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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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49 ない


           *      


 目を覚ますと、何故かベッドの上で眠っていた。

 おかしい。ソファの上に辿り着いた時点で眠ったはずなのに、どうして、二人の間に眠っているんだろうか?

 まさか、二人が運んだとか? それはないでしょう。


 マーガレットはソフィア大好きだから、私を横に置くわけないし、置くとしたらソフィアかな? でも一人で運べるかしら?

 気になったので左を向くと、まだマーガレットが眠っていた。よく寝るねぇ。これ夜になったら眠れなくなるパターンだよ?

 大きく開いた口からは大量のヨダレが垂れていた。

 うん。これは、下のマットレスごと交換しないといけないわね。


 そして、右を向くと、ソフィアは起きていたようで、ベッドの上で座っていた。

 そのままソフィアの顔の方へ視線を向けると、信じられないくらい青い顔をしていた。

 この時間まで寝てしまった事により、二食分食べられなかった事に絶望しているのかしら?

 ちゃんと用意しているから安心しなさいよ。


 そう思って状態を起こしソフィアに向き合うと、今頃気づいたのか虚ろな目で私をみつめる。

 いったいどうしたんだろうか?

 寝違えて首でも痛いのかしら?

 「どうしたのよ、ソフィア。そんなに青い顔して…。ちゃんとご飯なら用意して……」

 「違うわ……」

 一体何が違うというのだろうか?


 「そんなになるなんてよっぽどよ。いったい何があったか言ってごらんなさい?」

 ソフィアはぎこちない様子で一回頷いた後、途切れ途切れに何があったのか語りだした。

 「あ、あのね…。結局あの後ね、眠くなってまた寝ちゃったんだけど……目が覚めたら隣にクリスが寝ていたの…」

 もうその時点でおかしいんだけど、ひとまず全部聞こう。


 「それでね…、すっごく熟睡してるから、これは何しても起きないと思ったの…」

 「うんうん………ん?」

 「それで、せっかくだから、クリスのクリスを久しぶりにじっくり眺めて触って握ったりしようと思ったの……」

 「待って…」

 やっぱりソフィアはおかしいよ。なんでそんな事女の子がやろうとするのさ。

 流石に一回止めて、理由を聞こうとしたんだけど、ソフィアは静止の言葉を聞かずにそのまま語り続ける。


 「そしたらね…………………、クリスの…………クリスの…………お◯ん◯んが無くなっていたのっ…………!!!!」

 最後は悲痛な声で叫ぶように言い切ったソフィア。

 全くソフィアは何を言ってるんですかね…。

 寝ぼけてそんな意味不明な事言うなんて、よっぽど欲求が溜まってるのかしら?

 でも一応不安になったので軽く下腹部を触る。


 …………………あれ?

 なんか…、ない気がする……。

 いや、まだじっくり確認したわけじゃないし、きっとどこか別のところに曲がってたりしてるのよきっと。あはははは………。


 すっと立ち上がり、ソファの方まで早歩きで近づき、ソフィアたちから見えないであろう場所でスカートをたくし上げ、もう片方の手でパンツを下ろし触ってみる。

 …………………ない。……………………無い! 無いわ!


 たくし上げた布で見えないので、横にずらして見るが、慣れ親しんだあの無駄に大きいものが無い。

 あんなに大きいもの隠しようがないわ。

 どこかに落としたのかしら?

 気を落ち着かせて、もう少し触って確認すると、触り慣れてないモノがあったので、急に怖くなり確認はそこで止めてしまった。


 「そ、そそそ………ソフィア………。どうしよう。無いんだけど……、どこかに落としてきたのかな?」

 「そんなワケないでしょ! まぁ、私も詳しく確認してないからあれだけど、確認しようか?」

 「……う、うん………」

 どうしていいのかわからずに、ソフィアに助けを求めてしまったのだけど、こういう時のソフィアは真面目な顔なのよね。


 私に近づくと、軽くしゃがみこんだ。

 「そのままあげててね。確認するから」

 「う、うん………」

 そのままパンツを下げられて確認されるが、すっごく恥ずかしい。

 きっと今の私は顔が真っ赤になっているだろう。

 他に何かされるのかと思ったんだけど、パンツを下げられただけだった。


 物凄く長い時間に感じたけど、多分一分も経っていないのだろう。

 ソフィアがすっと立ち上がると、やっぱり青い顔で複雑そうな表情をしている。

 「ど……どう…だったの?」

 「クリス………女の子になっちゃってるわ………」

 「え?」

 「だから、女の子になっちゃってるのよ」

 どうやら聞き間違いでは無かったようだ。


 「どういうこと?」

 「こっちが聞きたいわよ!」

 そんな風にソフィアと話していたら、マーガレットがやっと起き出した。

 そして、開口一番事態をややこしくさせる事を口走る。


 「ちょっとクリス! 私のソフィアお姉様の前でスカート持ち上げて何やってんのよ、こんの…ど変態がぁっ!」

 「ち、違うの…。これには深いワケが…」

 「変態はね、必ずそういう事を言うの! 離れなさいよこのケダモノがっ! いつかやらかす…と……思っ…て…………いた………………わ…………………あれ?」

 私をぶん殴ろうかという勢いで近づいてきたマーガレットだが、何故か視線は私の下腹部を凝視していた。


 でも、そのお陰か殴られる事はなく、拳は宙に浮いたままだ。

 そして、ゆっくりと下ろすとぺたんと座り込み、顔を前に突き出し食い入るように見つめる。

 ちょっと恥ずかしいんだけど……。

 そう思ったんだけど、ずっとスカートをたくし上げている私が悪いのよね。

 あまりの衝撃でそもままの状態で止まってしまったわ。


 ぱっと、スカートを下ろし下半身を隠すと、すっと立ち上がり、真顔のマーガレットが私の両肩を掴み揺さぶる。

 「ちょっと! ちょっとどうしたのよ」

 「ちょ、やめっ……」

 「あんなに分かりやすいくらい大きいものどうしたのよっ! なんで女の子になっているのよ! 説明しなさいよ! せ・つ・め・いっ!」

 「そんな事言われても分からないよっ。分からないからソフィアに確認してもらってたんでしょ!」

 「なによその羨ましいイベントはっ! 私だってまだ確認して貰ってないのにっ! ねぇソフィアお姉様っ!」

 「あぁもうめんどくさい。ちょっと、二人とも落ち着きなさいよ」

 「落ち着いていられるワケないでしょう。私のも見て舐めてくださいっ!」

 「舐めてなんかないわよ! 勝手に増やさないでよね!」

 これ幸いと要求を増やすとは、とんでもないな。


 しかし、今はそれどころではない。

 「ねぇ、何か心当たりとかないの? 猫の尻尾踏んだとか、お地蔵さん倒したとか、カラスの餌横取りしたとか…」

 「そんな事してないし……………あ、待って一つ心当たりがある」

 「え、何? カエルにおしっこかけたとか?」

 「違うし! 多分だけどその人のせいだと思うから、ちょっと聞いてくるね」

 「ちょ、クリス!」

 ソフィアが止めるのも待たずに、原因のところへ理由を問いただしに行く。


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