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60 針のむしろ、胃薬が欲しいと後に語る

 最後に別れた時の鬼気迫る顔ではなく、親しみやすい笑顔で僕を見つめてくる。


「その、腕は大丈夫?」

「え?」

「ほら、ちぎれたじゃない」

「あっ……うん。

 今は動くよ」

「そう、よかった」


 ……。


 …………。


 なんだこの気恥ずかしさは。


「うがーーーーーーーーーっ!!!」


 突然、僕とマリエルの間に奇声をだして割ってはいるフローレンスお嬢様。


「わっ」

「っと、フローレンスお嬢様驚かせないで下さい」

「なんでヴェルを追い出した奴が此処にいるのよっ!。

 それに近い、あんたヴェルとの距離が近いからっ」

「なんでと言われても、君を助けだすためにいるんだけど」


 怒るフローレンスお嬢様の顔に人差し指を突きつけるマリエル。

 僕は思わず疑問の声を出してしまった。


「なんで……」


 僕の声に不満顔になったマリエルは僕の方に向いて説明してくる。


「なんでって、君もかっ。

 フェイシモ村が襲われたって聞いてね、行ったはいいけど……。

 建物には目立った被害は無し。

 ただ、村長の娘が全て丸く押さえる為に付いていったと」


 僕は思わずフローレンスお嬢様を見た。


「そうなのですか?」

「え、う……うん。

 いや、箱が欲しいって交渉に来て、その時に私と結婚したいって人が居てね。

 私も断ったのよ? でも、ヴェルだって居なくなったし、顔を見せるだけでいいからって、不自由もしない旅にするって言われたし……」


 初耳だ。

 てっきりフェイシモ村が襲われ、フローレンスお嬢様も村も何もかも怖されたのかと。


「普通なら、それで終わる事件なんだけどお……」


 茂みから長身の人間が出てきた。

 フードを取った。

 一瞬男性に見えたけど黒髪をした女性が、マリエルの横に立ち並ぶ。

 弓使いのアデーレだ


「隊長、撒いて来ました。

 馬は足が付くといけないので森に放してきました」

「もう一人はアデーレだったのか……ありがとう」


 兵士を撒いてくれた人の名前を言う。

 口数の少ないアデーレの眉が小さく動く。


「すみません。

 初対面ですよね」


 しまったあああっ。

 この失敗は二回目である、初対面だけど初対面じゃない。

 えーっと……。


「そうマリエルが、弓を使う隊員がいるって褒めてたからてっきりそうかと。

 ヴェルと言います」


 僕の言葉にしばし時間が止まった気がした。


「へー、私ってそんな事言ってたんだー」

「ふーん、ヴェルって。

 話だけで見た事もない女性の事を気に留めているんだー」


 マリエルとフローレンスお嬢様の白い眼が視線として突き刺さる。

 

「と、所でマリエル。ファーや他の隊員も一緒に来てるの」

「ん? 近くの町にコーネリアもいるけど……、ファーね……」


 よかった、コーネリアも無事だ。

 そもそも、僕が第七部隊は情報不足で奇襲されたんだ、相手を知っている以上マリエル達にだって対策は出来たはずだ。

 コーネリアもあの夜みたいに突進する事はないだろうし。


 マリエルを見ると、困った顔をしていた。


「も、もしかしてファーが命に関わるような怪我とか」

「いやあ……ピンピンよ」


 何か言いたそうなマリエルの顔、歯切れの悪い言葉で続きを喋る。


「実は黙って置いてきちゃった」

「えええっ」


 思わず声を上げると、頬をぽりぽりとかくマリエル。

 僕はアデーレの顔を見て、マリエルをもう一度視た。


「いや、だって黙って行かないと、帝国側へ入るって言ったらファー怒るし止めるでしょ。

 本来この依頼は国扱いじゃないのよ。

 フローレンスちゃんの父親、アルマ村長が娘が騙されないか見てきてくれって、凄いお願いされてね。

 だからこっそり来て、こっそり見てきて直ぐ戻ればいいかなーって、もちろん問題があればこっそり助けようと思っていたし、まぁ今は連絡取っているしいいかなって」

「自分とコーネリアは隊長がこっそり村を出て行くのを視て付いて来た」


 アデーレが簡潔に喋る。


「もう一人で来るつもりだったのに、姑に付きまとわれている気分だわ」


 文句は言いつつも顔は笑っており信頼の証なのが視てわかる。

 アデーレがマリエルに話しかける。


「では、隊長、目的も済んだので帰りましょう。

 万が一聖騎士が帝国に居ると解ったら大問題です」

「うう、それよね。

 帰ったら全部押し付けてきたファーに殺されそうだわ」


 肩を落とすマリエルに、フローレンスお嬢様がマリエルへと向き直る。


「何、フローレンスちゃん」

「子供扱いしないでよっ!

 そ、その。

 助けに来てくれたのよね、ありがとうございます」


 マリエルも僕も驚きで眼が点になる。

 まさかお礼を言うとは思わなかったからだ。


「いいのよ、色々と気になる事多いし、好きでやっているのだから。

 それに彼に会いたいってのもあったのよね」


 僕の顔みて不敵に笑うマリエル。

 

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