29 久しぶりの友人達
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翌日―――――
昨日のあの馬鹿みたいなイベントの盛り上がりは鳴りを潜め、今日は朝からいつも通りの温度感だ。
あれぇ? もしかして本当にお祭り感覚だったのかしら?
でも、違うとも言い切れないのよね。だって、私今日もシスター服着せられてるんだもの。レオタードタイプの方…。
正直、ちょっと恥ずかしいのでパレオみたいなものを巻きたいんだけど、朝着替えを持ってきたメアリーに却下された。
「折角クリス様のクリス様がこんなにくっきり拝める事は無いんですから隠さないでください!」
と、朝一で爆弾級のセクハラを受けたわけなんだけど、それ以外は本当にいつも通り。使用人さん達もいつもの格好だ。
まぁ、どうせ見られるのは家族と使用人さん達だけだからいいかなと思っていた。今思うと、その時の自分をぶん殴ってやりたい気分だわ。
今年の夏は、例年以上に暑いからか、レオナルド始め他の友人達は全然来なかったから油断していたのよ。
だからお菓子も作っていなかったし、普通に部屋で寛いでいたのよ。
そしたら突然ソフィアとマーガレットとエリーが来たのよね。
先ぶれが無いのは今更なんだけど、ノックも無しに部屋に入るのは止めてほしい。
「クリスー、おひさー、私に会えなくて寂しくなかったかしら………………………って、えええええええええええっ!!!!!!!」
久しぶりに会ったソフィアは蝉よりもうるさかった。
そんな朝から騒がなくてもいいのに。
何をそんなに驚く事が……って、あぁ…私の格好か…。
「え? え? どうしたの? そんなエッチぃカッコして…もしかして私を誘っているの? いいわ。受け入れるわ。ありがとうlクリスーーーー!」
わけのわからない事を口走りながら突進してくるソフィアを軽くいなす。
「…ぃったぁ……。って、なんかしばらく会わないうちに冷たくなってない?」
「いや、久しぶりに会ったソフィアの方が異常なのよ」
「そんな事よりぃ、その格好の理由を教えてくれないかしらぁ」
平行線を辿っていた私とソフィアの会話をエリーがぶった切ってくれたので、今まで有った事を話した。
「なるほどなるほど。分かったわ。私、クリス教に入信するわ」
「そもそもクリス教なるものに私は関わっていないのよ。私非公認だし」
「じゃあなんでそんな格好してるのよ」
「うちのメイドに聞いてよ。私も知らないし」
「私もぉ、そのシスターの格好してみたいわぁ」
「エリーに合うサイズなんて無いんじゃない? どうせ着てもすぐ破けるわ」
「ひっどぉい! マーガレットったらぁ…」
なんかマーガレットも暫く会わないうちに毒舌になった気がする。
今着てるレオタードタイプならワンチャン着れるんじゃないかしら?
「しかし…クリスちゃんっておっきいのねぇ……。私のより太くて長くて大きくてとても固くて熱そう……。ねぇ、もしよかったら挿れてくれないかしらぁ」
「あんたふざけんじゃないわよ。幾らなんでも下品すぎるわよ。冗談にしても笑えないわ」
「そ、そうよね…。ごめんねクリスちゃん……」
「いや、まぁ……うん。大丈夫。慣れてるから…」
「慣れちゃダメでしょうに。いい? こういうのは訴えたら勝てるわよ。ちゃんと証拠残しておきなさいな」
「あっ…はい……」
えぇ…。マーガレットさんや、どうしたんですか?
いや、まぁ。ツッコミ不在が続いている中、貴重なツッコミ要員として非常にありがたいんだけど、こんなキャラだったっけ?
あんなにソフィアにべったりだったのにどうしちゃったのかしら?
チラッと、ソフィアとエリーを見るが、肩を竦められるだけだ。どうしてこうなったのか分からないらしい。
もしかしたらこの行き過ぎた我が家のセクハラ問題も解決してくれるかもしれない。
期待を込めてマーガレットに向き直ると、思いっきりチョップされた。
「…ぃったぁっ……。ちょ、何するのよ……」
「あんたもそんな誘うような格好してないで着替えてきたらどうかしら?」
「着替えたいのは山々なんだけど、シスターの服しか用意されてないのよ」
「じゃ…じゃあ……、しょうがないわね…」
「ねぇ、私もそれ着たいんだけど」
「「えっ⁉️」」
「あっ、私も着たいわぁ…」
「じゃ、じゃあ私も……」
「では皆さんの分も用意してありますのでどうぞ。あ、クリス様は今日一日はずっとそれでお願いしますね」
どこから現れたのか、うちのメイドさん達がニコニコしながら衣装を持って立っていた。
「いつの間に……………」
まぁ、そういう反応になりますよね。
ソフィアとエリーは慣れたもので、全く動揺していない。
今日一日シスターの格好でいいから、下半身が隠れるタイプにの衣装に着替えさせてくれないかしら?




