表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

285/546

23 どうして暑苦しい人達に懐かれやすいのかしら?


           *      


 昨日は散々な目にあったわ。

 今から鶏肉を探してくるから作ってくれというのを宥めるのに一時間くらいかかったわ。

 一体どこから鶏肉を調達しようとしたのだろうか。何人かはロープや鉈みたいのを持ってたけど、この辺に野生の鶏なんていないでしょうに。


 そして今日の朝食の時には、メイド長含めお通夜みたいな感じになってたわね。

 たかが食べ物一つでこんなに一喜一憂できるなんてお姉様じゃないんだから……。

 まぁ、そんな事より、今日は待ちに待った庭いじりの初日だわ。今からどう作っていこうか考えるだけでも楽しみだわ。

 逆にディンゴちゃんは糸目になっている。眠いんだろうか?


 「クリス。昨日のアレ凄く美味しかったわ」

 「それは良かったわ」

 「また食べたいなって思って」

 あぁ夢想していたのか。

 「ここに来てからご飯は凄く美味しんだけど、クリスの作ってくれたご飯はその何倍も美味しかったわ」

 「ふふ…ありがと」

 「あ、信じてないね?」

 「いや信じてるわよー」

 そんな感じで話しながら中庭へ着いたのだけど…。


 「タロンさん、おはようございます。あの…これなんですか?」

 「おはよう。僕も何が何だか…」

 視線の先には東部送りにならなかった団長派閥の第二騎士団の人達が中庭で整列して立っていた。

 それもこのクソ寒い一月も終わろうという時期に満面の笑顔で。

 正直この人達を埋めたらいいんじゃない? 花が綻ぶ……かは分からないけど、真夏の向日葵みたいな笑顔だし。


 そんな疑問に答えてくれたのは、後ろから歩いてきた第二騎士団長のイオさんだ。

 「すまねぇ。どうしてもこいつらが罪滅ぼしとかなんとかで、お嬢さんのお手伝いをしたいんだそうだ」

 えぇ…。こんな筋肉ダルマじゃ、いてもなんの役も………いや、レンガとか思いの運ぶのには使えるかな?


 「我々は目が覚めました」「是非とも次期団長になって戴きたく」「そして、理不尽にお仕置きされたいのです」「どうかよろしくお願いします!」

 あの時の不良団員を軽くのしたのが、この人達にとって、余程お気に召したらしい。

 困るなぁ…。一番そういう人とはお付き合いしたくないですね。

 寒いからか張り付いた笑顔が全然融けませんね。


 「いいんじゃないの? 人出少ないんだし」

 「そうだね。まだ力仕事が必要なところもあるしね」

 まぁ、二人がそう言うならいいかな…。

 「今日だけですよ?」

 「「「「「はいっ!」」」」」

 「あれ、おかしいな。一応僕が責任者なんだけどな…」

 じゃあ、営業スマイルしてないで、対応してくださいよ。何かこの人達暑苦しいのよね。心なしか凄く蒸し暑いもの。


 「そういえば、壊れた足場はどうしてるんです?」

 「おお、あれか? あれはやらかした馬鹿どもにやらせてるぞ。うちのおふくろが見張ってるからな。逃げ出そうものなら腕の一本や二本粉々になるだろうよ」

 じゃあいっか。あっちを放り出してこっちに来てたら、私が説教していたところだわ。でもそんな事したらこの人達を喜ばせるだけになりそうだからやめておきましょう。

 そんな時、丁度頼んでいた荷物が届いたようだ。通用口の入り口に三台の荷台が置いてあった。この量を運ぶのは相当骨が折れるわね。今日騎士団の人達が来てくれたのは渡りに船だったわね。



 でも、これを全部運ぶと邪魔になるので、まずは整地よね。立体感のある庭を作りたいので、高低差のある丘を作るのが先ね。あと、王妃様とかが散歩にも使うと言っていたので、散策できるように小道を幾つか。あとは、中央付近にお茶を飲めるスペースも作って……。


 うん。大体のレイアウトが頭に浮かんだので、肉体労働担当の第二騎士団の皆さんに丘作りをお願いする。

 お願いするんだけど、終始笑顔なのが怖い。

 しかし、ホント蒸し暑いわね。こんだけ人が多かったら熱気がこもるのかしら?

 でも、屋外なのよね。気になったのでタロンさんに聞いてみた。

 「あの、ここ屋外なのに、雪もないし、風も殆ど入ってこないんですけど、どうなってるんですか?」

 「あぁ、上を見てごらん」

 見上げると、かなり高い所に正方形のガラスで塞がれていた。ルーブル美術館のガラスピラミッドみたいなやつだ。確かにあれなら、雨風も防げるし、陽光がいい感じに差し込んでいいわね。

 しかし、あんな凄いガラスを設置するなんて、意外とこの世界の技術も凄いのね。


 「なんでもアンバーレイク公爵領の技術らしいね」

 なんだソフィアのところで取り付けたのか。しっかし、ホントソフィアのところはチートよね。世界観ぶち壊しまくってるわね。いい意味で。

 でもこの暑さは絶対人数が原因だと思うの。だって、昨日はここまで暑くなかったもの。

 それから、丘を作って、レンガで石畳を敷いたり、お花を植える予定のところにレンガを積んでいってとやっていたら大分時間が経っていた。

 まだお花を植えていないのに、それっぽく見えるわ。ここにガゼボとか東屋とかあるといいのかもね。


 しかし、予定より早く終わってしまったなぁ。まぁ、手伝ってくれた人が多かったお陰で腰も痛くならずにすんだしね。感謝感謝。

 でも、私を呼ぶ時に『次期団長』というのはいただけないわね。私はなるつもりなんてこれっぽちもないんだから。

 そのせいでディンゴちゃんに「おめでとう」なんて言われちゃうし。

 これ以上この人達と関わると、要らぬ誤解を生み続けてしまうので、明日以降は来なくていいと伝えた。

 笑顔で泣きながら嫌だと言っているけれど、もうやる事無いのだと説明するのに一時間も費やしてしまったわ。勿体無い。


 手伝ってくれたのは感謝しているのよ? でもね、いくら鍛えていても明日は筋肉痛になっているはずよ。剣の訓練と違うところを使うから、きっと明日明後日は痛くて立ち上がれないはずよ。ゆっくり休むといいわ。そして、私の事も忘れるといいわ。

 でもなんでこんなのにばっかり懐かれるのかしらね?

 本来ならタロンさんが仕切るべきだと思うのだけど、「そういうの得意そうだね」なんて言って押し付けるんだもの。久しぶりに疲れちゃったわ。精神的に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ