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36 番外 ヒバリの思惑

 今でもたまに思い出す。 

 

 ヒバリ……。

 ヒバリ…………。

 ヒバリっ!


 私に言っているのか?。

 眼をあけると、ぼさぼさ頭で、目の下はクマ、衣服には謎の染みが多く、極めつけは汗臭い女子力ゼロの少女が私を呼んでいる。


「私の言葉はわかる?」

「まって、今整理します」


 周りを確認する。

 所狭しに詰まれた本、ガラス管、ノコギリや鉄。

 そして、推理するには一番大きい理由。

 私の中にあるはずの無い記憶。


「おそらく、私は大雛すずめのコピーされた人間。

 人造人間という奴でしょうか」

「正解っ!

 すずめの別名でヒバリちゃん。

 で、あっちにまだ寝ているのが、あなたの妹で……」


 スズメは、ガラスケースに入っている人造人間を指差す。

 答えは知っている。


「知ってます、ヒメヒナですね」


 私と同じ顔のスズメは手を叩いて拍手しだした。

 私の記憶では、海で溺れて異世界転移でこの世界へ来た。

 魔力が桁違いにあった私。

 イヤ、既に別固体であるので、私にはそこまで魔力はないだろう。


 目の前に居るスズメはその魔力を使ってトラブルを解決していた。

 現在は若い王子と恋仲になり、城に住んでいる。

 そして、人の仕業としては鬼畜な事をしている人間がいるのを偶然しった。

 その情報を手に入れると、王子を振り切って、そこに捕われている人間を助けに行った。

 でも、既に手遅れだった。


 館からは二人の少女の遺体、なんとか助けたい。

 前々から思案にいれていた人造人間を作る事にした。

 までは……なんとか覚えている。


「元の少女であった時の記憶がありません」

「魔力と一緒に記憶や経験も継承したと思う。

 元の記憶は消えたのまでは予想外ね……、迷惑だった?」

「いいえ、助けてくれたんでしょうし感謝します。

 ここからは別固体として、生きていこうと思いますし」


 それからは、妹のヒメヒナと一緒にスズメをサポートして生きてきた。

 どれぐらいの月日がたっただろう。

 予想外の事がおき始めた。


 スズメの老化と、人造人間の違い。

 結婚し子供も何人も作ったスズメに対しして、わがはい達二人は歳を取らなかったし、子供も出来なかった。

 そして恐れていた事、スズメの老化による寿命が迫ってきていた。

 スズメの老化を抑えるために、わがはいは、妹のヒメヒナと話し合い魔道具を作った。

 常に身に着けていられる物がいい、ネックレス、指輪、話し合った結果篭手となった。

 適度に大きく、無くす事もない。


 スズメは、わがはい達を笑って見ているだけで、自分の寿命には差ほど興味なさそうだった。

 それでも、研究が行き詰ると自らの知識と魔力で手助けしてくれた。

 傷を治す篭手、力を増幅させる篭手などは出来た。

 しかし、老化を抑える篭手は出来ない。

 その研究中、あっけないほど簡単にスズメは逝った。

 わがはい達はスズメの死去、遺言通りに一つの箱を貰った。

 中には黒い篭手と、手紙があった。


 既に出来ていたのじゃ……。

 ならなぜ使わん。

 手紙には、既に出来上がりがあった事を詫びていた。

 危険すぎる事や、作ったはいいけど使う予定が無い事、自分はもういいから好きに生きて欲しいとの事。


 わがはいも、妹も早速黒篭手を使ってみた。

 スズメの死を無かった事にする。

 膨大な魔力は感じるが、説明どおりに使っても何も起きない。

 結果、人間じゃないから、篭手に選ばれなかったと推測した。


 わがはいは決めた。

 スズメの日記から、人造人間といえと不老であり不死ではないらしい。

 ならば、命の続く限りこの城を守ろう。

 それから暫くすると、黒篭手とスズメのヒマゴが行方不明になった。

 ヒメヒナも、もうこの時には城には居ない。

 わがはいは既に城には居なければならない存在になっており動く事もできん。

 あの篭手は危険じゃ見つけ次第手元に保管する。

 スズメが残した道具じゃ、誰にも使わせるものかっ。


「……ま、ヒバリ様っ」

「んあ? なんじゃ。

 メリーアンヌか、わがはいの部屋まで来て何のようじゃ?」

「考え事の最中すみません。

 孫からの手紙で、ヒバリ様が言っていた篭手らしき者をもった少年が……」

「なんじゃとっ!」


 メリーアンヌから手紙を奪い取る。

 無地であり黒い篭手をつけた人間を見つけた。

 傷の治りが早く、現在は保護したと書いてあった。

 帝国のハグレも狙っているらしく抗戦し撃退。


 わがはいが作った篭手には、全てリュウなどの細工をしておる。

 真っ黒で無地、間違いない……。


「あいにくと、第七部隊の隊長マリエルも処遇を困っているらしくて」

「よし、城へと呼び寄せよ。

 わがはいが確認する、決して悟られず逃げられないようにな

 それと、その少年をあまり刺激しないほうがいい、何が起きるかわからん」

「では、そのように手配いたしますわ」

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