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次元境界管理人 〜いつか夢の果てで会いましょう〜  作者: 長月京子
第二章:未知との遭遇

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7:世界は輝いている

「わたしがですか!? そんな身のほど知らずな!」


「身の程って、私はとてもお似合いだと思うわよ? それに次郎君もあやめちゃんのこと、すごくお気に入りだと思うし」


「は?」


「だってーー」


「ストップ、瞳子さん! 俺のいないところで勝手に話を進めるのやめてくれる?」


「じ、次郎君!? 」


 素っ頓狂な声がでた。いったいいつからそこにいたのでしょうか。

 一気に顔に熱がこもった。恥ずかしい、恥ずかしすぎる。


「瞳子さんって、ほんっとに油断も隙も無いよね」


「あら? それは心外ね」


 「もうっ!」と悪態をつきながら、次郎君がわたしを見た。


「あやめ」


「は、はい! あの、勝手にそっくりさんの夢など見てしまい、本当に申し訳ありません」


 ぐわぁ、穴があったら入りたい。消えたい。


「それはむしろありがたい事だけど。――今日で教授の助手も終わるから、言いたいことを言わせてもらうね」


「はい」


 何か粗相をやらかいているのかもしれない。全力で謝罪の姿勢を整える。


「これからもあやめと一緒に過ごしたい。だから、俺と付き合ってください」


「ーーえ?」


 聞き間違いだろうか。それとも、これも夢かな。わたしはまだ眠っていて、夢を見ているのかもしれない。


「あやめ、聞こえてる?」


「え?」


「俺の彼女になってください」


「え?」


 夢だ、これは全て夢だ。わたしが次郎君に告白されるなんて、ありえない。


「あらま、さっそく臆面もなく口説いちゃうのね」



「瞳子さんのせいだろ!?」


「そういう直球なところ一郎とおんなじね。まぁ一郎の場合は心がこもっていないけど、次郎君のことは応援しているわよ」


「知ってるよ、もう!ーーって、ちょっと、あやめ!? 顔が爆発しそうだけど?」


 もしかすると、わたしが爆発して夢から覚めるパターンかもしれない。


「あやめちゃん、可愛い。茹蛸みたいになっちゃって」


 夢じゃないのかな。目覚めることもなく、目の前で続く二人の会話。次郎君と瞳子さんがわたしに注目している。あ、もしかしてドッキリかな。思わず辺りを見回してカメラを探す。


「あやめ、ドッキリじゃないから! カメラとかないから」


 次郎君の顔も少し赤い。


「もしかして現実逃避してる? 俺は真面目に告白しているんだけど」


「……次郎君が、わたしに」


「そう!」


「わたしに!?」


 咄嗟にがばりとその場で頭を下げた。


「お返事が遅れて申し訳ありません! 不束者ですが、どうかよろしくお願いします!」


 夢じゃないなら、呆けている場合ではない。わたしのような者が次郎君に告白されて、返答を保留にするなんてありえない。お待たせするなんてありえない。


「あ、良かった」


 ほっとした次郎君の声。わたしはおそるおそる顔をあげた。初めて見る、はにかんだ顔。少し照れ臭そうに髪をかきあげる次郎君に魂がもっていかれる。


 ああ、かっこいい。こんな幸運なことがあっていいのだろうか。


「次郎君もお昼ご飯にする?」


 瞳子さんが次郎君に尋ねながら、わたしに片目をつぶってみせる。良かったわねの意思表示。


「うん。ほっとしたら、すごくお腹空いた」


 幸せを噛み締める私の向かいに次郎君が座る。はじめは戸惑いしかなかった時任教授の助手生活だったけど、いまは一緒にご飯を食べることも馴染んでしまった。


 そして最終日。次郎君がわたしの彼氏だなんて。ああ、夢みたい。世界は輝いている。

 わたしはすっかり冷めてしまったお味噌汁をすすった。

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