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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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03 お父様からの呼び出しは大抵ロクなもんじゃない


           *      


 「お父様お呼びですか?」

 「あぁ、クリスぅ待ってよぉ……」

 私の部屋とは打って変わって少し肌寒い部屋。

 暖炉くらいつければいいのに。

 いっぱい着込んできて正解だったわ。


 「それで用って何ですか? 今度は神社とか寺とか、もしかしてモスクを建てろっていうんですか?」

 「いやいや…」

 「じゃあ、神殿とかパレスですか」

 「いや、そういうのじゃないんだ」

 一体なんだろうかと思っていると、机の横に置いた箱から数十枚の封書を取り出して、机の上に置いた。


 「これは……」

 一番上には『最後通告』と書かれていた。

 「なんですかお父様…。もしかして、街金でお金でも借りて返せなくなったんですか?」

 「そ、そんな事するわけないだろう? ほら、差出人をよく見て」

 お父様がトントンと示した差出人の所を見ると、『エテルナ王妃』の名前が記されていた。


 「これって呼び出しですか?」

 「うん……」

 「いつからです?」

 「夏前くらいかな……」

 「なんで無視し続けてたんです?」

 「いやだって、いろいろ忙しいし、ルイスとクリスが私の仕事を手伝ってくれるもんだから、いなくなったら大変なんだよ」

 「それにしても……」

 「まぁ、引き延しすぎたと思うんだけどね」

 「まじおこですよこれ」

 中身を見ると、簡潔に『はやくしろ』と書かれていた。

 一体最初の方には何て書かれていたのだろう。


 「そこで、申し訳ないんだけど、クリスにはこの後王宮へ行ってもらいたいんだ」

 「へ?」

 「いや、まぁ一応レオナルド殿下の婚約者だからね。今まで王妃教育をしてこなかったのも問題でね」

 確かにそうね。よく今までやらずに済んできたわね。

 王妃教育なんて、固くてキツいイメージしかないんですが、実際のところどうなんですかね?

 正直何をやるのか、皆目検討もつきませんが、まぁ、うちでやっている事に比べれば、そんなに大変じゃないのかな?

 「それで、王妃教育含め、王城での暮らしに慣れるように暫く滞在しろと…」

 あれ、本当にガックリきてますね。意外。

 でも暫く王城に滞在しないといけないのか。


 「あの…、滞在中にバレたらどうするんですか?」

 ポカーンとした顔で私を見るお父様。言われるまで気づかなかったみたいなかんじしてますが、まさかそんな事ないですよね?

 「あ、そっかぁ………」

 まぁ確かに、どこからどう見てもかわいい女の子にしか見えませんから、忘れてしまうのは仕方ないですが、本気で忘れるのはどうかと思いますよ?

 最近は、少し色気も出てきたと思いますが、どうです?


 でも今回は他に懸案事項があるのか、どこか上の空だ。

 「あと、それとは別に問題が発生していてね。それの対応に追われているんだよ」

 やっぱりそうでしたか。

 ()()()で解決できない問題なんて、婚約解消位のものと思ってたんだけど、どうやら他にもあったらしい。


 「実は、例の件で、他の貴族への説明に人を取られていてね、ルイスもサマンサも学園に入ってる時に仕掛けてきたんだよ」

 最近メイドさんも使用人さんも少ないと思っていたんだけど、まさかそんな理由だったとは…。

 「それで、いろんなところに説明に行ってもらってて、この後もそれぞれの子供と孤児たちの面倒を見るもの以外は、北とか東の貴族に説明に行かなくてはいけなくてね」

 あのメアリーにできるんだろうか?


 「私も、この後レイチェルと公爵領に行かなくてはならなくて…」

 「公爵領ですか?」

 「そう。アンバーレイク公爵領。そこでアンバーレイク公爵夫妻と今後の協議をして、他の公爵家や侯爵家に話を通さないといけなくて。もうこの時点でお腹が痛いよ」

 「大変…そうですね…」

 「そうなんだよ。本当ならルイスにサマンサ。そしてクリスに全部お願いしちゃいたかったんだけど、今回はそうもいかなくてね…」

 あっぶな……。もし、そんな事になったら、お父様じゃないけど、私もお腹痛くなりそう。

 今回は()な方に行けてよかってわ。

 こんな雪深くて寒い中、鉄道も通っていない場所へ、馬車で行かないといけないなんて、正気の沙汰じゃないものね。


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