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61 番外 三人娘の秘密の脱走

 カーヴェの町を出て既に三日、私は隊長達と国境付近にいる。


「隊長、本当に行くんでしょうか?」

「うん。いやなら帰ってもいいわよ」

「着いて行きますよ」


 そういうのはアデーレさん。

 次に私のほうへと顔を向ける。


「コーネリアは?」

「私も付いていきますっ!」

「はぁ……、にしても二人に見つかるとは、あんな深夜に特訓とか」

「ご、ごめんなさい」

「謝る事じゃないわよ」


 そう最近いやな夢ばかりみていた。

 敵に殺される夢、聖騎士になった時から覚悟はしているけど、やっぱり怖い。

 アデーレさんに相談したら深夜の特訓を付き合ってくれた。

 そこで、帰る途中。

 宿の三階の窓から飛び降りるマリエル隊長を見つけてしまったのだ。 

 叫び声をだしそうな私の口を押さえたアデーレさん、マリエル隊長に気付かれないように二人で追いかけ、追いついたのが二日前だ。


 隊長は、帝国側に連れて行かれたという少女の様子を見に行くらしい。

 これは、聖騎士とではなくマリエル個人としていくのよ! と言っていたけど……まずいよね。


 篭手を隠すように長袖を着て国境を越えた。

 一応ここに来る前に聖騎士としてばれそうな物は全部、カーヴェの街にいる副隊長へ手紙とともに送っておいた。

 

 これって、下手をしたらハグレ行為になるんじゃ……。


「あら、コーネリア。

 これってハグレになるんじゃって心配してる顔よ」

「っ!」

「最後によった町でも、特に私達を探している連絡もなかったし……。

 あれよ、ファーが何とかしてくれてるって所でしょ」


 あのー……、それってファーランス副隊長が手回ししていなかったら、私達三人がハグレって事では……。

 アデーレさんが私の肩にポンと手を置いてくれた。


「騒ぎになる前に帰ればいい」

「そうそう、さすがアデーレ」

「いいんでしょうか……」


 そして私達は国境を越えた。


 初めての帝国。

 見る物、聞く物がちょっと新鮮だった。

 王国と空気が感じられる、なんでも兵もいるけどこの国では冒険者というのが活躍できるシステムらしい。

 今回はさらわれた少女との接触と確認。


 私達は、その少女が連れ去れた道を追った。

 でも、時間が立ちすぎて中々に追いつくことが出来ない。

 帝国に来てから結構な日数がたった、隊長とこんなに一緒だなんてナナに悪い気がする。


「たっだいまー」

「おかえりなさい、た……。

 マリエルさん」

「定期便の受け取りと返事貰ってきたわ、アデーレは?」

「軽食を買ってくると」


 アデーレさんが戻ってきた。

 お店の外にある椅子に座り報告を聞く。


「ファーのほうで、私たちがこっちで動きやすいように手配してる最中みたい。

 あっちは、例の薬問題で結構大変らしいわね」

「力の無力化……」


 薬、カーヴェの町付近で壊滅した賊が作っていた薬。

 成分は調査中で、その効果は私達の力を抑えこむ力だった。

 食事に混ぜられたりしたら私達は一般の女性と同じぐらいしか力は出せなくなるとか……。


「まっ、何事も順番にね。

 昨日この町を通ったらしいから次で追いつくはず。

 私とアデーレで先に様子見するからコーネリアは次の休憩所で待機」

「力不足ですみません……」

「違うわよっ。

 三人とも何かあったらこまるでしょ、それに今日の報告書を書いてほしいのよ。

 私書類系嫌いなのよね」


 マリエル隊長はこうやって慰めてくれる。

 ナナじゃないけど、思わず飛びつきたくなりそうな時がある。


「わかりましたっ!」


 これも大事な仕事だ。

 二人を休憩所から見送り、私はファーランス副隊長へと送る手紙を書く。

 休憩所の主人に手渡し、一人外で帰りを待つ。

 隊長達が戻ってきたっ。


「たいっ! 

 マリエルさーんっ!」


 思わず隊長と呼ぶところだった。

 あれ……。

 他の人も見える。

 可愛らしい少女に、男性……いや青年?。

 私の体が訳も無く震えた。

 会った事がないのに、とても懐かしく感じる人だ。

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