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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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49 お茶会②

 

 それにしても、さっきから思ったように嫌がらせが出来てないからなのか、めちゃくちゃ機嫌が悪そう。 

 私も嫌がらせが思ったほどじゃなくてちょっと退屈なのよね。小説や漫画でよく見るえげつない嫌がらせを期待していたのにとんだ肩透かしだったわ。

 そもそも、何でジル様は私をお茶会に招待したんだろうか。

 ちょっと聞いてみようかしら?

 「あのジル様…」

 「何でしょう」

 「どうしてお茶会に招待してくれたんですか?」

 それを言った途端に周りから「失礼だわ」「不満なの?」と言われるが気にしない。だって、気になることはちゃんと聞いた方がいいでしょう?

 「そうですわね。その為にお呼びしていたんでしたわ。私、レオナルド殿下と婚約したいんですの。クリスさん別れてもらえませんこと?」

 特に佇まいを正すわけでも、表情を変えるわけでもなく、何の気なしに、ただ自然に挨拶をするかのように本題を口にした。

 そして、それに素早く返事したのは私ではなく…。

 「えぇ、願っても無いことです。是非に」

 「ちょ、メアリー。何勝手に…」

 振り返りメアリーを見ると、ドヤ顔で「言ってやりましたよ」って顔をしている。

 向き直りジル様を見ると、目をパチクリさせていた。取り巻き達もびっくりしていた。私もびっくりよ。

 「あの…どういう…」

 「勝手にうちのメイドが申し訳ありません」

 「いえ、いいんですの。どうぞ続けて」

 ジル様の好意に気を良くしたメアリーはどこぞの舞台女優のように身振り手振りで大仰な言い方をする。メアリーって意外と演技の才能があるのね。そこにびっくりだわ。

 「つまり、クリス様はですね、レオナルド殿下との婚約破棄を目指しているんですよ〜」

 「本当なんですの!?」

 言っちゃったよこのバカ。それは内密にしておかないといけない事なのに。それもこの人達の前で言うなんて…。

 「あの…説明していただけるかしら?」

 そうですよね。そうなりますよね。

 周りの取り巻き達も静かに聞く姿勢を取っている。

 時折吹くそよ風の音しか聞こえないくらい静かだ。

 私は自分が男で女装している事、オパールレイン家が王国の暗部で、護衛対象と婚約するなんて以ての外という部分を隠して、やんわりと伝えた。

 まぁそこを隠すと言える所は殆ど無いんだけど……。


 「え、待ってくださる? え? えーっと、つまりクリスさんはそっちの趣味の方だと…」

 「え、えぇ…。そうとって頂いて構いません………」

 他にいい言い訳が思いつかなかったのよ。

 「まさかそういう方だなんて…」「なんか…ごめんなさい」「これじゃあ嫌味を言っていた私達がバカみたいじゃない」「その…良い人見つかるといいですね」「あ、だから同棲してるのね」「なるほど」「どおりで塩対応な訳だわ」「そりゃあ言える訳ありませんわね」「そうね」

 「まさか、クリスさんは女の人が好きだったなんて…」

 最後にジル様が申し訳なさそうな顔をして言う。まぁ、間違ってはいないけどさ…。

 「それじゃあ、私がレオナルド殿下に好意を寄せても問題ないですわね」

 「そう…ですね……」

 「応援してくださりますの?」

 「えぇまぁ…はい」

 「ありがとうございますの。それでは私が上手く奪ってみせますわ。クリスさんは大船に乗った気で居てくださいまし」

 「私達、クリスさんが上手く別れられるよう応援してますね」

 なんかとんでもない方向に話が飛んでしまったな。

 最初は敵意剥き出しだった彼女達は、打って変わって応援している。

 「私達はそっちの趣味はありませんけどね」「私もですわ」「私は……」

 アブノーマルな趣味っぽく思われているけど、私一応男だからね。バレてると思ってたけど、意外と知られていないんだなと意外に思ったのだった。

 おかしいな。女装男子と男装女子がかなりの数入学しているはずなんだけどな。


 そんな感じで後半は和気藹々? とした感じでお茶会は進んでいった。

 そして、話はルームシェアの話に移っていったんだけど、急にフランクな態度にびっくり。聞いてくる内容も、『もう一緒に寝たのか』とか『誰が相性が良かった』とかそういう話ばっかり聞いてきたので、そういう事はしていないときっぱり伝えた。

 メアリーの爆弾発言でどうなるかと思ったけど、結果オーライかしらね。

 そして、この日のお茶会が終わろうという頃、ジル様が改めて感謝の言葉を述べた。

 「クリスさん。本日は参加していただいて本当にありがとうですわ。今までクリスさんの事を誤解していましたわ」

 周りの取り巻き達もうんうんと頷いている。

 「私、必ずレオナルド殿下と添い遂げますわ。だからクリスさんも良い方と巡り会えるといいですわね」

 「は…はぁ…ありがとうございます……」

 「そういえば、クリスさんに好意を寄せてる方って結構いますわよね」「あぁそいうですわね。結構いますわね」

 「?」

 私に好意を寄せてくる………テオドールたんの事かな?

 首を傾げると、一斉にため息をつかれた。

 「嘘でしょ。気づいてないんですか?」「そりゃあレオナルド殿下も苦労しますわ」「ソフィア様とかあんな積極的なのに」

 どうしてそこでソフィアの名前が出るのか分からない。ソフィアはルームメイトであっていい友達だと思うのだけど…。まぁ確かにグイグイくる所があるけど、女友達ってああいうものじゃないのかしら?

 「これは重症ですわね」「もう手の施しようがありませんわ」「もうこれ、無理矢理そういう関係に持ち込まないと進展しませんわね」

 え。どういう事? なんか散々な言われ方をしているんだけど………。

 最後の最後で消化不良な感じで終わってしまった。

 とりあえず、ソーサーの上のスプーンは横にして席を立つ。

 「本日はお招きいただきありがとうございます。お先に失礼いたします」

 「こちらこそ、楽しい時間でしたわ。ありがとうございますの」

 カーテシーをしてお茶会の会場を後にする。

 私の思い描いていたドロドロのお茶会とは違かったけど、これはこれで良かったと思う。ジル様があんな見た目なのに天然な所とかね。

 素直に受け取りすぎだから、何かトラブルに巻き込まれたりしないかちょっと心配だわ。


 バラのアーチを潜り、警備員さんのいた所に出た瞬間メアリーが口を開く。

 「はー……、やっと終わりましたね」

 「そうね。それはそうと勝手に口を出しちゃダメでしょ」

 「すいません。つい先走ってしまいました」

 あれ人によってはかなり激昂すると思うのよね。

 まぁ何はともあれお茶会は終わったし、メアリーの言う今川焼き屋さんに行きましょうかね。


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