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74 大人の事情

 目が覚めたら天井が見えた、外からは大勢の人間の声が聞こえている。


「おや、目が覚めたかい?」


 船乗りの服に、下は太ももがみえるスカートをはいている。

 喋り方からすると、ヒメヒナさんだろう。


「まぁなんとか」

「この服は可愛いと思わないかい? セーラー服というんだ

 遠い異国では、女性の八割はこれを着て歩く」

「可愛い可愛くない以前に、下着が見えそうで眼のやり場に困ります」

「そうだろう、そうだろう。

 君のために色仕掛けをしているんだ。

 ババア無理すんなと、言われそうだけどその辺は眼をつむってくれ」


 駄目だ話が通じてない。


「所でここはどこです?」

「特別医務室さ、一兵士は集団部屋を使うけど、君は兵士でもないからね。

 個室を用意してもらった。

 ああ、ここだったら私の悩ましい声も外に漏れる事はないだろう」

「いや、外の音が入って来るんだし大きな声を出せばもれますよね?」

「君はじらしプレイが好きなのか、極力声は出さないように我慢しよう」


 やっぱり通じない……。

 他に誰か、そうマリエル達の事を聞こう。


「ヴェルっ!」


 扉が開くと、車椅子のオーフェンと王子であるミニッツの二人が部屋に入ってきた。


「これはこれは、余りあいたくない人達と出会ってしまった」


 とてもそうは見えないヒメヒナの声と顔である。

 一方、オーフェンとミニッツ王子は、王子はともかくオーフェンは露骨に顔に出ていた。


「同じく会いたくなかったな……」

「オーフェン君、ミニッツ王子を見習いたまえ、仮に会いたくない相手でも、いやな顔はださないぞ?」

「自分は別にイヤとおもってませんからね」

「はっはっは、そうさらっというのも王族としての器なんだろう」

「所でなんで、そのヒメヒナ様がいるんですかっ?」


 不機嫌なオーフェンがヒメヒナへ言う。


「簡単に言えば治療って所だろう。

 こう見えても医術にもすこーしだけ詳しくてね、張れば傷が塞ぐ湿布に、熱を下げる薬など、もちろん死体を生き返らせることは出来ないが……。

 そうだ、しってるかい? 他の国では神に祈りを捧げる事によって奇跡の力を使う国もあるんだ、いやはや世界は面白いね」

「医術が得意なのはしってる……、ヴェルはそんなに危ないのか?」


 オーフェンが少し心配そうな顔で言う。


「ああ、残念な事に手遅れだ」

「えっ!」


 僕は思わず声を出す、ミニッツ王子が慌ててヒメヒナに容態を聞いた。


「それは、本当なのか?。

 ヴェルさんは王国の人間ではなく、王国が推薦する道中知り合った旅の者だ。

 仮に命を落としてもそんなに問題にはならないが……。

 いやすまない、決してヴェルさんの事を軽く思っているわけじゃ」

「大丈夫です」


 僕はそう返事をした。

 これは仕方が無い。

 マリエル達聖騎士が交流試合で命を落とすのと、旅の者が命を落とすのじゃ問題が違う。


「はっはっは、そうならないように私がいる。

 それに、ミニッツ君であれば、例えどちからの人間が命を落としても何とかできるのだろ?」


 挑発をうえミニッツ王子が少し眉を潜める。


「交流試合ですから、そうなる事も想定はされています。

 既に確認の合意書は双方の国に」


 オーフェンは場の話題を変えるように僕に話しかけてきた。

 いや、険悪なムードを実際変えた。


「にしても、物すごい試合ときいたぜ。

 交流試合っていったら手を抜く奴もいるけど、ヴェルの試合を見て本気になった奴が大勢いてな。

 試合に申し込まなかった奴が、凄い悔やんでいたぜ」

「手を抜くのは失礼になるけど、命をかけてまでやるのは訓練と違うのでは……?」

「はっはっは、そのために今回は私がいる。

 心臓さえ動いていればなんとかしよう」


 怖い話だ。

 でも、ヒメヒナさんが治療をしてくれたのか、僕自身も痛い所はない。

 若干の疲労感はあるけど、試合の疲れから来るものだろうし、ためしに腕を動かしてみる。

 黒篭手がきらりと光るも特に細工されたような後も見受けられない。


「おかげさまで、痛い所は無いですね」

「実は、その事で大事な話があるんだ。

 どうやら君は私の医術をもってしても直せない所があった……。

 直すには幻の薬を取り寄せなければ行かなくてね。

 皇帝に相談しようかとおもっていたんだ、ちょうどいい王子から伝えてくれないか?」

「なっ」


 自分の体を見渡す。

 ベッドの上で白い布が掛けられており、手足も動く。

 痛い所は特に無い。

 オーフェン達をみると、二人とも僕を心配そうに見てくる。


「特に痛い所はないんですけど……」

「口で説明するより、見てもらったほうがはやそうだ。

 オーフェン君にミニッツ君、私をみてくれ」


 二人はヒメヒナを見る。

 セーラー服というスカートを突然まくしあげた。


「ぶっ!」

「なっ!」


 当然二人とも驚く、いや僕も驚いた。

 オーフェンが車椅子を押しているミニッツへと叫ぶ。


「お、おいっ! ミニッツ見たかっ!?」

「自分は何も見てないっ!」

「馬鹿っ、は、は、はいてなかったぞっ!」

「だから自分に振るなっ! 自分は何も見ていない」


 はぁ……。


「ええっと、ヒメヒナさん。

 今の行動と僕の体が手遅れという行動が何も繋がらないんですけど」

「そ、そうだ。

 繋がらないからもう一回だっみせっ、痛って。

 ミニッツ叩くな、お前だって見たいだろっ!」

「巻き込まないでくれ、みたいならそういう店に行けばいい」

「馬鹿、普段絶対みれないのを見るのが……」


 二人は騒がしい。

 ミニッツ王子の苦労がうかがえる。


「あっちは無視して、理由を」

「なに簡単だよ」


 振り向くと、突然僕にもスカートの中身を見せてくる。

 オーフェン達が言っていたように、ヒメヒナさん下着は付けていない。


「とりあえず、意味がわかりませんので」


 僕はそっとスカートを手で下げる。

 勝ち誇ったようなヒメヒナさんの顔が僕を見ていた。


「さて見物人の二人さん、みたかい?。

 女性の秘密を見ても、この動じなさ。

 見た所、下半身もピクともしていない、もう手遅れと思わないかい」


 手遅れってソッチの話!?

 僕はヒメヒナさんに文句を言う。


「いやいやいや、どこの世界に突然見せられて興奮する男性が……」


 ちらりとオーフェンをみると、興奮している。

 

「いえ、いるかも知れませんが、個人差があります。

 僕としては、『その他の場所で!』 何も無ければ帰らせてもらいます」


 ベッドから立ち上がろうとして、立ちくらみで思わず足がもつれる。

 ヒメヒナさんが体全体を使って支えてくれた。

 もう一度ベッドへ横になる。


「無理はよしたまえ、丸二日寝ていたんだ、急に動くと危ない」

「はい? 今なんて」

「もちろん、交流戦はベストエイトで止めてある。

 もとよりリングの修復で二日ほどかかるから問題ないといえば問題ない」


 個室の扉が突然開けられた。


「ヴェルー! お見舞いに……。

 うわ、人多いわね、ええっとヒバリ様じゃなくてヒメヒメさんでしたよね?」


 マリエルが狭い個室に入ってくる。


「丁度いい、いま彼が私の大事な所を見ても興奮しないという議論を……」


 ヒメヒナさんが、マリエルにもスカートを捲し上げて見せ付ける。

 騒ぎは暫く終わりそうに無かった。

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