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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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18 かき氷


 という事で、かき氷屋さんに来たのだけど、いやぁ…混んでるわねぇ。 

 こんだけ暑いとみんな冷たいもの食べたくなるわよね。

 結構待つのかなと思ったら、タイミング良く何組かのお客さんが退店したため、そんなに待たずに席に着く事ができた。


 「こちらメニューになります」

 「あら、どうも……………」

 持ってきた店員さんを見てビックリしてしまった。

 「あら、ビーン。ビーンじゃないの」

 「俺はビーンじゃねぇ」

 「あら、ごめんなさい。じゃあバナナかしら?」

 「バナナでもねぇよ。俺はベルファイアって名前があんだよ」

 「分不相応ね」

 「やかましいわ」

 「で、なんであんたがここにいるのよ」

 本当に驚いた。てっきりまだ牢屋の中で体育座りして、苔むしているものだと思ってたわ。それなのにこんな所で………まさか。


 「まさか、私に復讐しようと脱獄したのね?」

 「してねぇし、しねぇよ」

 「え、そうなの?」

 じゃあ、どうしてここに…。

 「あの後、釈放されて、行き場なかったんだけど、お前ん所の親に仕事を斡旋してもらってな、こうして立派に働いてるってワケよ」

 「へー」

 「興味なさそうな受け答え方しやがって。まぁいい。あん時は俺が悪かったしな。この通りだ」

 そう言って、深々と頭を下げるベルファイア。


 「反省したのならいいわ」

 「そうか……」

 「ところで、何でかき氷屋さんなの?」

 「ん? あぁ、それな……」

 「ねぇクリス。さっきからこの人と話してるけど、この人誰?」

 「そうよ。こんな小汚いおっさんと知り合いなんてどういう関係?」

 あぁそうか。あの時は二人居なかったんだよね。確かまだ小さいとかで家にいたから知らないのか。


 「この人はね、私に唯一、一撃を与えた人よ」

 「え、ホントに?」

 「こんなひょろっとした顔の曲がった人が?」

 「顔は関係ねぇだろうが…」

 「えぇ。今も昔もこの人だけよ。あの後は暫く顔の腫れが引かなかったわ」

 「ちょ、おま……」

 まぁ、間違った事は言ってないわよね。縛られた所でぶたれたんだから。あの時は私もまだまだ未熟だったわね。

 フッと笑うと、アリスとメタモの二人が目を輝かせて質問を繰り出す。


 「ね、ねぇ、どうやって当てたの?」

 「私もあそこに一撃入れたいのよ。やり方をを教えて」

 「やり方も何もたまたまだからなぁ…」

 あれはいい勉強になったわ。あの頃は若かったわ。この子たちみたいに子どもだったわね。


 「お願いよ。私一度でいいからクリスを屈服させたいの」

 「いーえ。私が先に当てるわ」

 「お前…嫌われてんのか?」

 「多分ね…」

 哀れんだ顔で見られたけど、多分想像してるのとは違うと思うわ。

 二人の言ってる意味はちょっと違う気もするしね。

 そんな感じで遠い目をしながら三人を見ていたが、一向に終わる気配がない。


 「あの、そろそろ注文してもいいかしら?」

 「あ、あぁそうだな。そうだよな」

 「えー、まだ決まってないわ」

 「メニュー見てないから、もう少し待って」

 かき氷が食べたいと言ったのはあなた達よね? まぁ、ゆっくり決めてもらって構わないけれど。

 そんな事を考えていたら、あっという間に決まったらしい。


 「あたしこのメロン一玉かき氷がいいわ」

 「じゃあ、あたしは贅沢マンゴーかき氷がいいわ。あ、アリス分けっこしない?」

 「いいわよ」

 このお店でも高い方の商品じゃないの。

 というか、私も選んでなかったわ。どうしましょ。


 「えっと、じゃあ、このイチゴかき氷で」

 「それただシロップがかかってるだけじゃない」

 「いいのよ。かき氷なんて基本そういうものでしょ?」

 フルーツかき氷って、かき氷がメインっていうより、冷やした果物を食べるだけよね? 正直私はこっちのシロップかけただけの方が好きね。

 だって、せっかくのふわふわにかいた氷よ? 氷を楽しまないでどうすんのよ。

 まぁ、まだお子ちゃまの二人には分からないでしょうね。


 「あいよ。俺の顔面にぶつけたやつだよな」

 「………………そうね」

 あらやだ。思い出しちゃったわ

 「あん時の詫びだ。今日のは俺が奢らせてもらうぜ」

 「えっ! 悪いわよそんな…」

 「いいんだよ。気にすんな」

 「そう?」

 「あぁ。ここ給料いいし、結構使っても残るしな。ここで働けて良かったよ」

 ふーん。ちゃんと働いてるならいいわ。まぁ、今回はお言葉に甘えてご馳走になりましょうかね。


 「ところで、かき氷屋さんって、冬とかどうしてんの?」

 「ん? あぁ、プレナイトピーク領の雪山で天然氷作ってるぞ。あそこ夏近くまで涼しいからな。氷解けないんだよ。あそこんとこの領主にも世話になったしな」

 そういえば、プレナイトピーク領って上の方は永久凍土の雪山だったわね。そりゃ、氷を作る氷室くらいあるわよねぇ。

 スキーとかスノボとかあったらいい収入源にならないかしら。


 「はいよ。おまちどおさん」

 「これよこれ。これこそかき氷よね」

 ドンと置かれたかき氷は、まっさらな雪のようにふわふわした氷に鮮やかなイチゴのシロップがふんだんにかけられていた。その上の部分には鮮やかな赤を覆い隠すかのようにたっぷりと練乳がかけられていた。


 「ふわぁ〜」

 一口とって口に入れると、あっという間に消えて無くなる。

 昔タイプのガリガリしたかき氷も好きだけど、このふわとろのかき氷は噛まなくても溶けるから歯が痛くならなくていい。

 そういえば二人とも大人しいなと思って見てみたら、メロンとマンゴーを食べさせっこしていた。なんか尊いな。

 こうしていれば可愛いのに、変に大人びた事するからいけないのよ。


 「ところで、アンタはいつまでここにいるの? 仕事に戻らなくていいの?」

 かき氷を持ってきた後、そのままアリスとメタモが食べる様子をデレデレしながら見ているベルファイア。

 「いいじゃねえか。お客さんも減ってきたし、他にも店員いるからな」

 「通報したらまた塀の中ね」

 「何言ってんだ。手ぇ出してねぇだろ? こういうのは触らずに遠くから眺めるもんだ」

 そんなプロのロリコンみたいな事言わなくてもいいのに。


 「何アンタ、ロリコンになったの?」

 「まぁそうだな。この街で働くようになって、良さに目覚めたな。今までの俺はどれだけアホだったか身にしみて分かったよ」

 今も十分アホよ。


 「まぁ、捕まらないようにしなさいよ」

 「そうだな。同じ空間で同じ空気を吸えるだけで感謝すべき事だからな」

 「………」

 この二人や街の子供達に危害が及ばなければいいけど、どうにも信用ならないわね。


 気持ちを切り替えるべく、二人の食べる様子を見る。

 嬉しそうに食べているのを見るのは、気持ちがいいんだけど、やっぱり気になる。

 明らかに氷よりフルーツメインになってる気がするのよね。

 やっぱりあれはかき氷というより冷やしフルーツって言った方がしっくりくると思うの。精々宇治金時のあんこまでじゃないかしら? 乗っけていいのは。

 なんかこんなこと言ってたら、時代遅れのおっさんとか言われちゃったりしないかしら?


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