拝命
三日後。
私とシヴァは今後のドルトの活用について話し合う為に登城した。
「まずは私の考えを言おう。
シヴァ、ミホ、ラーソンの三名をドルトに常駐させ、人間の動向を定期的に報告してもらいたい」
魔王様の発言に私もシヴァも驚いた。
「私もですか?」
「そうだ。ミホとラーソンにはそれぞれの分野で職人として働いてもらう。
シヴァには私の代理として統括責任者になってもらいたい。何か問題があるか?」
「はい。ガロンのことです。
あの子を一人でこちらに残すわけにはいきませんし、かといって連れて行く事も出来ません。
申し訳ありませんが、この任務は別の者にお願いできませんか」
(そうよね。向こうはダンも出入りするからやっぱりガロンは連れて行けないわよね)
やっぱり離れるしか無いのか、と少し落ち込んでいたら、意外なところから声が上がった。
「ちょっといいか?
ガロンの事だが、俺に預からせてくれないか?あいつはなかなか見所がある。
今から鍛えれば将来必ず有望な戦士になるだろう。
訓練所にはガロンと同じ年頃の子供も何人かいる。
あいつにとっていい刺激になると思うがどうだ?」
ベルガーの発言にシヴァは考え込んだ。
「確かに、あの子はこれまで同年代の子供達と接する機会が無かったからな。
友達ができれば寂しさも紛れるかもしれん・・・」
だが心配だ、と呟くシヴァにベルガーは苦笑した。
「おまえがそんなに過保護だとは知らなかったぞ。あいつの可能性を信じたらどうだ」
「私からも一つ」
モリスが立ち上がった。
「シヴァ、ラーソンから伝言だ。
暴走したミホを自分が止められるとは思えないから監視役を頼む、との事だ」
「シヴァ、適任者はあなただけよ。他に誰が出来ると思うの?」
(私は暴走族か何かか?)
心の中で激しく突っ込みを入れながら、私は大人しくしていた。
ガロンの事は心配だけど、シヴァが付いてきてくれるかもしれない。
シヴァは小さくため息をついた。
「・・・分かりました。謹んで、拝命いたします」
ガックリと肩を落としたシヴァの背中を私はポンポンと叩いた。
「シヴァ、落ち込まないで。休みの度に一緒にガロンに会いに行きましょう」
「そうだな。三日に一度は顔を見に行くか」
この間とは完全に逆の立場になった事に気づいた私達は、お互いの顔を見て笑った。
「決まりだな。
ではシヴァとミホには夫婦に偽装して任務に当たってもらおう」
「「は?」」
魔王様の言葉に、私達はまたもや驚いた。
「なぜ夫婦に偽装する必要があるんです?」
モリスがため息まじりに言った。
「シヴァ、昔女共がお前を巡って流血沙汰の争いをしてたのを忘れたのか?」
「・・・初耳だが?一体何の話だ?」
シヴァは本気で心当たりが無いようだった。
「お前な、私がどれだけ苦労したと思ってる。給仕係を何回入れ替えたと思ってるんだ」
「そう言うなモリス、こいつ本当に知らないんだ。シヴァはあいつらと話した事も無い。
あいつらシヴァを遠くから眺めて勝手に憧れて、誰が給仕するかで争ったのが発端だ」
「そうね。あの頃シヴァは誰も寄せ付けない雰囲気だったし、どちらかと言うと怖がられてた。
でも何故だか給仕係の女性ばかりがシヴァに熱を上げてたのよ」
何となく想像がつく。
シヴァは普段もの静かで無表情だけど、美味しいものを食べた時に無意識に笑顔になる。
給仕の女性達は、そのギャップにやられたに違いない。
で、当の本人の関心は女性よりも料理にあったんだろう。
「滞在期間が長ければ、人間と接触する機会も多くなる。
お前に非がある訳ではないが、色恋が絡むと女は怖いからな。
ミホと夫婦という事にしていれば多少の抑制力になるだろう」
「それ私が逆恨みされて刺されたりしませんか?今でもシヴァを好きな人とかいません?」
「昔の事だ。ほとんどはパートナーを見つけてるから大丈夫だろうと思うが・・・」
魔王様がちらりとシヴァを見た。
「分かりました。ミホの防御力を上げる対策をしておきます」
「そういうことだ。魔物の方はシヴァが何とかしてくれる。
ミホは人間の女からシヴァを守ってやってくれ」
「あ、はい。頑張ります」
・・・とは言ったものの、何をどう頑張ればいいのやら。
とりあえず、ここは幹部らしい発言をしておこう。
「あの、そろそろ今後のドルトの活用計画について具体的な話をすすめませんか?」




