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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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41 アンバーレイク家、変態と邂逅する


           *      


 遡る事二週間程前。

 「ううっ…さむさむっ…」

 雪が積もって動けなくなる前になんとかオパールレイン領に着いた。

 着いたはいいんだけど……。


 「おぉーここがオパールレイン領ですかな」

 「へー。意外と栄えてるんだねぇ」

 「……本場……」

 「まぁ、私は何回も来ていますし。ねぇ、ソフィア姉様」

 みんな観光気分で来ている。駅構内のラックにあったフリーペーパーや町案内の地図片手にキョロキョロと辺りを見回す三馬鹿と可愛い妹。そしてこれ幸いと着いてきたメイドが四人。ステラとシフォンにグリとグラ。


 「ここのお店おすすめですよ」

 「あら。本当ね。後で寄って行きましょうかグラ」

 「そうね。こんな機会なかなかないものね」

 「それだと、こっちとここも行ったほうがいいわ」

 「全部回りきれるかしら…」

 時間なら大丈夫よ。降り続ける大雪で当分の間運休だもの。この雪が止まない限り戻れないでしょうね。ここまで降るなんて想定してないから消雪装置とか付けてないし。

 降り積もる雪で孤島になったクリスの家で何も起きないわけがなく…。

 うん。これはこれで結果オーライじゃないかしら?


 しっかし、本当に寒いわね。ここ南の方なのに何でこんなに寒いのよ。こんなに雪があるのに何でこんなに寒いのかしら。とりあえず、どこかお店に入って鍋でも食べながらあったまるのがいいわね。

 他のみんなも同じ考えだったのか、何も言わずに一斉に頷く。


 「なぁっ! こんなに降ったらすぐに帰れないじゃないっすかー」

 ピンクのショートカットのメイドが頭を抱え奇怪な動きをしていた。

 どこかで見た気がするのよね。どこだったかしら……。

 そんな感じで奇怪な動きをする人をみんなでじーっと眺めていたら、視線に気づいたのか、動きを止めこっちにやって来た。

 「これはこれは、アンバーレイク家の御令息御令嬢方ではないですか。いつもお世話になってます」

 そう言って軽くペコリと頭を下げた。


 「えーっと……どこかで会ったかしら?」

 「あぁ…そういえば、この格好では初めてでしたね」

 そう言ってコートのポケットから取り出した白と水色の縞パンを顔面に被り、髪を逆立て白目を剥いてポーズを取った。流石に寒いのか服は着たままだ。


 「「「「「「⁉️」」」」」」

 「あぁ、あの人か」「こんな顔だったんですね」「女性だったんですね」


 私とステラとシフォンはこの街で行われるキュアキュアショー………だっけ? それのイベントを知ってるから直ぐに思い出したけど、初対面のお兄様達は驚き固まっていた。

 拒否反応を示すのかなと思っていたんだけど…。


 「うぉっ! 懐かしい。握手してください」「ほほほ。いいご趣味をお持ちですな。是非とも縛っていただきたい」「……実に興味深い……」「かっこいい……」「これは是非とも映画に出演していただくべきでは?」「そうね。でも被ってるパンツだけが気に入らない」


 何という事かしら。みんな絶賛しているじゃない。やっぱり頭おかしいと頭おかしい人が寄ってくるのかしらね。

 「あぁ…こんなにいい反応をしてくれんるなんて、アンバーレイクの方々は良い人達ですね。転職したくなってきた……」

 眥に浮かんだ涙を拭い照れる変態。

 「今日は急いで来たので、洗濯カゴから掴んだこれしかなかったんです。いつもはちゃんとしたパンツを被りますよ」

 聞いてもないのに、パンツに関して弁明を始める変態。


 「じゃあ仕方ないわね」

 「ソフィア様のパンツなら丁度いいのでは?」

 どこから目線で話してるのよ。というか勝手に私のパンツを出そうとしないで。

 後ろから思いっきり蹴りを入れてグリを雪の中に突っ込ませ阻止する。

 流石の変態も苦笑いだ。


 「ところでまだ名前とか知らないんだけど、聞いてもいい?」

 「あっ…。名乗ってませんでしたね。申し訳ないですー。私、エテルナ王妃付きのメイド、サヴァと申します。以後お見知り置きをー」

 え…マジで。この変態そんなに凄い役職だったの。ただパンツ被ってステージ上で動き回る野良の変態だと思ってたわ。

 でも……。


 「鯖?」

 「さばじゃないです。サヴァです。いくら食い意地が張ってるからって人の名前を食べ物に変えないでほしいですー」

 「ごめん…」

 別に私そんなに食い意地張ってないと思うんだけど。……思うんだけど、どうしてみんなそんな目で私を見るのよ。

 「まぁいいわ。ところでそんな大層な人がこんなところで何やってるのよ」

 「あれだろう? 何か見せてくれるんだろ?」「ほぅ…」「……わくわく……」

 三馬鹿が期待に満ち満ちた目でサヴァを見る。


 「いやぁ、今日は王妃様から嫌がらせ……違う。使命を受けてきたんすよ」

 その先を聞いてみたいところだが、風が強くなってきて、体に当たる雪の量が多くなってきたので、続きは鍋を食べながら聞くことにした。

 「ゴチになるっす」

 「割り勘よね?」

 「え? ソフィアが出すんじゃないのか?」

 「なんでよ」

 ここは長男であるシド兄が出すべきだと思うんだけど。


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