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020 募集

 後に——



「――えと、はい。そうなんです……その、急に服を脱ぎはじめて、すごい肉体(カラダ)でした。……それから雰囲気っていうか……ギルド内の空気? が一気に変わりまして……そうです。その後にすぐ、あの乱闘が始まったんです」



 冒険者ギルド、メラク支部勤務……受付嬢サレン・ショパールは、後にその前代未聞の顛末を、こう語った。




「まさに、武神の再来――圧倒的って、こういうことなんだなぁと……初めて理解()りました」







「――ん……まあ、いい運動にはなったよ」



 荒れ果てた冒険者ギルドの中央で、額の汗を拭った。

 久々に大暴れしてスッキリした。

 やっぱりストレス解消には運動が一番だ。



「しかし、俺もまだまだだな……圧勝ってワケにはいかなかった」



 素のスペックでAランクパーティの連携を捌くには骨が折れた。

 付与魔術を使わずに制圧したかったのだが、流石にそうも言っていられず、《剛体強化(フィジカル・ハイ)》・伍段階(ザ・フィフス)で対応した。



 そこからはもはや、勝負にはならなかったが……大したものだ。俺に、伍段階(ザ・フィフス)を使わせたのだから。

 ともあれ、俺は心からこいつらを賞賛したい。

 勝てないと分かって尚、抗う気概。

 それでこそ、俺の追い求める冒険者の理想像だ。



「なかなか骨のある連中もいたし、定期的に行いたいんだが……どうかな?」


「だ……だめですよ、アルマさま……こんなの、最悪ギルドから追放とかもあり得る話で……!」


「そうなったらサレン、おまえも道連れだからな」


「え……?」


「だっておまえ、見てみぬフリしたじゃん」


「ぅぅ……申し訳ございません」


「ダメだね」


「そ、そこをなんとか……!」


「いいよ」



 涙目のサレンに手を差し出して、握手。

 これでチャラにしてやろう。



「ぅぅぅ……アルマさま、これが友情というヤツなんですね……! サレン、感激です……! サレンは友達が少ないですから……! こういうのは初めてです……ッ」


「俺の周囲の女ってなンで友達少ないンだろうな」


「もしアルマさまが追放されたら、私も一緒に出て行きます……アルマさまの付き人に転職します……!」



 大袈裟に俺の手を上下に振るサレンから視線を逸らして、「まあ大丈夫じゃないかな」と呟いた。



「そ、それはどういう……?」


「いやさ、こンだけ大暴れしても、エクセリーヌさん出てこないじゃん」



 二階の最奥――そこからうっすらと感じるエクセリーヌさんの妖艶な気配に、俺は寒気を感じた。



「……あのひとが問題ないって判断した結果だ。だから大丈夫。咎められないし、何かあったら俺が守ってやっから」


「――――きゅん」


「なんかあっても土下座すれば…………どうした、サレン。顔がキモイぞ」


「ふぁ!?」



 到底、女子がしてはいけないような顔をしていたが……大丈夫だろうか。



「——アルマ。いい加減、服を着なさい」



 と、背後から俺の服が飛んできた。

 


「悪りぃな、カティ」


「タオルも、貸してあげるわ」


「おお、あンがと」


「……喉、乾いてない?」


「いただきます――ていうか、どうした? 至れり尽くせりだな」



 妙に優しい態度のカティアが、ツンとした表情でそっぽを向いた。



「いいから……服、着なさいよ。目のやり場に困るの」


「……見てもいいんだぞ? じっくりと、舐め回すように」


「いいわよ、もうじっくり見つめたから」


「……」


「あれぇ? アルマさま、照れてます? もしかしなくとも、照れてますよね?」



 下卑た笑みで口角を緩めるサレンが、「ねえ、ねえ」としつこく俺を覗き込んできたので、俺もじっくりサレンのちいさな胸を覗き込んでやった。



「大胸筋鍛えると胸も大きくなるらしいぞ」


「――っ、ち、ちっちゃくないです平均サイズですっ!」


「嫌いじゃないぞ、そういうサイズも」


「み、見下さないでくださいっ! 慰めないでくださいっ!!」



 胸を抱いて後退るサレンを、今度は俺が下卑た笑みで見返す。

 瞬間、脛に激痛が走った。



「……アルマ」


「な……なんだ? なに怒ってんだ? ていうか、結構本気で蹴ったろ今……ッ」


「……用件、忘れてない?」


「おっと……すっかり忘れてた」



 そういえば、ここに来た目的はパーティを募集するためだった。

 だからって蹴ることはないと思うんだが……まあかわいいからいいや。



「サレン、パーティメンバーを募集したいんだが、どうすればいい?」


「あ、はい……えと、こちらの用紙に諸々記入いただいて、できましたらこちらの方で貼り出します。もし応募者がいましたら、こちらで仲介させていただく形になりますので、また後日か数時間経って再度お越しください」


「ン、了解」



 羊皮紙とペンを借りた俺は、気絶した冒険者の肉体(カラダ)を数回跨いで、カティアの元に戻ってきた。

 生き残っていたテーブルと椅子を二つ持ってきて、早速記入する。



「んーと、まずAランク以上で……犯罪歴がなくって……強いヤツっと」


「ねえ、アルマ」


「ん?」


「……ありがとう」


「……何が?」


「わたしのために怒ってくれて。うれしかった」


「さっきまでツンツンしてたくせに、急に素直になりやがって……なんか良いことでもあったか?」



 テーブルに肘をついて、穏やかな笑みを浮かべるカティア。

 ベースが無愛想の無表情だから、そのわずかな感情の機微が、とても新鮮で……



「なあ……家と宿、どっち派?」


「……? できれば、家を持ちたいと考えているけれど……それが何?」


「いや……俺も、でっかい屋敷建てたいなあって……考えてた。子供がいっぱいいてもいいように」


「……そう。それがなに? もしかして、家持ちってことも条件につける気?」


「まさか。ダンジョン踏破に関係ねえだろ」


「じゃあなんの意図があっての質問なの?」


「……単純に、気になっただけ」


「ふぅん」



 納得した様子で、カティアは「じゃあ」と言った。



「アルマはどんな女の子がタイプ?」


「………………」


「アルマ? 聞いてる?」



 ああ、こいつ。

 やっぱり、女子会感覚で……。

 きっと、なんも考えずに、女子ならこういう会話しそうだなとか思って、言ってんだろうな。



「もしかして、アルマは男色?」


「ンなわけあるか」


「じゃあ教えて」


「……強いていうなら」



 おまえだよ。なんて、口が裂けても言えなかったから。



「ブロンドで距離感の近い女、かな。あと無愛想」


「ふぅん」



 そんな反応で頷いて、カティアは自分の髪を()いた。





「おもしろかった!」


「続きが気になる!」


「早く読みたい!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 丁度良く同級生がパーティー入りそうですが 魔術師と斥候が欲しいですね(笑)
[一言] これってさ、クランの人間はダメだけど、クランは関係ない個人の冒険者ならOKって事ないよね? この展開見ると、あの人が参加したそうにこっちを見ているって事になるよね?
[一言] やっぱり刃牙じゃねぇかッ!!!!!
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