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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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64 番外編11 年末のガールズトーク②


 「ただねー、問題があって…」

 「何?」

 「本体がないのよ。だから、パソコンでは動かせるからPC版としてなら売り出せるわね」

 この世界でパソコン持ってるのなんてソフィアのとこだけでしょうに。


 「なんか話聞いてると、作ってるゲームって…」

 「そう。もちろん乙女ゲーよ。当然じゃない!」

 そんなきっぱり言わなくても。というか、普通はもっと簡単そうなやつ作るんじゃないの? この世界初のゲームが乙女ゲーだなんて…。


 「ちなみにちゃんとクリスちゃんが主人公よ」

 「私が?」

 「そう。イケメンなヒーロー達を攻略してくんずほぐれつするゲームよ」

 「ただの18禁ゲームじゃないのよ!」

 どうして私の周りにはこんなのばっかりなんだろう…。

 「えぇ…どうして? 普通そういうものがやりたいんじゃないの?」

 さも大多数の意見みたいに言わないでよ。


 「ヒーローって事は相手は男なの?」

 「そうよ」

 きょとんとした表情で何言ってんだこいつみたいな顔をする。それは私のセリフなんだよなぁ…。

 「えっとねー、レオナルドでしょ。あとはウィリアムにアーサー、テオドールにエリオット…あ、今はエリザベスだっけ? あとは、協力してくれたムックとロザリーかな」

 「リアルでも大変なのに、ゲームで既成事実作られのなんか嫌なんだけど」

 「まぁ、そこはフィクションって事で。ちなみにソフィアちゃんは攻略対象との仲を邪魔する悪役令嬢にしたんだけど、これは内緒ね」

 それを聞いたら怒るし、本当に攻略の邪魔をしそうよね。リアルで。


 「シナリオもスチルも全部出来上がってるからね。あとはプログラムとデバッグ作業といろいろあるんだけど………ねぇ、相談なんだけど」

 なんか嫌な予感がする。

 「全部音声入れたいからクリスちゃんアテレコしてくれない?」

 「絶対に嫌」

 「そんなぁ…」

 そんなぁじゃないわよ。よっぽど悔しかったのか私のティラミスの残りを全部食べるイデアさん。私一口しか食べてないんだけど。これすっごく美味しかったのに…。


 恨めしい顔で睨むと何を勘違いしたのか、イデアさんがシナリオを語って聞かせた。

 別に聞きたくもないんだけど、嫌でも聞こえてしまうのよ。

 「……特におすすめはムックの粘着質な攻めね。密室でいろんなもの使ってじわじわ攻めていくストーリーはなかなかよ。本人監修でシナリオを書き上げたから、特にいやらしいわ。ホントに声当てて欲しかったなぁ………」

 早く終わらないかなぁ…。


 そんな風に思いながらカフェラテを飲みながら窓の外を眺めていたら、ばったりと歩いていたソフィアと目が合ってしまった。

 そのまま勢い良く店内へ入ってきたソフィアは自然な流れで私の横へ座った。

 「あ、店員さーん、注文いいですかー」

 「はい。何にしますか?」

 「えっとー…どうしようかな…悩むなぁ……、じゃあこのカフェモカとザッハトルテで」

 「はい。少々お待ちください」

 「あ、私も追加で、ココアとガトーショコラ生クリーム多めで!」

 「はい。かしこまりましたー」

 何普通に注文してるの? というかどうしてイデアさんは追加で頼んだの?


 「クリスはいらないの?」

 「…私はいいかな。これあるし」

 「そっか」

 いや頼んだら頼んだで、また私の口に入りそうになかったからなのよね。


 いや、それよりも公爵令嬢ともあろう人物が護衛もメイドも付けずに街を一人で歩いているのは如何なものだろうか? まぁ、今更なんだけどさ。

 「ソフィア一人で来たの?」

 「そうよ。ステラとシフォンは年末の即売会に行ってるわ」

 「あぁ……そういえば今日からだっけ? うちのメイドさん達もほぼ全員行ってたわね。今思い出したわ」

 どうりでここに来るまで人が少なかった訳だわ。


 「え、即売会ってコミケみたいなやつ?」

 「そう。なんだっけ名前?」

 確かうちのお母様がエテルナ王妃に頼まれて開催したやつだっけ。八割が不健全本だとか。イデアさんが興味深々だ。

 確か港にある駅近くの空き地に立てたのよね。大規模なイベントが出来る展示場。

 アンバーレイク五兄弟の強い意向により有名な逆三角形の建物だ。

 近くには飲食店や服屋などが入るモールもあるので、休日は特に人が集まる場所なのよね。

 そんな杮落とし的なイベントが同人誌即売会だなんて……。


 「コミックマニック。略してコミック。今日から三日開催よ」

 それ本当に略せてるの?

 「ソフィアは行かないんだ」

 「いや、その…うちのメイド達がみんな行くから、全部買ってきてって頼んであるから……私行っても邪魔になりそうだし………」

 「そうなんだ……」

 「何よりクリス本をあるだけ買い占めそうで自重できそうにないから…」

 「…………………………」

 今のは聞かなかった事にしておきましょうかね。


 「……くっ……私も行きたいけど、お金持ってないのよね」

 なるほど。つまりここの支払いも私持ちか…。まぁ、いいけどさ。ホントこの人ダメ人間だよね。

 そんな他愛ない話をしていたらソフィアとイデアさんの頼んだものが届いた。


 「あ、それ一口ちょうだい」

 「いいわよ。そっちももいい?」

 「いいわよ。はい」

 そう言って慣れた感じでそれぞれお皿を差し出し一口分とって食べる二人。

 「うっわ。何これめちゃくちゃおいしい!」

 「これもやばいわね。めちゃくちゃ濃厚よ!」

 それはよかったね。それはそうと、二人とも変わった食べ方してるね。

 「なんでそんな端っこのとこ食べるの?」

 そしたら二人に「はぁ?」みたいな顔をされた。え、私がおかしいの?

 「いやだって、自分のじゃないし、先端が一番おいしいところだから、そことっちゃ悪いでしょ?」

 「そうよ。端っこなら多めにとっても気付かれにくいしね。それにケーキによってはここがクリームが一番塗ってあるもの」

 「あ、わかるぅ」

 あれ、私がおかしいのかな?


 二人ともさも当然みたいな感じで和気藹々と話し込んでいる。

 「ところでクリス、珍しい人と一緒よね」

 まぁあんまり二人っきりで絡む事なかったしね。というか、最初の数日以外あんまり見かけなかったのよ。

 「まぁ、呼び出されたからね」

 「ふーん。何話してたの?」

 「クリスちゃんがちゃんと女の子してるのかなーとか、ソフィアちゃんのところでゲーム作ってたって事を話してたわ」

 「やばい。どっちも気になる」


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