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94 反逆者への道

 食堂のテーブルには僕を入れて四人だ。

 僕、マリエル、ファーにミント。

 事が事だけに全員は真面目な顔だ。


 マキシム第三部隊隊長、正直言っていい思い出がない。

 いや、それ所が前の世界で第七部隊を殺した首謀者だ、最悪の場合はこの手で……とも思っていた。


「ハグレ探索と町の見回りを兼ねて回っていたんですけど、警備兵に呼び止められまして。

 城からの緊急連絡所という事で、副隊長ですので先に読ませてもらいました」


 ファーは筒と手紙をだす。

 急いで書いたのだろう、殴り書きに近かった。


「ええっと、僕がここにいても?」


 僕の質問に、ファーやミント、マリエルがなんで? という顔をしている。

 何かまずい事をいっただろうか……?。


「ええっと、変な事聞いたかな?」

「ヴェルにいは、たいちょーのかれしなのだ。

 ここに居るべきなのだ」

「えっ」


 思わず驚きの声を出すと、マリエルがさらに、えっ! と返してくる。


「ちょ、そうだと思っていたんだけど、ヴェルは違ったのっ!?」


 驚くマリエルにファーも頷く。


「あの、私もそういう認識でしたけど、おそらく休暇中の隊員もそうかと……」

「うわーうわー、何それ、私は彼氏でもない人とキスしようとしたわけっ!?」

「いや、それはなんていうか、流れというか」

「ヴェルは、好きでもない人と流れだったらキスするんですかーっ!?」

「別に好きじゃないとは言ってないっ!!」


 僕が叫ぶと、マリエルがにやっと笑った。

 頬に両手を当てて、改めて言われると恥ずかしいわねーと悶えている。

 

 ファーが咳払いをして、

「痴話喧嘩が終わったようなので進ませて貰います」

 と、言った。


 いや、痴話喧嘩って……。


「さて、ヴェルの愛も確認できたし進めましょうか。

 あ、ヴェル、私も好きよ。

 で、ファーランス副隊長、現在状況を」

「はっ!」


 うわー、真面目な顔になったら僕はもう突っ込めない。

 マリエルも、ファーを敬称でなく正式名で言うし。


「殺されたのは城の夜会です。

 マキシム第三部隊隊長の昇進パーティーですね」

「それって女王も出席してるわよね……」

「ええ……」


 メリーアンヌ女王、ファーのお祖母さんでもある、前の世界では僕に黒篭手を託してくれた人の一人だ。


「女王はマキシム第さん……」

「マキシムでいいわよ、あんな奴」

「では、女王はマキシムを庇い意識不明です、他にも多数の死者が出ています。

 王位継承権のあるのは、マキシムの父マイボルになってます」


 嫌な顔がまた浮かび上がる。


「ファー……その、王位継承だったらファーもあるんじゃ」

「情報通ですね、私は聖騎士になる時に返上しています。

 そのマイボル親子は返上はしてないのです」


 女王派も城に残っていたが、かなりの手傷を負ったらしい。

 マイボルは息子を殺されたのに、その権限を使い女王とマキシムを守れなかった罪で第一部隊、第二部隊の半数を首にしたと書いていた。


 コンコン。


 コンコン。


 宿の扉がノックされた。

 この時間は店主は買出しで居ない。

 ファーが扉前にいくと、声を出す。


「店主なら市場へ買出しです」

「ええっと、手紙屋です。

 正騎士第七部隊の人が泊まっていると聞いて、第一級命令書らしくて」


 若い男性の声だ。

 ファーは扉を開けると、少年が立っている。

 隊長宛に特別手紙が来ていますと、困り顔だった。


「私が隊長のマリエル。

 はい、これが証明書」

「は、はいっ! で、では失礼します」


 少年は緊張した様子で扉を閉めて帰っていった。

 マリエルは貰った筒をポンポンと叩きながらテーブルへと戻ってくる。

 腰から短剣を取り出すとその筒の先端を切る。

 中の紙を広げると声を出して読み上げた。


「ええっと、正騎士第七部隊は手紙を発行した時点で解隊する事を命じる。

 異議の申し立ては不要であり、命令に従わない場合はハグレとみなし処罰する。

 なお、証である篭手、武器、鎧に関してはタチアナの警備兵へ回収を頼んであり、速やかに行う事

 ともに王国の事を思うならば命令に従うべし……だって」


 マリエルが命令書を読み上げると、宿の扉が開く。


「おねええさまあああああっ! 警備兵達が、武器を武器を。

 それよりも篭手をっ!」

「あ、ヴェル! 大変門兵さんがっ!」


 ナナやフローレンスお嬢様が宿に飛び込んでくる。

 直ぐに髭面の中年兵士と若い兵士が入ってきた。


「警備兵隊長フラと申す。

 その……、命令書は見たと思うが、武器を回収するようにと、こっちも命令でな……」


 申し訳なさそうに言う。


「わかったわ。

 ナナ、武具を渡してあげて」

「で、でもっ」

「フラさん、命令書を見せて貰えるからしら」

「お、おう」


 マリエルは中年の警備隊隊長から命令書をみて、

「ええっと、篭手、剣、活動費などを速やかに回収し運べ。か……」

 そして内容を確認して返した。


「剣や鎧は返すけど、マントは聖騎士になった時にでる初任給から引かれるし、個人の物なんじゃないの? 篭手に関しては女王、もしくは管轄の命令じゃないと外したらだめなのよ。

 一応これがあるから私達は強いわけで、それに、その命令書、女王代理よね。

 女王が亡くなったなら素直に従うわ。

 でも、生きているのに謀反を起こすような奴が居たら困るじゃない?」


 相手を試すような言い方だ。

 フラという男性の答えによっては、戦いになりかけない。

 その間にも、若い警備兵や、他の隊員達が戻ってきている。


「わかった。

 俺達の命令書には、剣などを没収し、直ぐに届けるようにしか書いてない。

 それに、あんたらは俺達に無理な事はさせないし、俺達に出来る事は頼りにしてくれる」

「わるいわね」


 マリエルが謝ると中年男性は首を振る。

 直ぐに、近くの若い男を呼ぶ。


「おい」

「はっ!」

「武器を丁重に運べ、集めたものは、直ぐに王都へ運べ。

 ルートは北の山岳地帯をで運ぶ」

「フラさん、山岳地帯って足場わるいっすよ、それだったら普通どおり西からいけば……」

「そうだな、足場が悪い、間違って崖に武器を落とすかもしれん。

 でも命令は速やかに持って来いと書いてるからなっ! 落ちた武器までの回収は書いてない」


 意図に気づいた若い男が口笛を吹く。

 芝居かかった口調で、中年男性の隊長へと意見を言い出した。


「いやー、あの辺は以前山賊退治して貰った場所でこわいんすよねー。

 山賊が落ちた武器拾ったら大変だなー……。

 じゃ、他の隊員のみなさんもちゃちゃっと宜しくお願いします」


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