一緒で』

 『はい! 是非行きましょう。ですので…』

 『分かったわ。じゃあ引いちゃいなさい。何を引いても裏方になるようにしてあげるから』

 『ありがとうございますっ!』

 そしてくじを引く。

 「広報……………?」

 「やり直しを要求します」

 「ちょ!?」

 レオナルドがとんでもない事を言い出すが、誰も賛同しない。

 まぁ、公平に決めてるわけだからね。寧ろやり直しをするなら最初からって事になると思う。

 状況を見て、不満そうな顔でブツブツ言いながらレオナルドは引き下がる。

 ご納得いただいて何よりです。


 さて残るはカリーナちゃんとシェルミー様か。

 カリーナちゃんが嫌そうな顔でくじを引く。

 「……ょかった……演出だわ」

 カリーナちゃんは演出。ソフィアと一緒にやる感じね。

 「おや。これは引かなくても分かるね。僕がピスティス役だ。はっはは!」

 シェルミー様が無事にレオナルドの相手役『ピスティス役』を射止めた。

 キラキラ王子様二人が主役っていうのは結構目立って良いんじゃないだろうか?

 「よろしく頼むよ。レオナルド殿下」

 顎クイをするシェルミー様に、教室中の女子達と男の娘達が黄色い声を上げる。

 「そ…そういのはやめてくれませんか」

 「擦れないねぇ。ま、文化祭まで時間があるし、じっくり落としてみせるよ」

 「私はクリス一筋ですのでそういうのはあり得ませんよ」

 「気が強くて結構。ますます楽しめそうだよ」

 シェルミー様は男装してるけど、一応女子だし公爵家令嬢だから、別に変ではないんだけどね。

 でもやっぱり知らない人から見ると、BLっぽく見えるんだろうなぁ…。

 そのままの勢いでキスしてしまいそいうな気配すらある。

 なんならここで口唇を奪ってしまえば、嫌がってるレオナルドも堕ちて、二人はそのまま夜の街に消えて、昨夜はお楽しみでしたね? になるんじゃないだろうか?

 まぁ、これで無事に配役や裏方も決まったので、後は作って演じるだけだね。


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