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津軽の青春と時々牛(ベゴ)

作者: 霜月ぷよ
掲載日:2022/10/11

中身がっぱど津軽弁だはんでが、津軽出身の人でねば、読むのたんげめんどくせぇやぁ~。もし面白ぇがったらコメントよろしぐ頼むじゃ。へばの(じゃあね)!

 ここは本州最北の地、青森県。 五所川原市金木。田んぼと畑と牧場が広がる閑静なド田舎。


 道を往来するのは人かベゴか。はたまた高級車ならばトラクターや軽トラという名のオープンカーか。小学生中学生は鞄を背負って学校さ。おどどじっちゃは刈払機を担いで草刈さ。

 今日も田舎の平和を守るため、お巡り毎日ぐ~るぐるっと来たもんだ。





 べべべべべべ!ブンブンブンブン!


 パララパラリラパラパラリ~パラリラパラリラ~♪

 ブンブンブン!



「こりゃあ!そごの原チャ、止まれぇこの!パラリパラリってしゃしねねこのぉ!どごのいぐねわらすだば!」


「ぅわっつぁ!お巡りだ。やんべ!ゆーたーんゆーたーん!」


「おめぇ、トモキのどごの長男坊のヤスキだべ!まンだいぐねぇごとばりおべでこのぉ!」


 べべべべーー!


「あっ、逃げだな!?待でこのわらす!待でって!」


 お巡り毎日ぐ~るぐる。わらすこ毎日パラリラリ~。





「さあ、てっぺけぇ。てっぺ食って性ば付けで、かがさ元気だ子っこ生ませねば。どんどんけぇ。かがごともてっぺ行がせねば、男が廃るどぉ!」


 斎藤トモキ。45歳。妻と子供3人を養う大黒柱。畜産農家。


「おめぇ、べごさ何喋っちゃんだばや。スケベばり喋ってねぇで手動がせじゃ!」


 妻、サエ子。44歳。スケベな大黒柱と子供3人の手綱をしっかり掴んでいる女城主。


「お~。おがったおがった。よしよし。お母さんのおっぱい飲んで早ぐおっきぐなれぇ~」


「ん~……。この子は順調だな。三日前に生まれだばっかしだんずに、もうこったにおがったが。よしよし。お母さんのツッコ飲んで早ぐ丈夫さなれよ」


「他の子も順調におがってらいんただな」


「うんうん。ヨシヨシ。ってごとで、へばワァも、明日の元気の為に、かがのツッコ飲むがな!」


 いつの間やら妻サエコの後ろにいたトモキの手は、そろりそろりとサエコの胸のへ……。


「何っしゃんずや!気持ち悪りぃじゃ。そったに元気なりてんだば、がだっきゃ黒ニンニクでも食ってながな!」


「黒ニンニク毎日食ってらはんでが、元気ムラムラだんだべな」


「しゃしねって!その手つきやめれって!」


「がのツッコ見てして、ワァの分身ちむどんどんしてきたじゃ」


「ちむどんどんの使い方間違っちゃーはんで。沖縄県民どNHKさ謝れじゃ!」


「先っちょ、乳首だけでいいはんでが……って!?」


「刺し殺すよ?いい加減やめれ?」


 牛の餌藁に使うステンレスフォークを持った凍てつく笑顔の妻サエコ。


「さぁーせんした!」


 本当に刺して来そうな覇気を感じたトモキは、競歩歩行で逃げて行った。


「まぁーったくいい歳こいであのスケベオヤジが……」


 一心不乱にお母さん牛のおっぱいを飲む子牛の姿をしばらく眺めて、心を落ち着かせるサエコだった。


 トモキのアホスケベ……!ワァもちょっとだげちむどんどんしてまったべや……。ワァも沖縄県民さ謝らねばまいねし。


「さて……、そろそろカナどサトルも学校がら帰って来る時間だべし、晩飯の支度するがな」






 ヘンテコな外装の原チャリを乗り回し、度々お巡りと鬼ごっこを繰り返す光景は、商店街では少々嫌われものだが、田んぼや畑、家の庭などで余生を過ごすお年寄り方にとってはちょっとした娯楽になっていた。


 ヤスキ。17歳。彼女無し。

 高校の修学旅行で初めて東京の暴走族を見て衝撃を受けたヤスキは、就職と一人暮らしの為に貯めていたバイト代をほぼ全て原チャリとその外装費に使ってしまった。

 実家がバイク修理屋の先輩に頼み込んで改造してもらい、ついに出来上がった改造原チャリを、走らせて有頂天になれたのもほんの数分。原チャリ独特のしょっぱいマフラー音を鳴らして蛇行運転すること約50メートル。


「あ~い、ハイハイハイ。そごの原チャリ~、一回止まれぇ~!」


「は?」


「え~っと?改造車両?蛇行運転に危険運転?それからぁ~?」


「ちょい、お巡りさん、ワァなんも悪りぃごとしてねぇべよ」


「あン?あのね、改造車での蛇行、危険運転は充分悪いごとだんだよ?」


「こご田んぼしか無ぇ農道だべしゃ!今の時期だっきゃトラクターも走んねぇべよ!」


「ハイ!軽トラは走ります」


 二人の横を軽トラが2台通過していった。




「バガこのっ!県道走ってお巡りの世話さなるぐらいだば、家の農場走れこの!」


 父トモキに怒鳴られるヤスキ。


「バガこのっ!そったごとせば、うぢの馬だの牛だのビックリしてまうべなこの!もう少しもの考えでがらしゃべれ!」


 父トモキが妻サエコに怒られていた。


 結局ヤスキは、お巡りのお世話になったということで、学校は一週間の自宅謹慎。原チャリは没収ということになったのだった。


「おう、ヤスキ起ぎじゃあな?」


「あン、何?」


「暇だばべごの散歩して来いじゃ」


「はぁ?ワァ自宅謹慎だべよ!?」


「家業手伝うんだば″自宅″同然だべ?」


「……は?」


 父トモキの言っている意味が全く分からないヤスキ。


「県道ば原チャリで走れらねば良いんだべ?べごの散歩は別に問題無ぇべよ」


「…………?まぁ、歩ぎだし」


「よし!行ってこい!」





 断れるだけの理由も無ければ、断れる立場でもないヤスキは嫌々ながら牛2頭の散歩に出掛けた。

 父トモキ曰く、メスの方が愛ちゃんで、オスの方が誠ちゃん。だそうだ。


〔二人は今一番イイ感じのカップルだ。あどは誠ちゃんがプロポーズさえ出来れば愛ちゃんは何も言わずにOKしてくれるはずだ!〕


 ……らしい。


「なしてワァがべごのカップルのデートさ付き合わねばまいねぇのさぁ~。しかも、もしかしたら今日がプロポーズの日さなるがもしれねぇってが?」


 ヤスキはチラリと、2頭の牛の視線を気にしてみる。


(……いや、べごのカップルの雰囲気とか分かるわげねぇし!ホントにこの2頭デキでらのが!?)





 約2時間後―――。


「ただいま……」


「おかえりヤスキ」


「……おぅ」


「……?どした?」


「あいつらヤった……」


「は?」


「ヤった……」


「な、何?意味分がんねぇし、はっきり喋れ!」


「愛ちゃんど誠ちゃんが交尾した!」


「えっ……、それ本当!?」


「冗談で″交尾した″とか喋んねぇし!」


「やったぁー!お父さんさ教えねば!」


 サエコは喜びつつも慌ててトモキに教えに牛舎の方へと走って行った。ヤスキはそんな母の後ろ姿を見るともなしに見ながら、


「誠、がっぱ腰振ったったなぁ~。なんか気まずなぁ~……。あどちょっとムラムラしてきたがも……」


 牛のカップルのあとの世話は両親に任せ、ヤスキは無言で自分の部屋へと帰って行った。


 その後。


「牛さんのどんずデケェー!」


「ドンズデケェー!おにぃちゃん、ドンズって何ぃ~?」


「カナはどんずも分がんねぇのが?どんずはケッツ!」


「ケッツ?」


 サトルはわざと妹のカナをからかい、カナは更に悩む。


「カナ、お尻のごどば、津軽弁で『どんず』って呼ぶんだよ」


 牛2頭の先頭を歩くヤスキが優しく教える。


「ケッツは?」


「ケッツもお尻のごと」


「分がった。牛さんのどんずでけぇー!」


「どんずぅー!」


 まだ小さいカナとサトルは、無邪気に下ネタを叫んで楽しんでいた。


「「どんずぅー!どんずぅー!どんずぅー!」」


「おめんど、大声でどんずどんずしゃしねぇ!めぐせぇはんであんま喋んな!」


 なんだかんだと賑やかな人間の子供たちを見る2頭の牛(愛と誠ちゃん)のカップルの目は、どこか微笑ましそうにしていた。





「先生、どんだいんた?」


「う~ん……。残念ながらこれは、流産だな」


「…………」


 サエコは唇をギュッと閉じて俯いた。


「やっぱしがぁ~……」


 トモキもまた、深いため息とともに呟いた。

 メス牛の愛ちゃんの初の子供は流産だと、獣医から診断された。


「こういうごとは他の牧場でもよぐあるごとだね。あんましそう気ぃ落どさねで。暗ぐしてればべごさも影響してまうし。いつも通り元気に世話してやんねば」


「んだ!先生の言う通りだ。次だ次!」


「んだね。愛ちゃん、次頑張ろう!」


「誠、次だ!次こそだ!ケッパレ。ワァもケッパルはんで!」





 1980年。ある社会現象が、テレビの電波に乗って五所川原に届いた。

 暴走族風の衣装を着た猫【日本暴猫連合】通称《なめ猫》が一世を風靡。町の書店、デパートなどで、雑誌、グッズなどが売れ始めた。暴走族の衣装も、一部の若者の好奇心を釘付けし、もはやファッションの最先端と言われるまでなっていた。

 学ラン特攻服の刺繍も、個性とインパクトが最高のモテポイントとされ、皆こぞって着飾った。

 ヤスキも漏れ無くそのブームの煽りを受け、特注の特攻服を羽織って町へと繰り出した。あの原チャリも再び出動。外装も更にグレードアップしていたりする。


 パララパラリラパラリラリ パラリラパラリラ~♪


「いぇい!いぇい!いぇい!」


 田んぼと畑に囲まれた農道を、軽快なラッパ音を響かせて、タッタッタッタ……と低速で走るヤスキ。

 と、そこへ。


「ちょっちょっちょっちょい、待で待で待で、オイオイオイ。そごの原付ちょっと止まれ」


「なんすか?」


 と言いながらゆっくりと、通りすぎて行く……。


「……って通りすぎるなコラァ。止まれったら直ちに止まりなさい!」


「いや、制動距離あるはんで」


「すったに飛ばしてねぇべなこのぉ。『なんすか?』って喋ってがら何メートル過ぎだばよ!?それより何だばこの原付?」


「ヤンキースタイルのデコトラ風原チャリ。略してデコチャっす」


「デコトラ風……」


 ~パララパラリラパラリラリ パラリラ パラリラ~♪


「いぇい!いぇい!いぇい!」


「しゃしね!やめれそれ!あど、その『いぇい!いぇい!いぇい!』て間の手は何だ!?」


「あれ、気付がねぇすか?吉幾三の【俺はぜったいプレスリー】」


「吉幾三?」


「オラは田舎のプレスリー、田舎のプレスリー。イェイ!イェイ!イェイ!」


「おお!ラッパの音もそのリズムが?」


「んだっす」


「おぅ。吉幾三だば許すが。次、これは何だば?」


 お巡りが指を指したのは、原チャリのフロントボディーに書かれた《なめんなよべご》。そして後ろには、ツーシート用の背もたれ。そこには《愛と誠ちゃん》ときらびやかなデザインに、且つ達筆な文字で描かれていた。


「愛と誠ちゃんっつーのは、ワァが世話してらべごの名前。最近初めて身籠ったんずに流産してまったはんで、その応援の気持ちで」


「おぉ~。おめ以外に偉いどごあるなぁ。ながなが感心だ。感動する話だでば」


「へへへ。照れるな」


「んで、あど、その半被は?」


「これ?これは家さあったんず見つけで着てら。暴走族の特攻服いたんずはながなが買えねぇはんで、替わりにこれ着てらんだばって。なんかカッケェべ。この漢字」


【立佞武多】


 ヤスキのこの反応に、お巡りはまさかと思い、聞いてみた。


「おめこれ、何て読むが分がってらが?」


「……いや。よぐ分がんねぇばって。雑誌で暴走族のバイクの写真とかば見だっきゃ、【夜露死苦】とか【唯我独尊】とか、なんか四文字熟語的でカッケがったはんでが、ワァはこれにしてみだんだ」


(四文字熟語的って……。五所川原市民で立佞武多読めねぇってが?)


「分がった。もう行って良し」


「あ?良んず?」


「行って良し。早ぐ帰ってべごの世話してやれ」


「んだば、へば!」


 ベェーーーン!と小うるさい音をならしながら、漢字の意味も分からずに特攻服替わりに着た、立佞武多の半被をはためかせ、【愛と誠ちゃん】の文字を背中に、颯爽と走って行く。ヤンキーでもなければ暴走族にもなりきれない、ただ東京にかぶれただけのヤスキであった。





 9月某日。昼過ぎ―――。


 トモキとサエコは、再び発情期を迎えた牛のカップル(愛ちゃんと誠ちゃん)の交尾を成功させる為に、神経を尖らせていた。どちらの牛も準備万端。行為が始まればあとは人は手出し無用。トモキとサエコは側で応援するしかない。


「オラァ、誠!愛ちゃんの腰もっとしっかり掴め!ほれ行げ!腰振れ!ケッパレ!奥まで入れで!ドカンとイッパツ男見せろ!」


「…………」


「ちょっと、おめぇの応援の仕方卑猥なんだって。黙って見でらいねぇの?」


「何卑猥だって。メスは腹ふぐれでがら出産までずぅーっと大変だべ?オスは今この時しか命掛げれねぇんだよ」


「まあ………たしかに」


「誠、ケッパレ!元気だ赤ちゃん作れぇ!」


「頑張れ」


「愛ちゃんばいっぱいイガせれ!」


「オイコラァエロオヤジ!」


「何ぃ!?」


「今のは完全にアウトだ。イガせれ!とかやめろし!愛ちゃんば汚す気?」


「わんども3人のわらし作るどき、いっぺぇ感じだべ?」


「そういうの止めれって喋ってらべ!そのイモもいでまうど!」


「オゥフッ!?あはっ……!」


「気持ぢ悪りぃ声出すなじゃ!」


「まだちむどんどんしてきたぁー!わんども今晩久し振りに子作りするが!」


「なっ……何喋っちゃんずや!が馬鹿でな。嫌だじゃ!」


「なしてぇ~!んだばせめで風呂は?風呂一緒に入るが?サエコのナイスバディー久し振りに見てなぁ~!」


「い~や~で~す~。がさ見られたぐねぇし、見られでムラ付がれでも困るし。今更おめの裸も見てぐねぇし!」


「久し振りにワァの分身見で、サエコもちむどんどんしてまうがもしれねぇど?」


「ちむどんどんしねぇし。って、だはんでが、ちむどんどん使い方間違っちゃーって!」



 その頃ヤスキは―――。


「テレビも無ぇ。ラジオも無ぇ。車もそれほど走ってねぇ♪が!」


「お巡り毎日ぐ~るぐる♪って!」


「おらこんな村ぁ嫌だぁ~♪っと!」


「東京でべご飼うだぁ~♪ってが!」


「銀座で山飼うだぁ~♪が?」


「銀座さ山あんだべが……?」




 令和の時代の今では、テレビは当たり前に地デジ。WiFiも飛んでいるし、電気自動車の充電スタンドもある。でもさすがに、銀座で山は買えませんね。



おしまい

さっき、へばのたっきゃ!(じゃあねって言ったし!)

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