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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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15 最近どう?


 「そういえば、最近どう?」

 「唐突に前振りなく最近の様子聞くんですね」

 「いいじゃない。ここ最近のクリスの様子を知っておくのは姉として当然でしょう?」

 それは当然なのだろうか? まぁ、気になる事はあるからね。折角だし相談してみましょうか。


 「実は、ちょっときになる事があって…」

 「えぇえぇ…。聞きましょう。聞きましょう」

 キラキラとした目で上半身を起こして聞く体勢になる。


 「王都から帰ってきてから、結構お父様と食事に行くんだけど」

 「待って。え、初耳なんだけど。私呼ばれてないよね」

 「お父様が呼ぶとお金かかるからって…」

 「分かったわ。後でお父様にはお店で詳しく聞かないといけないわね。で、何だっけ」

 「まだ全然話に入ってないわよ」

 「あ、そ? じゃあ続けて」

 お菓子をバリボリ食べながら、先を促すお姉様。


 「…えっと、お父様と食事に行くんだけど、行った先々で、床の模様がどうだとか、階段の段数はどうだったとか、置物のツボはどうだったとか、毎回聞かれるのよね」

 「あー、はいはい。それで?」

 「いや、全部答えるのよ。他に聞かれそうなことも先んじて言ったりしてるんだけど、その度に笑顔で褒めてくるのよ。どういう意図があるのかしら?」

 ホント不思議なのよね。いろいろ難題出してくるんだけど、特に意味がわからなかったのは、逆さまに読んだら何とか聞かれたことね。親子のスキンシップにしては異質よね。


 それを聞いていたお姉様が、ニッコリと笑顔を作り、口元に手をやる。

 「ウエルカムトゥーアンダーグラウンド」

 「ぷっ…」

 後ろでベルさんが後ろを向き、震えながら笑いを堪えていた。

 そんなお姉様は、顔を真っ赤にさせて下を向いていた。


 「そんな恥ずかしいなら言わなければいいのに」

 「…い、いや……、前お兄様が言っていたから……、私も言ってみようと……思っただけで………」

 最後の方は声量が小さくなって尻すぼみになっていった。

 まぁ、お兄様はそういうのを好んで言うから、真似すると火傷ですまないのよね。


 「ちょっと、ベルシック笑すぎよ!」

 「いや、未だに言う人がいるとは思わなくて…、ひひっ……、すいません…」

 「まったくもう。言うんじゃなかったわ。後でお兄様に抗議しなくちゃ。あー、あっついわー。ほんっとあついわー」

 手で顔をパタパタさせながら、アイスティーを何倍も飲んでいた。

 冷たいものを飲んでも、その暑さは解消しないと思いますけどね。寧ろどんどんと暑くなっていくと思いますよ。


 空になったポットを持って、ベルさんに話しかける。

 「ちょっとベルシック、おかわりちょうだい」

 「あ、はい。かしこまりました。同じのでいいですか?」

 「んー、どうしよっかなー」

 「他のも出来ますよ。レモンとキウイとか…」

 「あ、酸っぱいのはなしで。甘いのがいいわ」

 「では、おまかせでいいですか」

 「いいわよ。あ、なるはやでね」

 「はい。少々お待ちください」

 言い終わると同時に姿を消すベルさん。

 一体どうやってるんだろうね。あの瞬間移動みたいなやつはちょっと覚えてみたいのよね。


 暫く、空を流れる雲を呆っと見ていた。どれくらい時間が経っただろう。

 グラスに残った氷が溶けて水になっていた。

 勿体ないので、そのまま喉に流し込む。ほんのりフルーツの香りがした。

 あぁ、もうここから離れたくないなぁ。ここに食事とか運んでくれないかしら。

 「今日はここに食事を運んでほしいわね」

 お姉様も同じことを考えていたようだ。しかし、お姉様が食べる量をここに運ぶと、スペース的に足りないんじゃないだろうか。


 そんな事を考えながら、お菓子のお皿に手を伸ばすと、何も掴めなかった。

 起き上がり、テーブルの上を見ると、綺麗に空になっていた。お菓子のカスやナッツの欠片すら残っていなかった。流石お姉様。

 フルーツティーの入ったポットも見るが、ミントしか残っていなかった。結構量あったと思うんだけどなぁ。そんなに飲んだらトイレ近くなりませんか?


 「みぃ~つけたぁあああああああっ」

 突如、視界の上からヌッと髪の毛を垂らしながら顔を出してきた。

 「わっ!」

 「んっ………」

 その人物は、庇の部分を掴んで、一回転して中に入ってきた。


 「もう~、こんな所にいたのね。探したわよぉ」

 「あ、アンさん⁉️ どうしてここに」

 「どうしてって、今日も遊ぼうと思ったのにいないからよ。さ、行きましょ」

 私に安息の地は無いらしい。


 「どうしてもですか?」

 「だって、私、クリスきゅんと末長く仲良くしたいんだもの」

 一方的な好意って疲れますね。


 「ふふふ。クライブとキャロルより先に見つけられるなんてついてるわぁ…」

 「お、お姉様…」

 こういう時何かと反論してくれるお姉様が静かだ。

 ふと、お姉様を見ると、ちょっと涙目で座ったままだ。どうしたんだろう。

 「お姉様どうかしました?」

 「な、なんでもないわ。き、気にせず…行ってきていいわよっ………」

 「じゃあ、早めに来てくださいね」

 「……え、えぇ……」

 その後、遊戯室に現れたお姉様はなぜか服を着替えていた。

 私より汗かいてないはずなんだけどな。


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