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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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34 いろんな意味で物騒


           *      


 学園内でも生徒の失踪事件がどんどんと話が大きくなっていった。

 今日も教室内はその話で持ちきりだ。

 「クリス大丈夫ですか? 私は不安です。こうなったら四六時中いるべきだと思うのです。……うん。我ながらいい考えだと思うのです。今日から実行しましょう」

 「何言ってるんですかねーこの王子様は。クリスは私と一緒に暮らしてるのよ? 危ないわけないじゃない」

 「寧ろソフィアが一番の危険人物だと思うのですが?」

 「あら? 喧嘩なら買うわよ」

 「はいはい。そこまでにしなさい。……レオ様申し訳ありませんが、私は大丈夫ですので」

 「くっ…。いい考えだと思ったのですが…」

 「あらぁ、でしたら私と一緒に暮らしていただけませんか?」

 「ジル嬢。そんな嫁入り前の女性と一緒だなんて」

 「あら、それでしたらクリス様だって一緒じゃありません事?」

 「うぅ…」

 「ははは。ジル様は女子寮に入ってるから無理だろう。それに比べ、僕は男子寮に入寮しているからね。護衛も兼ねて一緒になることも吝かではないがね。どうだろう? レオナルド殿下? レオナルド殿下さえ良ければ僕はいつでも馳せ参じるよ」

 「ずるいですわ。それなら私も男子寮に転寮しますわぁ」

 「残念ながら制服も男子のにしないとダメなんだが、ジル様は男性の格好なんて嫌だろう?」

 「背に腹はかえられませんわ」

 「……なら、私もレオナルド殿下の部屋に住みたいです」

 「イヴ嬢まで……」

 レオナルドは人気だねぇ。三人の公爵家令嬢が婚約者の座を簒奪しようと今日も小競り合いをしている。私としては早々に奪ってくれると助かるんだけどなぁ。

 「ねぇ、不思議に思ってたんだけど、クリス嬢は本当にレオナルド殿下の婚約者なのかい?」

 シェルミー様が唐突に疑問を口にした。

 「「「へ?」」」

 思わぬことを言われて、私とレオナルドとソフィアが同時に変な声を出してしまった。

 「いや、だって僕達がこんなにレオナルド殿下と話をしていたら、普通は嫉妬に狂って嫌がらせをしたりするだろう?」

 「いや…」

 「それにクリス嬢はなぜかレオナルド殿下には塩対応な気もするんだよねぇ」

 鋭いなこの人。まぁ、嫉妬に狂っての辺りはロマンス小説の読みすぎだと思います。現実でそんな事やったら大問題ですし、流石に分別つくと思うんですが……。

 「何を言い出すかと思えば…。クリスと私はラブラブですよ。それにクリスは誰に対してもこう言う感じでドライなんですよ。この感じが堪らないんですよ」

 「確かにそうだね。ベタベタ引っ付いてるソフィア嬢に対しても一緒だし、その言い分は正しいのだろう。でも、逆に僕は同じことをされたら何をしでかすか分からないよ。僕は狙った獲物は離さないタイプだし」

 「私もですわぁ」

 「私も同じく……」

 あれ、もしかしてそういうのが普通なのかな?

 でも、レオナルドが真顔で固まっているところを見ると普通じゃないんだろうなぁ…。

 そんな話をしていたら、HRの時間になったようだ。担任のレベッカ先生が低っくいテンションで猫背の姿勢で入ってきた。そのうち前に突っ伏して倒れそうなくらい傾いている。

 「おーし、じゃー点呼とるぞー」

 最初の頃のキャピキャピ感はどこに行ったのだろうか?


 「あれ、トミーとカイラは休みかー? 誰か何か聞いてないかー?」

 そういえばあの二人の姿を今日は見ていないな。

 「聞いてないですー」

 「はぁ…。ついにA組(うち)でも起きたか……」

 めんどくさそうな顔で舌打ちするレベッカ先生。

 でも、今まで一人だったのに、二人もいなくなるなんて、何かあるのだろうか?


 そして、その予感は当たっていたようで、翌日になっても二人は見つからなかったのだった。


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