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92 ヴェルの休日

 あまり寝付けなかった。

 翌朝起きても傷痕はそのままなので、取り合えずは黒篭手で隠す事にした。

 数日ぶりの黒篭手、依然としてオオヒナと連絡はとれないけど、大体の事はマリエルから聞いている。


 朝食を食べに一階の食堂へ降りていく。

 何人かの隊員が僕をちらちらみてきた、女性ばかりの部隊にいるんだ、仕方が無い。

 クレイやチナの姿も見えた。


「おっはー」


 声のするほうをみるとマリエルが、隊員達にかこまれて居た。

 僕へと手を振る。

 周りの隊員達は、なぜか自主的にマリエルから離れていく。

 ここが、彼方の指定席ですよ! といわれている様な空気だ。


 変な気の使われ方は、つらい。

 でも、ここで僕がマリエルの所に行かないのも周りからみたら変なんだろうな……。


「なんで、立ってるのよ? 前開いてるわよ」

「そうだね」


 四人しか座れない席で、マリエルと向かい合わせに座る。

 他の隊員は座ってこない。

 マリエルは朝食を食べながら紙に何かを書いていた。


「えーっと、僕が居たら邪魔だったんじゃ?」

「別にー。

 ああこれ、本当は昨日の三日前にする奴だったんだけど。

 今日ださないと間に合わないから……」


 取り分けてあるパンを一口食べ、飲み物を飲みながら書類を書いていた。

 僕の視線に気づいたのか、パンの皿をスーっと僕のほうへ押してくる。


「ありがと」

「どういたしまして、休日は今日までだからヴェるも適当に過ごして。

 後、隊長と副隊長二名の決定で、ヴェルは拘束をしない事を決定してるし、他の子にも報告したから」

「ああ、それで僕のほうをちらちらと……」


 思わず納得した事を口に出していた。

 僕は渡されたパンを一口食べる、中には辛い食べ物が入っており、油で揚げてあった。

 サイズも小さく、女性でも数個は簡単に入るだろう。


 マリエルの手が止まり、僕を見て下を向く。

 笑いを堪えているらしい。

 変な事を言っただろうか?


「マリエル?」

「ぷはっはっは、ごめんごめん。

 チラチラ見てるのは、そうじゃないのよ。

 昨日温泉いったじゃない? そのときの様子をミントがしゃべっちゃってさー」

「喋ったって……」


 事実を言えば全裸にされて混浴した事だ。


「ミントだけならまだ良かったんだけど、チナとクレイも便乗しててね。

 私やファーが食堂に来た時にはすでに、ヴェルは象以上の物を持ってるって話に。

 象ってわかる? 私は見たこと無いんだけど、鼻が長い動物で、この宿の二階以上に大きい動物、象は無いわよね、象は……」


 知識として知ってはいるけど、もちろん見た事もない。

 それに、僕の物ってどう聞いても、下ネタだ。


「象って……」


 さすがに否定する。

 っていうか、朝からするような話題じゃない。

 全く動じないマリエルは、そうねえと口を開き、

「せいぜい馬並みよ」

 と爆弾発言をした。


 僕を見ていた聖騎士達がちらちらと小声で話す。


 馬って……、馬よね? 嘘っ!。

 私のは嘘でいい、でもなマリエル隊長が言うんだしー。

 チナの話はやっぱ大げさだったじゃないー。

 でも、馬はあったぞ?

 私の彼氏、そんなに無いんだけど……。


 などが聞こえてくる。

 別に女性に恥じらいを求めているわけではない、わけではないけど……。

 常識人を探して周りを見渡す。


 ファーが居ない……。


 思わず助けてと叫びたくなる。

 その間にもマリエルは笑いを堪えるのに必死だし、堪え切れてない。


「困った顔のヴェルも中々ね。

 あ、その篭手つけたんだ」

「え? ああ、うん」

「例の人はまだ寝てると思うけど、起きたらよろしくいって置いて。

 さて、これ手紙屋に届けて欲しいんだけど」


 突然の事で僕は、一瞬ポカンとした。

 この場から自然に離れる機会をくれたのだ。


「あ、ありがとう」


 手紙を受け取ると扉へと逃げる。


「どういたしましてーっと、私はもう二、三通手紙書く所があるから」


 僕の背後でマリエルの声が聞こえた。

 タチアナの町をついでに散策する、年に数回来た事はあるけど観光は下ことが無い。

 僕の腰には少しであるけどお金が入っている。

 これは村長宅で働いていた分と、餞別だ。


 手紙屋へいき、一緒に渡された紙とお金を預ける。

 証明書をもらい外へと出るとファーとミントにあった。


「おはようございます」

「ヴェルにいなのだー」

「お使いですか、マリエルとミントがすみません」

「ファーちゃんなんで謝ってるのだ?」

「だれのせいでっ!」


 ファーはミントの頭を軽く叩く、ミントはなんでなんで? と本気で不思議そうな顔をしている。


「今朝騒がしかった事です、直ぐにミントを連れ出しましたけど、恐らく……」

「ああ、あれね……うん」

「本当にすみません……、フローレンスさんでしたら、コーネリアとナナと一緒のはずです。

 職業柄、聖騎士としると離れていく人が多いんですけど、フローレンスさんとあの二人は気が合うのでしょう」


 確かに仲はいい。

 前の世界でも、聖騎士だからと態度を変えている人間を見てきた。


「フローレンスお嬢様が迷惑をかけてなければいいんですけど……」

「ご冗談を、それよりヴェルさんはどちらへ?」

「する事もないのでぶらぶらですね」


 正直に答えた。

 本当に無いのだ、オオヒナは寝ている、マリエルもフローレンスお嬢様も助かっている。 特に買う物もない、食べたい物もない。


「ヴェルにい、訓練しよ訓練っ!」

「駄目です! ミントは私と見回りです!」


 見回りか……、手伝ってもいいかもしれない。


「僕も手伝いましょうか?」

「いいえ、ハグレのアジトらしき所が見つかったというので下調べだけですので。

 それに、何でも感でもヴェルさんに手伝ってもらったら私達の腕が鈍ります」

「褒めれらて嬉しいけど、僕はそこまで強くないよ」

「ふふ、私は冗談はいいませんよ」


 ファーが、微笑むと釣られて僕も微笑んだ。

 ヴェルにいばいばいーと、ミントも手を振って別れた。


 仕方が無く僕はベンチに座っている。

 空が青い……。


「隣よろしいでしょうかえ?」


 僕は顔を戻した。

 胸元を隠した服を着た女性。

 紙のような特殊な剣を使うフランが僕の隣へ座っていた。 

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