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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章

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11 夕食の後はトランプ

 夕食の後、カードを出しっぱなしだなと思い出し、仕舞いに戻るとお兄様がいた。

 「あれ、お兄様? どうかなさいましたか?」

 「ん? あぁ、クリスかい。いやちょっとやってみたいことがあってね」

 そう言って見せてくれたのは立派なトランプタワー。いや、ウノを使ってるからウノタワーかな。

 それはそれは見事な十段のタワーが聳え立っていた。

 すごい。お兄様は器用なのね。いや、器用だけじゃなくて集中力も凄いんだわ。

 お母様との稽古をずっと続けられるんだもの。集中力も根気も凄いわよね。

 ただ、剣術はあんまり強くないんだよね。

 「お兄様は器用なんですね。これ作ろうと思っても普通出来ないですよ?」

 「そうなんだ。いや、なんとなくやってみたら面白いかなと思ってね」

 思いつきで出来てしまうのは凄い。

 まぁ、紙もそこまでツルツルしてないから安定してるのかな? それでもこんなに安定して建てられないし、素直に尊敬する。

 ふとお兄様の手元を見ると、まだ何枚か残っている。

 「あれ、お兄様まだ何枚か残ってますね」

 「うん。ただ、テーブルのスペースに余裕がなくてここいらが限界かなって思ってね。もう少し端に寄せればもう一段くらいいけたかもね」

 そう言ってはにかむお兄様。ここ最近では一番いい笑顔かもしれない。

 「ねぇクリス…」

 「は、はい。どうしました?」

 「例のおもちゃなんだけど、僕も作るのに参加してもいいかな?」

 「えっ! それは願ったり叶ったりなんですがいいんですか?」

 「うん、どうやら僕はこういったものを作ってるのが性に合ってるみたいだ。いつまでも出来るとは限らないからね。だったら少しでも多く作ってみたいんだ」

 あぁ、お兄様は長男だからね。この家を継ぐのにいろいろと勉強しないといけないものね。今はまだ少し時間があるからってことなんだろうね。

 勿論、そこはお兄様の意思を尊重しますよ。

 「えぇ、是非お願いします。お兄様のお力をお貸しください」

 「うん。明日からよろしくね」

 凄くいい雰囲気になっていたところに。

 「どーーーーーーーーーん!!!」

 いきなり現れたお姉様がチョップでタワーを叩き潰した。

 私とお兄様が絶句し目を見開いてお姉様を見る。

 いきなりのことで頭が追いつかない。

 えぇ? 何で? 何でいきなり現れて壊したの?

 それに答えるように、さも当然といった風に腰に手を当てる

 「こんなに積んだらゲーム出来ないでしょう?」

 「ほら、続きをやりましょう」と手をひらひらさせていると、お兄様がお姉様の前に立ち塞がり、徐に無言で両頬を引っ張る。

 お兄様のお怒りは尤もです。

 「ひょ、ひょっほ、ふぉひーひふぁふぁ、ふぁふぁふぃへ!(ちょ、ちょっとおお兄様離して!)」

 普段温厚なお兄様がこんなに怒ってるなんて、よっぽど悔しかったのね。

 

 体感で三分くらい経っただろうか。

 お兄様は依然お姉様の頬を引っ張っている。

 さっきよりも手の位置が外側になってる気がする。

 カ○ーパンマンみたいな顔のフォルムになってしまうんじゃないかなと想像して噴き出してしまう。

 「ふぉ、ふふぃふ、ふぁふぁっふぇはひへ、ふぉふぃふぃふぁふぁふぉふぉへへ、ふぇえ(ちょ、クリス、笑ってないでお兄様を止めて、ねぇ)」

 これに関してはお姉様が全面的に悪いし、何かお兄様を止めるのも怖いんだよね。

 「ルイス、そこまでにしておきなさいな」

 そう言ってそっと後ろから抱きしめるお母様。

 顔を赤らめながらも大人しくなるお兄様。

 「サマンサも今回はやりすぎよ」

 そう言ってお姉様の頭をポンポンと撫でるお母様。

 「わ、私が悪かったわ。ごめんなさいお兄様」

 「ん…」

 凄いなお母様は。あっという間にこの場を収めてしまった。

 「レイチェルは凄いな。私だったらそのまま見て見ぬフリしてたよ。はっはは…」

 「あなた……」

 心底失望した目でお父様を見つめるお母様。気持ちは分かります。

 というか、一体いつ入ってきたんだろう。いや、そもそもいつから見ていたんだろう。全然気づかなかった。



 家族全員が食事以外で揃ってるなんて珍しい。

 そこにお茶の準備をしているアンジェさんもいる。

 え? 今から何かやるのだろうか? と、首を軽く傾げる。

 お父様がテーブルの上のカードを見て、私に問いかける。

 「これをクリスが作ったのかい?」

 「あ、はい。一応、メアリーにも手伝ってもらいましたが」

 「そうか。よく出来てるね。私たちもやってもいいかな?」

 しきりに感心して頷きながら眺めている。

 そして、やっぱり気になったのかやってみたいらしい。

 ただ、先ほどお姉様のダイレクトアタックで何枚か折れてしまったので、ウノはできないかもしれないので、代わりにトランプを差し出す。

 「お父様、今夜はこっちにしませんか?」

 「あぁそうだね。こっちも面白そうだ」

 折れたカードを見て、申し訳なさそうにしている。

 別にお父様が気に病む必要は無いと思うんだけど。

 お姉様は気にせず、今すぐやりたいとウキウキしていた。



 折角家族が全員揃っているので、ここは大富豪でもやろうと思う。

 もっと大人数でもいいかなと思ったけど、アンジェさんは控えめな性格なのか辞退。他のメイドさん達も珍しく何かやることがあるようだ。

 因みにメアリーは謹慎だそうです。

 プレイする前にルールを説明するが、ご当地ルールはどこまで入れたものか……。

 8切り、Jバック、数字縛り、マーク縛り、階段ありなど。

 前世では、これの他に革命の時階段4枚でも出来たし、数字とかマークの枚数縛りとかあったなぁと、他にも他のにも色々あったけど、特殊なのはやめて前述の5つのごルール追加でやることにする。

 あと、お姉様対策で都落ちはいれよう。

 カードを配り、ダイヤの3をもってる人からスタート。

 


 最初からお姉様がずっと勝ち続けていたが、お兄様がスペ3返しでお姉様の勢いを止めて勝利。

 自動的にお姉様が都落ちで大貧民になったんだけど。

 「ねぇクリス、もしかして態とこのルールを入れたのかしら?」

 「そうですよ。よくわかりましたね。本当はこれ嫌いなんですけど、お姉様なら勝ち続けちゃうんじゃ無いかなと思って」

 「クリス、いい度胸してるわね。…はぁ、わかったわ。私がカードを配るから貸して」

 お姉様がシャッフルしてみんなにトランプを配る。

 その手札を見て眉間に皺を寄せてしまった。

 「お姉様、勝ちにこだわりすぎでは無いですか?」

 「そんなこと無いわよ。偶然よ偶然」

 偶然でこんな弱いカードばっかりにならないでしょうに。

 「ほらお兄様2枚渡すから2枚頂戴な」

 お兄様とお姉様で2枚交換し、私とお父様で1枚交換する。

 お父様からもらった1枚で4が四枚になったわ。

 ふふふ。見てなさいお姉様。私の勝ちよ。



 「うわあああああああ。クリス! よくもやってくれたわね!」

 結局、途中で私が革命をして再びお姉様を大貧民にしてやったわ。因みに私は二位でした。お兄様も強いのね。

 お父様とお母様はそんな様子をニコニコしながら見ていた。

 「家族団欒とはいいものだな…」

 しみじみとお父様が呟く。

 え? 今までもしてきたでしょうに。私はその辺知らないけれど。

 「たまにはこうやって家族で集まって遊ぶのもいいわね」

 お母様が私にウインクしながら微笑む。

 その仕草にドキッとしてしまう。

 しかし、それが気に入らなかったのか、ただ単に空気が読めなかったのかは分からないが、この雰囲気を案の定お姉様がぶち壊す。

 「なに、落ち着いちゃってんのよ。次! 次やるわよ!」

 「サマンサ……」

 お父様が引きつった笑みを浮かべる。

 「でも、もういい時間なのよね」

 「えぇっ! そんなに時間は……。あらもう十一時過ぎてるじゃない」

 あら、そんなに経っていたのか。楽しい時間は過ぎるのも早いですね。

 「流石に今日は遅いから明日にしましょう、ね」

 「あと一回、あと一回私が勝ってからお開きにしましょうよ」

 負けたまんまでは悔しくて寝れないのかしら。うーん。時間も時間だし。

 ただ、もう一回やるよりは何か余興でもしようかしら。

 「では、お姉様こういうのはどうでしょう」

 「あら、何か別のゲームでもあるのかしら?」

 「まぁ、ゲームって言えばそうかもしれないです」

 トランプをシャッフルして、横一面に均一にサッと並べ一枚お姉様に引かせる。

 「では、お姉様この中から好きなものを一枚引いてください。あ、中は見せなくていいですよ」

 「じゃあ、これにするわ!」

 その中から一枚引いて手に持ってもらう。

 「では、お姉様。私には見せずに周りに見てもらってください」

 ドヤ顔で見せるお姉様。そこはドヤらなくていいですよ?

 お父様もお兄様も興味津々だ。

 残ったトランプを集め、一番上に乗せてもらう。

 「では、お姉様この上にそのカードを乗せてください。……はい。じゃあ、シャッフルしていきますね」

 何回かシャッフルして、手の上にシャッフルしたトランプを乗せて見せる。

 指をパチンと鳴ら……、鳴ら…、鳴らない。

 鳴らないので口でパチンと言う。

 「パチンッ!」

 「鳴らなくて自分で言っちゃうの可愛いわクリス」

 「ちょっと恥ずかしくて赤くなってるの狂おしいほど愛しいわ」

 ちょっとお姉様もお母様も、そこは分かってても黙っててもらえます?

 「ま、まぁいいでしょう…」

 「「いいんだ……」」

 お父様とお兄様がハモる。

 お姉様がキラキラしい瞳で見てくる。期待値上げすぎちゃったかしら?

 「では、お姉様が選んだのはこのカードですか?」

 一番上のカードを捲る。

 ジョーカーのカードだった。お姉様に似せて書いたジョーカー。

 「⁉️」

 おお!皆んなビックリしてくれたぞ。余興としては上々でしょう。

 端に控えてたアンジェさんも少しビックリしてた。

 「そうよ、そのカードよ。え、どうやったのクリス?」

 「いや、それは企業秘密で……」

 「何が企業よ。まだ会社持ってないじゃないの」

 突っ込むのそこなの?

 「へぇ、凄いな」

 「ねぇ、クリス。僕にも出来るかな?」

 お父様もお兄様も感心している。いいですね。

 お母様は黙ってニコニコ見てるけど、まさかね。手の内をもう見破ってたりしないよね?黙ってるのがちょっと怖いです。

 「ねぇ、クリス……。このカードなんだけど、ずっと気になってたのよね」

 「な、何がですか?」

 「これ私に似てない?」

 「き、気のせいですよ。気のせい。ははは」

 「ちょっと話し合いましょうか? 朝まで。私の部屋で」

 うーん。拒否するぅ。

 お姉様の場合どっちの理由か分かんないんだよね。

 そこに助け舟を出してくれたのは、まさかのお父様だった。

 「まぁまぁ、サマンサ。今日はもう遅いから明日にしなさい」

 えぇーっていう顔で一瞬不満を表したけど、すぐに「わかったわ」と了承した。

 お父様もお母様もいるから、流石に大人しくなったのかな? あれ、それにしては我が強い気がする。

 「それにしても、こんなことも出来るんだね」

 「えぇ。色々遊び方がありますからね」

 「へぇ…。クリス、さっきみたいのもう一つ見せてくれない?」

 「あなた、サマンサに言っといて自分もねだるなんて…」

 「レイチェルだって、ちょっと物足りないんじゃない?」

 「……えぇまぁ……」

 あら。マジですか。じゃあどうしようかな?

 トランプをシャッフルしながら考える。

 そうね、あれにしましょう。上手くでくるか分からないけど、まぁいけるでしょう。

 シャッフルしたトランプを再び、横一面に並べ、お父様に好きなカードを引いてもらう。

 「では、お父様好きなカードを引いてください」

 「いやあ、緊張するねぇ…」

 そう言って一枚引いて戻してもらう。

 シャッフルして、指を鳴ら……、鳴らないのは分かってるので。

 「パチンッ……」

 「もう指を鳴らすそぶりも無いのね…」

 「ちょっとサマンサ、そこは黙ってようね…。ってほら、顔真っ赤になっちゃったじゃないか」

 「ごめんねクリス。あとで、練習しましょう、ね。ね」

 き、気をとりなおして……。

 「じゃ、じゃあこのカードですか?」

 一番上のカードをめくって見せる。

 「ん?いや、違うよ」

 「ほら、サマンサが変なこと言うから失敗しちゃったじゃないか」

 「わ、悪かったわよ…」

 お兄様が、それ見たことかとばかりにお姉様をなじる。

 いや、いいんだけどね。別に失敗じゃないし。

 「いや、大丈夫です…」

 ひっくり返して、シャーッと並べる。

 「では、この中にありますか?」

 お父様がカードをかき分けながら探す。

 「あれ、無いね…」

 「では、お父様、胸のポケットの中見てもらってもいいでしょうか?」

 胸のポケットを探るお父様。

 「⁉️」

 お父様が選んだと思われるカードが出てきた。

 今回は全員驚いてくれたようで何よりです。

 「ちょ、え? ちょ…。えー………」

 言葉にならない様子のお父様と、目を見開いて固まるお母様とお兄様。

 お姉様も口を開けてポカーンとしている。

 いやあ、趣味でやっていて良かったよ。手がちっちゃいから出来るか半々だったけど、手が覚えていたのか上手くできて何よりです。

 本当は、サインか何か書いてもらうんだけど、量産してないし、それ一枚だけまた作るのも面倒だったので、そのままやったけど一回目だから別にいいよね。

 片付けをしていると、いち早く我に返ったお父様が声を掛けてきた。

 「クリス、明日私の書斎に来てくれないか?」


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