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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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40 身内の恥①


 「クリス様…申し訳ございません」

 「あっ、アンジェさん……アンジェ先生」

 例の会議室から戻る途中、アンジェさん達に声をかけられた。

 思わず、いつもの調子でさん付けしてしまったので、慌てて先生呼びをする。

 「そんな、私達しかいない時はいつもどおりでお願いします」

 「はい」

 「今お時間宜しいでしょうか?」

 まぁ、今更帰る時間が遅くなっても別に問題はないし、まだまだ本来の下校時間にはなっていないので全然大丈夫だ。

 「えぇ、大丈夫ですよ」

 「良かった…。あの、ここではなんですので、部屋を用意しましたので来ていただいても」

 「いいですけど、無駄に広い会議室だけは止めてくださいね」

 「ははは…。あんな所恐れ多くて使えませんよ」

 ですよね。

 さっき叱られている時も、ガクガク震えながら土下座しそうになるのを我慢したくらいだもの。別に土下座を強要されてるわけじゃないんだけど、なんか無駄に広い豪奢な会議室で叱られるとそう感じちゃうのよ。ドラマの影響かしらね?

 そんな事を考えながらアンジェさんの後をついていくと、以前アンさんに案内された応接室についた。


 「こちらです」

 部屋に案内されると、十一人の先生というか、身内が揃っていた。

 「クリス様、この度は我々の不徳の致すところ。大変ご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございません」

 アンジェさんがそう謝罪の言葉を言うと、みんな一斉に頭を下げた。

 「ちょ、頭を上げてください。大丈夫ですから。勝手に突っ走ったのは私なんですから」

 「でも、先ほど学長に叱られていたではないですか。本来なら我々がしなければいけない事でしたのに」

 「ほら、先生の仕事もあって大変でしょ? それにこういうのはこっちでやる事だから、ね?」

 「クリス様……」

 何人か、感極まって口元を抑えている。

 実際、先生の仕事って大変だと思うのよ? 学校の仕事だって多岐にわたるはずだし、生徒の行動やら成績を把握してないといけないし、他にも雑務があるわけじゃない? それと並行して家の仕事を夜遅くまでやってたら大変だと思うの。それこそ、猫の手も借りたいくらい手が回ってないんじゃないだろうか?

 ここ最近いろいろ起きているし、コミュニケーション取れてないから、絶対忙しいんだろうなとは思う。

 思うんだけど……………。

 「クリス様にそう言っていただけると、従者冥利につきます」

 「うん。大変だと思うけど、頑張って。あと、体には気をつけてね」

 「はい」

 「ところで、気になってる事があるんだけど…」

 「なんでしょう」

 「その格好は何?」

 「「「「「「えっ?」」」」」」

 何人かが青天の霹靂といった顔をする。いや、どう見てもツッコミ待ちにしか思えないのよね。

 「どこかおかしいでしょうか?」

 「うん」

 私は一人一人に突っ込みを入れていった。


 まぁ、クオンさんはいい。最初っからブレずにギャルの格好だし。どう見ても授業受ける側にしか見えない。というか、見えそうで見えないスカート丈はどうにかならないんだろうか? あの太もものシュシュって気にならないのかな?

 あのルーズソックスといい、前世でよっぽど好きだったんだろうな。

 「もう、クリスっちったら、ここばっかり見てー」

 ニヤニヤ笑いながらスカートをたくし上げ用とするクオンさん。

 まぁ、ギャルによっては隠キャを揶揄おうとしてやるかもしれないけどね。

 って、本当に上げんな! ギャルはそこまではしないわよ。ギャル舐めんな。 

 紫色の光沢のある生地と黒のレースがふんだんに使われたパンツだ。えっちぃ。

 クオンさんの中のギャル像がそういうのだとしたら、少し軌道修正させないといけないわね。ギャルに失礼だわ。


 ギガさんも、ここが学園だと言う事を忘れているんじゃないだろうか?

 かろうじて教師の格好ではあるんだけど、無駄に大きい胸がこぼれそう。いつかやらかすんじゃないかと気が気じゃない。ドレスシャツの胸元のボタンが窮屈そうに悲鳴を上げている。いつか弾け飛ぶんじゃないだろうか? そして、生地が薄いのか、下着の赤い色とブラの刺繍がくっきりと見えている。担任の先生は何で注意しないんだろうね?

 「私ねぇ、この下にぃ、おむ……」

 「あー聞きたくない聞きたくない! あーあー!」

 「ちょっとぉ、遮らないでよぉ」

 そんな特殊性癖で授業するんじゃないよ。


 で、そんな前世三人娘の問題児。一番まともそうな人が一番ヤバイっていうね。

 プロフィアさんは、黒いPUレザーのボンテージファッション………。

 肩出しのワンピースなんだけど、脇の方とか、背中とか編み込みで素肌が見えている。そのくせ、サイハイブーツと二の腕まであるグローブというね。

 一番頭おかしいのは腰に巻いた鞭を装備している事。清楚そうな顔してとんでもないわ。普段から鉄のパンツ履いてそう。

 しかもただニコニコしているのが逆に怖い。無言で鞭振り下ろしそう。

 「そういうのが趣味なんですか?」

 「えぇまぁ。キツめの服が好きですね」

 「そうですか」

 タイトな服じゃなくて、いろんな意味でキツイ服ですね。

 まぁ、この三人はエリーのところにいたから、性癖がおかしいのは仕方ないのかもしれない。


 問題はこっちでなワケで………。

 さっきは意気消沈していたから、気がつかなかったけど、アンジェさんも相当ヤバイ。メイド服はメイド服なんだけど、ヒラヒラスケスケだ。深くスリットが入っていて、歩くたびに足から腰までよく見える。

 真面目そうな顔して何つー服着てるのよ。うっすらと下着まで見えるし、教育に悪すぎよ。

 ……でも、アンジェさんに関しては凄く扇情的だし、似合ってるから問題ないわね。うん。

 「アンジェさん、あまりそういう格好は教育に悪いんじゃ…」

 「分かりましたわ。今後、こういうのはクリス様の前だけにしますね」

 「あ、うん…」

 スリットの入ったスカートを持ち上げて、軽く舌を出すアンジェさん。心臓に矢が十本くらい刺さった気がする。危うくアフターに誘ってしまいそうになってしまったわ。自粛しないと。ふぅ…。


 「私は問題ないわよね?」

 「それ本気で言ってたら、正気を疑いますよ?」

 シグマさんは、婚活を拗らせ過ぎたのか、ウエディングドレスを着ている。それも私が好きなタイプなら全然良い。それならワンチャン求婚していた可能性もあるもの。

 でも、今シグマさんが着ているのは安っぽいミニのウエディングドレス。ECモールの検索画面の条件で『安い順』にした時に出てきそうなやつ。

 まぁ、百歩譲って動きやすいからっていうんならいいわよ? なんで、素足出してんのよ。白タイツとかガーターベルトとニーソの組み合わせとかあるでしょ? 申し訳程度の手袋とベールがなんともチープさを醸し出している。全っ然分かってないわね。失格よ。

 見た目が若いからまだいいけど、無理してる感が伝わってくる。

 そういうのを着るから生徒達から『うわキツ』って言われるんですよ?

 ババア無理すんなから、今すぐ止めろになる訳だわ。

 毎日着ていたら、その分婚期が遠のきそうですね。

 「クリス様の好きなウエディングドレスですよ?」

 「違うんだよなぁ…」

 「え?」

 認識の齟齬ってやつよね。

 男と女で同じものでも、好みってかなり分かれるわよね。一致する事って珍しいんじゃないかしら?


 はぁ………。身内の恥だが、個人の趣味なのでそこまできつく言えないのがもどかしい。

 ただの変態コスプレ集団じゃないのよ。

 というかですね、今まで私が散々コスプレしていたのに、この人達は今まで一体何を見てきていたのかしらね? これじゃあまるで、忘年会の出し物レベルのコスプレじゃない。

 でもまぁ、本人が満足しているならいいか。

 恥を掻くのは私じゃないからね。


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