047 拝啓
――S級ダンジョン『篝火の霊廟』を踏破してから、早いことに一週間が経った。
まずはクラン『光の騎行』がどうなったのか。気になるだろうから、そこから記すことにする。
副団長は脱退し、団長のオルヴィアンシは片腕を残し死亡。それに伴ってクランは解散。
さまざまな事実が露見して、同時に悪い噂なんかも出回って、残されたメンバーは泣く泣く解散に至ったらしい。
そして団長を殺した俺も、なんらかの処罰を受けることになった。
諸々の事情があったとはいえ、クランの半数および団長を殺したのはやり過ぎだと、エクセリーヌさんに叱られてしまった。事の経緯を説明したとはいえ、当然、無罪放免になるワケがなく。
もちろん覚悟の上でやった。自分のケツは自分で拭ける。言い訳なんてするつもりはない。
……え?
処罰の内容が気になる?
だよな、俺も結構ドキドキした。
ちなみに、この手紙もその罰の一貫だったりする。俺の保護者たる師匠に、近況も兼ねて手紙を送れって、エクセリーヌさんから。
さらにもう一つ、その処罰ってのがあるンだけど……まあ、これはまた今度話すよ。
とりあえず、牢屋にぶち込まれることがないようエクセリーヌさんが色々と取り計らってくれたらしい。
あの人には感謝だ。師匠もお礼いっておいてくれよ。
ああ、それと俺が――いや、俺たちが踏破したダンジョンは、再調査の結果A級からS級へと昇級。
わずか六日間でS級ダンジョンを踏破したっていう噂が大きくなって、結果俺たちはSランクへと特別昇格することになった。
さらにダンジョンの期限付き所有権も渡されたんだが……正直要らないので、これはカルロさんに高値で売っておこうと思う。
あとは……そうそう。俺、フレア・イグニスぶっ倒したよ。
詳細はまた次会ったときに。
長いからさ、この話。もう紙に書ききれねえや。
最後に、大事なことなんだけどさ。
獣神武闘祭って、知ってるか?
当然知ってるよな。師匠もむかし出場したらしいじゃん。
選ばれた六人と帝国が選んだ精鋭六人による対抗仕合。
それの招待状が届いたんだ。俺と、俺の彼女に。
だから、まあ無理して来いとは言わねえけど。
愛弟子の成長っぷりを確かめに来るには、ちょうどいいンじゃねえの?
なんなら出場してもいいンだぜ?
肩を並べて戦うってのも、なかなかに熱い展開じゃねえか。
じゃ、長くなっちまったけど、これで最後だ。
親にもこんな手紙書いたことねえから、めっちゃ恥ずかしい。
またな、師匠。どっかで会おうぜ。
*
「――フレア・イグニスって、儂の因縁の敵じゃあねえかよ……しかも、は? 彼女? そっちの方が気になるわいッッ!!」
「ディゼルさんに弟子って噂、ホントだったんですね? またとったんですか?」
「ああ。そいつの養育費を返すために儂はカルロの下で働いているんだ」
「へえ。団長も思いきったことを……ディゼルさんを顎で使うなんて、あの人らしいけど」
「うむ、全くだ。……それにしても、獣神武闘祭か……懐かしいな」
「五十年に一度開催されるっていうビックイベントじゃないですか。そこに招待されるって、尋常じゃないですね。そのお弟子さん」
「ふむ……」
世界で唯一、中立を謳う国がある。
六千年の歴史を持つ超大国であり、保有する軍事力は強大に過ぎる。
ネロ・ゲマトリアが統治するドミティウス帝国。
そこでは魔人族や犯罪者、奴隷等々、出入りを許されている。
無論、帝都内で犯罪行為を行えば即刻処刑されるものの、おとなしくしていれば誰にでも平等に市民権を得られる。
発展、成長することを尊び、強く在ることに重きをおく。
あらゆるものを受け入れる反面、足を踏み入れたが最後、否応なく成長を余儀なくされ、這いつくばったが最後骨の髄まで喰い尽くされる。
この国以上に、強者と弱者がはっきり分別されている国はない。
弱者から巻き上げるのは強者の特権。
それが嫌なら成り上がれ。それだけの機会は十分に与えているだろう——帝国に住まう者ならば当然の理屈で、それを非難される道理はない。
そんな弱肉強食を地で行く帝国で、五十年に一度行われる『獣神武闘祭』は、各国の重鎮が訪れるほどの一大イベントだ。
「最強を自負してやまない漢たちが覇を競う……招待された人間は大変だぜ、アルマぁ」
なんたって、世の男全員が〝俺こそが最強なんだ〟と自負しているから。
「恒例らしいですね。参加権の奪い合い」
「それに選ばれるような人間がそう易々と代替わりはしねえ。挑んだ相手はウォーミングアップ程度に喰われちまうさ。——しっかし、可哀想なのは……その中で一つだけ特別枠が設けられているってことだ」
「……特別枠?」
「うむ。明らかに、実力に見合っていない者が毎回、必ず一人は選ばれている。そこの奪い合いが激化する」
「へえ……エンターテイメントの塊ですねぇ、帝国って」
過去、その枠を狙って数十人も死人が出ている。
ディゼルが参加した百年前の武闘祭でも、同様に死人が続出した。
「アルマの彼女も……か。嫌な予感がするわい」
自慢の弟子の女が殺される……それに伴い、怒り狂ったアルマが帝国を滅ぼすところまで想像して、ディゼルはドラゴンの頭部から腰を上げた。
「ちょっくら、帝国にでも行って来るぜ」
「へ? 今からですか?」
「カルロに伝えておけ。武闘祭が終わったらまた手伝ってやるってな」
「は、はあ……まあいいですけど。でも、これから向かうってなると一ヶ月はかかりませんか? 開催は二週間後じゃ」
「走れば二日でつく。ゆっくり行っても儂なら一週間だな」
「さっすが、伝説の男。いうことが違いますね」
「あとは頼んだぞ」
それだけ告げて、ディゼルは赤雷を纏った。
「楽しみだぜ、なあアルマ」
ディゼルは愉悦を溢して、疾る。
かわいい弟子の成長っぷりを確かめるため。
かわいい弟子が選んだ女を拝みにいくため。
そして、あの日……伝えられなかった言葉と〝頼み事〟をアルマに託すため。
ディゼルは疾る。
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