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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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16 どうやら安息の地はないらしい


           *      


 結局、どこに逃げても夜遅くまで付き合わされて、もう大変。

 そこで、賢い私は考えました。

 家にいるからいけないのだと。

 せっかくの休日に家にいても落ち着かないし休まらないのと一緒で、こういう時は外出したほうがいいのよ。気分転換にもなるしね。


 暑くてどこも行く気がなかったのだけれど、朝早いうちに出てくればそこまで暑くないわ。

 ということで、ラピスラズリ本店応接室でのんびりと過ごす事にしたのだけど、思いの外快適だった。

 まさかうちにも付けてないのに、クーラーがあるなんて思わなかった。


 どうやら、アンバーレイク領のエアコン業者さんのところで閑散期に契約したらしい。全店取り付けたらしく、結構値引きもしてもらったらしい。うちもつけてくれれば良かったのに。

 天井埋め込み型だから、工事とか大変だったと思うんだけど、いつ工事したんだろう。

 まぁ、快適だからいいわ。


 応接室の質のいいソファに座り、カリーナお手製のミルクセーキとメレンゲクッキーを楽しむ。

 「あぁ~…おいしい……」

 「そ、そう。よかったわ」

 「カリーナもお菓子とか作れたんだね」

 「あ、ああ、当たり前でしょっ! ふん…」

 「ごめんなさいねぇ、クリス様。この子ったら食べてもらえるよう毎日練習してたんですよ」

 カリーナの母親コロナさんが暴露する。


 「ちょ、母さん、それ言っちゃダメ…」

 「大丈夫よ。カリーナちゃんがツンデレなのは今に始まった事じゃないから」

 「な…なな………なっ、何……なにをぉ……」

 顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。ホントにかわいいなぁ。私と同い年なのに私よりお姉さんに見えるのに、これだもの。ギャップが堪らないわ。


 そんなカリーナはなんだかんだ言いながらも私の真横にぴったりとくっついて座っている。

 まぁ、冷房が効いてて涼しいからいいんだけどさ。そんなに狭いソファじゃないだろうに。

 「そ、それで味とかどうなのよ」

 「すっごく美味しい。甘さとか丁度いいし、メレンゲクッキーもサクサクしゅわしゅわ。いくらでも食べられるわ」

 「そ、そう。ふーん…。それは良かったわっ」

 「もう、カリーナったら、素直に嬉しいって言えばいいのに」

 「ぬぅあっ! だ、だから母さんそうやって変な横やり入れないでよ」

 「照れてるカリーナかわいい」

 「⁉️」

 ボンッと音がするくらい真っ赤な顔になって目を回して倒れてしまった。

 おかしいな。ただ、素直に感想を言っただけなんだけどなぁ。


 「これが意識して言ってれば良かったんですけどねぇ…」

 「?」

 コロナさんがよく分からない事を言っている。

 まぁ、冷房効いてても夏だしね。やっぱり熱中症とか気をつけないと危ないな。

 倒れたカリーナの頭を自分の太ももの上に乗せる。

 こっちのが気分が楽になるんじゃないかなと思ってね。


 「あらあら、まぁまぁ……。ありがとうございます」

 「ん? いえいえ……」

 コロナさんも私の対面に座る。終始満面の笑顔だけど何かいいことでもあったのかしら? この夏最大の売り上げを記録したとかかしら?

 そうして暫く、冷房の効いた部屋でカリーナの頭を撫でながら、コロナさんと最近の商品の売り上げや動向を話して過ごしていたんだけど、どうやらここも安息の地ではなかったようで。


 「コロナさんおひさー。新作出来たわよー」

 「今回のは、特にすごいわよ。クリスがなんと…ってぇえええええっ!」

 「ちょっと、何でいるのよ」

 「それはこっちのセリフなんだよなぁ」

 急に応接室のドアが開いたと思ったら、やたらと露出度の高い服を着たアリスとメタモが入ってきた。どうしてここが分かったんだろう。


 「あぁっ!」

 「どうしたのメタモ」

 「く、くくく…クリスが膝枕してる………」

 「あっ! 本当ね。私だってしてないしされた事無いのにっ」

 「いや、これはカリーナが突然倒れたからで、特に深い意味は無いよ」

 「嘘だっ!」

 「こわっ…。え、なになに? 何でそんな怒鳴られないといけないの?」

 「あっ…えっと、その…………」

 「と、とにかくダメなものはダメなの」

 ただ感情的にダメだダメだって言われても困るんだよなぁ。


 そんな二進も三進もいかない状況をコロナさんが、打破してくれた。

 「あの、アリス先生、メタモ先生。本日は新しい原稿の入稿でいいんですか?」

 「あ、そうよ。そうそう。新しいのが出来たから持ってきたの」

 「ありがとうございます。お預かりしても?」

 「えぇ。よろしくね」

 アリスとメタモがB4サイズくらいの紙束が入りそうな茶封筒をコロナさんに渡した。原稿って何?


 ただ、そのやり取りを呆然と見ていたんだけど、メタモがこちらを見てニィっと笑うと、小走りで私の右横にぴったりと座った。

 「め、メタモ⁉️」

 「あ、ずるいっ」

 「ふふっ」

 私の腕にぎゅーっとしがみつくメタモ。どうしちゃったの? 何か悪いものでも食べたのかな? それとも連日連夜の大騒ぎでおかしくなっちゃたのかな?


 しかし、今度は後ろからアリスが首に手をまわし、左側から顔を出す。

 どうしよう全く身動きが取れなくなってしまったんだけど?

 もしかして、このまま私を動けなくしてトイレに行かせないようにしてるとかかしら?

 「クリス様は本当に人気者ですね」

 「え? これが?」

 「自覚が無いのもどうかと思いますよ」

 自覚ねぇ…。そこまで言うなら、試しに何かしてみようかな。


 アリスとメタモを交互に見やる。

 「今日は二人ともいつもと違って可愛いのね」

 ボンッという音が両サイドから聞こえた。鼓膜が破れるかと思ったわ。

 と、同時にするするーと二人からの拘束が外れた。

 しかし、膝枕していたカリーナが起きない事には動けない。

 「……んんっ……」

 丁度よくカリーナが目を覚ましたようだ。

 「あれ、私……………!!!!!!!!!!!!」

 「あ、おはよ…」

 「なっ………なななな、何でえっ!」

 目覚めた瞬間に跳びのき、両頬を両手で押さえ、真っ赤になるカリーナ。心なしか、湯気まで出ている。また、倒れちゃうんじゃないだろうか。


 「どうして、こんなに鈍いんでしょうね…」

 コロナさんが何か言った気がするけど、気のせいでしょ。


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