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絶望の世界に、光を   作者: しらつゆ
第二章 ラリージャ王朝 冒険編 
17/69

第十二話 私は武器を手にする

編集 1月13日 22:27

今後のストーリーで武器の設定が変わっていたので編集しました


 


「こんにちはー!誰か居ますか?」


 リアがある一軒の建物の前で足を止め、ドアの前で大声で叫ぶ。

 私達はさっき一緒に掘った魔石を入れた袋を持ち、ここまでやってきたのだ。

 建物の煙突からは煙が上がっていて、中から錆びた鉄の香りがする。カンカン……という金属を叩く音もする。建物の中から漏れ出す熱風も感じられる。


「あらあら、こんにちは。魔石取ってきてくれたのかい?」


 ドアが開いて顔を覗かせたのは一人の年配の男性だった。腕の筋肉が太く、体は全体的に筋肉質。長年鍛治師をやっていた様子が伺える。

 ドアを開けた途端、外にいても感じられた熱風はさらに熱さを増した。


「はいっこれ!さっきそこの三人と取ってきたの!あげる!」


 リアは満面の笑みで鍛冶師に袋ごと魔石を手渡す。

 魔術を使って豪快に周りの岩ごと削り取ったので大きさはバラバラだが、赤に青に黄色に水色……さまざまな色を放つ魔石をたくさん取ってきた。


「いつもありがとう、助かるよ。報酬、何がいいかな?」


 私は鍛冶屋の壁に掛かっている様々な武器に目をやる。刀がメインだが、奥の方に杖も見えた。

 私は剣術はやったことが無いが、光属性の特性を持っていることが判明したから、その魔術を覚えて戦う術を身につけることに決めた。


「その杖……気になるのかい?」


 私の視線を見て、鍛治師はそう声をかけてくる。


「はい、私は剣術よりも魔術の方で戦いたいなと思っているので……」

「武器は何処にやったのかい?」


 普通なら誰もが聞くこの質問を今まであまりされて来なかったが、鍛冶師なら聞くよね……

 私は正直に答える。


「実は、まだ自分専用の武器が無いんです。ギルドで貸し出しもできるのですが、自分に合いそうなのがなかなか無くって……」

「ちなみに、あなたの得意魔法属性は?」

「黄色い魔石だけが強く反応を示したので、光属性だと……」

「光属性だって!?」


 私が最後まで言い終わる前に鍛冶師は目を丸くした。


「やっぱり、珍しいんですかね?」

「珍しいさ。多くは炎と水。その次は風だからな……」

「そうなんですね……」


 そういえば、名前言ってなかったな……ずっと鍛治師と呼ぶのもおかしいし、自己紹介ぐらいしておこう。


「申し遅れましたが、私はリトルと申します。専門は治癒系魔術。後ろにいるのは金髪の方がスケール、隣はルティア。あとそこの魔術師はリアです。私達は四人パーティで活動しています。よろしくお願いします」

「俺はガーディー。ここで鍛治師をしている。今までに一万個ほどの武器を作ってきた」


 一万個……という数値に少々驚いたが、そりゃかなりの年数やってそうだし、そのぐらいは作ってても当たり前か。


「それで……リトルちゃんは光属性、魔術を使って攻撃……だったらリアちゃんみたいに杖で大丈夫そうだね」


 メモに炭で情報を書き記していく。


「ありがとうございます」


 無意識に私はそう言っていた。


「それはこっちの言葉だよ。魔石がないんじゃ何も始まらない。だが、俺らは見ての通りただの鍛治師……洞窟でモンスターと遭遇したらやられるだろうから行けないんだよ……魔力はあってもそれを操れるかはまた別問題だ」

「それで依頼を出していたんですね」

「そういうことだ。さて……光の魔石で杖となると……これしか今うちに無いんだが、これで大丈夫か?」


 ガーディは鍛治屋の奥から一本の杖を出してきた。

 作りたての香り。先端に磨かれた、美しい黄色を放つ光の魔石……

 持ってみると、結構ずっしりくる。やや長めの杖だが、重みがある。魔力が流れやすくなった気もする。


「すごいです……!!こんなの、貰っていいんですか?」

「持ってきな。サービスだ。それに光属性の魔力を持つものは少ない。だから余ってたのさ」


 私はそれをぎゅっと握りしめる。


「ありがとうございます!」


 全員でお礼をして、そこから出て行こうとした。しかし……


「そこのお嬢ちゃん、ルティアと言ったか…?その短刀、貸し出し用のだよな?」


 言われたくもない事を言われてしまった………見れば分かる。貸し出し用と書かれたタグついてるし。


「そ、そうです……」

 少々恥ずかしがりながら小さく口にする。

 まあ……恥ずかしいよな……


「君の属性はなんだい?」


 そういえば、私はルティアの属性を知らない。


「多分『炎』です」


 そうだったの?

 私はルティアをチラリとみる。


「魔石に触ってみたところ、赤い魔石が強い反応を示しました」


 そうだったのか……リアと同じだな……


 炎属性は何かと役に立つ。だが、パーティメンバー的には水が欲しかったな。


「そうかそうか……『炎』はたくさん作っているからな。じゃあ君にはこれをやろう。代金は取らないよ」

「……え……そんな……いいんですか?」


 ルティアの手には光に照らされると淡い赤色に輝く、美しい短剣(ショートソード)が渡された。

 驚くルティア……それは私も同感だ。いくら報酬とはいえ、これだけ立派なものを二つも……



「代金は払いますよ……」


 ルティアは布袋からお金を取り出そうとしたが、ガーディは首を振った。


「いいから持ってけ。その代わり、ちゃんと使ってくれよ」

「もちろんです……」


 ルティアはそれをぎゅっと握りしめた。

 スケールには既に自分の武器があるからいいとして……



「本当にありがとうございました!」


 私達は再び鍛治師・ガーディにお礼をしてその場を後にした。






           ✳︎





 

「いいなぁ……ルティア、リトル」

「全く……これだから君達は……」


 リアとスケールは羨ましそうにそう言った。でもこれは鍛冶屋の善意からくるものだ。これだけ優しい人を私は初めて見た。大事にしなくては……


 後は装備だな。武器は手に入れた。でも装備はまだ貸し出し用のまま。この際だし、買っていくか。


「装備屋……ちょっと行ってもいいかな?」


 目の前にそれらしい建物があったので入ることにした。


「いらっしゃい」

 これまたおじさんが店の隅に座っていた。少し古風な風情のある店だ。


 私はハンガーにかかっている様々な装備に目を輝かせながら一つずつ見ていった。


 値段はどのぐらいだろうか……


 うんうん……大体5000〜10000ビズと言ったところか。私達が研究所から貰っていたお小遣いを合わせても二つは買えそうだな。

 雪山の依頼で貰った高額なお金……無駄遣いしたくないと思って、ずっと持っておこうと思った。

 でも装備は必要だ。無駄遣いではない。せっかくだし、使うか。


「おすすめ……何かありますか?」


 おじさんに声をかけると色々と紹介してくれた。


「これはヘイリーベアの毛皮から作った物だ。ふわふわの生地で暖かいし、破れにくい。あとこれは薄皮だが、引っ張っても簡単には伸びないぐらい丈夫なローブだ。お嬢ちゃんは魔術師っぽいからローブが似合うと思うよ」


 私もそう思っていたところだ。奥の方に荘厳な装備もあるが、私は見た目も大事にしたい。

 リアの来ているローブは本当に可愛い。このぐらいのだと嬉しい。



「ああ、ちなみにローブだけなら、そこの魔術師のお嬢ちゃんと似たようなのがあるよ」



 おじさんは奥から一個のローブを出してきた。

 値札は10000ビズ。

 全体的に茶色。ゴールドの装飾。生地は硬め。

 私は光属性だから装飾の色的にもゴールドでちょうどいい。リアとちょっと違うのは丈が長めということか。膝ぐらいまである。私が今着ているのは腰ぐらいまでしか無く、装備効果は薄い。このぐらい長さがある方がいいな。


「じゃあ、これ下さい」

 これに決めた。これがいい。


「毎度あり〜」

 私はお金を渡し、それを受け取った。着てみる。すごく暖かい。肌触りも最高である。


 次はルティアのか。


「ルティアはどうする?」


 振り返ってみてみると気に入ったのか既に手に一つ……ローブを手にしていた。グレーのローブ。やっぱりどこか私に似ている。丈が長いところとかもお揃いだ。


「これでいいの……?」

「うん!私これがいい!」


 一個の店で決まった。決めるのが本当に早い。

 お値段は……私の半額…!安くて助かる。


 私が布袋を出そうとしたが、ルティアも出した。


「自分で買うの?」

 私は聞く。ルティアってまだ冒険者を少ししかやっていない。少しどころか三回依頼をこなしただけ。


「研究所から貰ってたお小遣い。使わずに貯めてたの」


 あれ……?でも私そんなに貰ってないぞ?どういう格差だ?

 ああ……そうか。私の方が年下だからか。まあいい。自分のお小遣いで買うならありがたい。


「分かった。じゃあそれは自分で買うのね」

「うん!」


 ルティアは自分でそれを買った。布袋は一瞬にして萎んだ。いくら入ってたのかは分からないが、おそらく殆ど使い切っただろう。



 さて……これで全員自分の武器と装備を手に入れた。これから研究員と戦うことも十分あり得る……というよりずっとこんな平穏が続く訳がない。


襲われる前に自分の装備を手に入れられてよかった。





           ✳︎



 


 私達はギルドに戻ってきた。借りていた装備を返すためだ。


「これ、貸していただきありがとうございました」


 あまり汚れていない。だが、かなり着たから洗濯しようかと思ったが、洗濯は不要ということなのでそのまま受付に手渡した。


 せっかくなので辺りを見回してみる。

 ミラサイト達はいるかな……?


「あ!ミラサイト!!」


 探していると、リアが真っ先に見つけた。

 本当によく会う。依頼本当にやっているのだろうかと疑うぐらいだ。

 プティル、ジュアも一緒だ。ジュアは何やら依頼書を眺めている。どうやらそっちはそっちで依頼をちゃんとこなしているらしい。毎回会うが、ある意味奇跡なのかな。


「おお、リア!元気そうだな」

「心配しなくても、私は元気だよ」


 リアは満面の笑みで再開を喜ぶ。


「それにリトルもルティアも自分の武器と装備、手に入れたんだな」

「はい、無事に手に入れました。これもあなたのお陰です。本当にありがとうございます」


 ミラサイトから報酬がなければ今頃まだ貸し出し用のままだった。ミラサイト達から報酬をもらったからこれらを買えたのだ。


「雪山の件で貰ったあなた方から貰った報酬でそれぞれ買ったのですよ。ルティアだけは自分のお小遣いで……」

 

 スケールはそう補足する。


「そうなんだな。そういう使い方してくれて良かったよ。見た感じ君は装備が全部貸し出しみたいだったから自分用の装備をと思ってちょっと多めに報酬渡したのさ」

「そうだったんですね」


 ミラサイト達は椅子から立ち上がった。


「さて、俺たちは次の依頼に行ってくる。リア、これからも元気でな。リトル、ルティア、スケール。リアのこと頼みます」

「任せてください。リアは強いから俺達にとっても助かってますよ」

「それは良かった」


 ミラサイト達は私達に手を振ってギルドから出ていった。


「くれぐれもお気をつけて!」


 


 私達も新しい依頼を……と思ったが。


「リトル、光属性の魔術なんかできるの?」


 リアはそう聞いてきた。

 私は武器を手に入れた。しかし、それだけで魔術は使ったことがない。光属性の魔術は詠唱すら知らない。武器を手にしただけで魔術を使えるようになったわけではないのだ。


「じゃあ、次は魔術習得だね!図書館行こうか」

「そうだね」


 ルティアもスケールも賛成した。


「俺も今まで冒険者やってきたけど、使える技は少ないんだ。もっと覚えたい」

「私も!魔術使える様にしたい!」


 ルティアは剣術だろ……?

 と心の中で思ったが、両方できた方がすごい。




 私達は図書館へ行くこととなった。






これでリトルも戦える様になりそうです。ようやくです。ようやく冒険者らしくなってきました!

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― 新着の感想 ―
ガーディーさんすっごくいい人!ありがたいですね(*´ω`*) これで一通り皆の装備も揃って、リトルさんの光の杖とかそれぞれのローブとか見た目を想像しながら読みました! リトルさんが使える光属性の魔術…
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