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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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04 学園へ行こう①


 馬車に揺られる事約三十分。

 駅に到着した。駅に到着する直前にメアリーは起きた。正確には、馬車が停車する時の揺れで地面に落ちた時に目を覚ましたようだ。

 「おはようございます?」

 「おはよう。自力で歩けるなら運ぶ手間が省けたわね」

 そうですね。これでも起きないようなら宅配便か何かで王都まで運んでもらうしかないですからね。

 未だ寝ぼけ眼のメアリーを引っ張りながら馬車を降りる。

 そこで普通ならいない人物が駅の改札口の前にいた。

 「あらソフィアどうしたの。こっちは逆方向じゃない」

 「一緒に行きたかったからに決まってるじゃない」

 ソフィアがそんな事を思うなんて珍しいこともあるものね。

 「本当は港で海鮮丼を食べて来たのです」

 「ちょっとシフォン! そういう事は言わなくていいのよ!」

 なるほど。学園の寮に入ったら気軽に食べに来れないからか。ソフィアらしいわね。

 シフォンさんと一緒に呆れ顔のステラさんもいる。この二人がソフィアに付いて行くのね。ステラさん大変じゃないかしら? 過労で倒れたりしないだろうか?

 そういえば、もう一人見慣れない人がいる。

 「あぁ、この子は初めてよね。プレオって言うの。おっとりしてるけど、シフォンと違ってしっかりしてる子よ」

 「待ってくださいソフィア様、それじゃあ私がダメみたいじゃないですか?」

 「そうでしょ?」

 「!?」

 まぁ、ソフィアのところも楽しそうで何よりだわ。


 改札口を出ると、意外にも、大きめの荷物を持った学園の制服に身を包んだ生徒がちらほらと見えた。

 その中で一人見覚えのある人がいた。

 丁度振り返りこっちを見ると、バッと前の方に顔を向けてしまった。どういうことよ?

 「おはよう。カリーナちゃん」

 「おっ…おは、おは…おはよう!」

 何でそんなテンパってるのよ。

 「い…いきなり声かけられたそうなるでしょ」

 え…。だってさっき振り返った時に私見たじゃない。

 「カリーナ様、そんなツンツンしていては嫌われてしまいますよ」

 「えっ…そんな…」

 一緒にいた妙齢の女性に窘められるカリーナちゃん。

 「カリーナちゃん、この人は?」

 「え? あ、この人は私のお世話してくれるイータさん」

 「お久しぶりです。クリス様イータでございます」

 あぁ、あの人か。ラピスラズリ本店で接客していた女性店員の一人だわ。

 「何でカリーナちゃんのお世話を?」

 「給料がいいからです。ボーナスも付きますしね」

 正直な方ね。まぁ、貴族じゃなくて一般入学の人だと、三人もメイドさんとか執事さんとかつけられないものね。一人付けられるだけでも相当なものだけど、ラピスラズリ商会なら三人くらい付けられそうだけど……。

 カリーナちゃんが、それに気づいて説明してくれた。

 「将来結婚した時に色々できた方がいいでしょう? だから最低限のお世話でいいかなって思って」

 いろいろ考えてるんだなぁ…。

 何故かイータさんはそのやりとりをニマニマしながら眺めていた。もしかしてカリーナちゃん家事とか本当は得意じゃないのかな?

 「またクリスが新しい女とイチャイチャしてる」

 何かよくわからないイチャモンをソフィアが言いながら近づいて来た。

 「あら、あなたクリスのとこの商会の子じゃない」

 「お久しぶりです。ソフィア様」

 「あなたも学園に?」

 「はい。見識を広めるために」

 「それはいいことね」

 そんな事を話していると汽車がホームへやってきたので乗り込む。

 乗り込む時にソフィアに袖を引っ張られた。

 「何か負けた気がする」

 「一体何と張り合っているのよ…」


 客車のボックスシートに私、ソフィア、カリーナちゃんと座る。

 通路を挟んだ反対側ではお姉様とお付きのメイドであるフィジーさん、ヒナナさん、マーブルさんが疲れ切った顔で座っていた。夏休み前より痩せたなぁ…。

 私の後ろの席にはメアリー、ロココさん、ビシューさんが座っていて、その通路の反対側にはステラさん、シフォンさん、プレオさん、イータさんが座った。

 客車内には他にも学園へ行く生徒と従者がそれなりの人数が座っていた。

 「結構多いわね」

 「今年の入学した生徒数って過去最高らしいわね」

 「へぇそうなんだ」

 「一般枠が例年より二百人くらい多いらしいわよ」

 「随分と勉学に励む人が増えたんだね」

 元がどれくらいか分からないけど随分と多いわね

 「何でも一般枠の八割がうちとオパールレインが占めるみたいよ」

 「…………へ、へぇ…」

 オパールレインとアンバーレイクは一般人の平均収入も高めだし、子供の殆どが学校に通っているものね。

 「倍率とか無いの?」

 「今年は三倍みたいよ」

 「うわぁ…。受験なしで入れる私達って恵まれてるんじゃない?」

 「まぁね」

 そんな中でバカ貴族の子女が一般人を虐めていたらとんでもない事だわ。


 「でもそんな一気に受け入れて大丈夫なの?」

 「三年くらい前までは定員割れで大変だったみたいだし、入学金増えるからいいんじゃない?」

 何か学園も世知辛いなぁ。

 一時間ほど経った頃にアンバーレイク領の駅、エーレクトロンに着くと、かなりの人数が乗ってきた。

 「凄い数だね」

 「時間ずらしてこれだもんね」

 「まぁ、ここからだと一時間ちょいで着くもんね」

 「そうね。ぶっちゃけ通学圏内よね」

 「家から通っちゃダメなの?」

 「何でも身の回りのことは自分で出来るようにって事らしいわよ?」

 「矛盾してない? じゃあメイドさんとか要らないじゃん」

 「そんなの建前に決まってるでしょ。クリスは一人で何でも出来るけど、シャツのボタン一つ留められない人だっているのよ? まぁ、ソーシャルスキルトレーニングみたいなものよ」

 なるほどね。当たり前すぎて考えたこともなかったわ。


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