魔石
その後、家に帰る事を許された私達は謁見の間を後にした。
魔王の言葉に混乱した私は、気持ちを落ち着けようとお茶を飲んだ。
ふと、神官の言葉を思い出した。
「魔王の影響で森に住まう魔物たちは極めて危険な存在となりました」
これは夜の時代が来て、女神の加護が魔物に与えられたという事だろう。
そして魔王が封じられるのは、女神の加護も弱まりつつある夜の時代の終わりという事だ。
しかし蓮は、ルール違反を犯した神官達に、無理矢理フライングさせられた。
つまり、予定調和だったはずの勇者による魔王討伐は、この場合、無効になる可能性もある。
その事に考えの至った私は真っ青になった。
「やっぱり何もかも、あの神官達が悪い!」
バンッ!と激しくテーブルを叩いたら、音に驚いたガロンがビクッと飛び跳ねて天井に頭を打ち付けた。
シヴァはうずくまったガロンの頭をなでてやりながら、私を非難がましく見た。
「突然どうした?」
「だって本来勇者が降臨するのは50年後で、魔王様も納得の上、封じられるんでしょう?」
いわゆる出来レースだ。
「その通りだ」
「だけど今回は神官達の所為で、無理矢理時期を早められた。
魔王様がそれに応じる必要はないのよね?」
「まあ、そうだな」
「だったら、蓮は?私の息子はどうなるの?
勇者と言っても返り討ちにあう可能性だってあるのよね?
戦争とかになったら、し、死んじゃう、か、も・・・しれ・・ない」
自分の言葉にショックを受けて泣き出した私に、シヴァとガロンは慌てた。
「落ち着け。戦争の可能性が無い訳じゃないが、少なくともこちらから仕掛ける事は無い」
「どういう事?」
「人間は我ら魔物を危険な種族というが、我々にとっても人間は脅威だ。
魔王様は降り掛かる火の粉は払うだろうが、余計な事をして庇護下にある我々を危険な目に遭わせたりしない」
「魔物の方が人間よりもずっと強いんでしょう?何で人間が脅威になるのよ?」
「普通の人間には魔法が使えない。
しかし、魔石という魔力の塊があれば、誰でも魔法を使う事が出来る。
魔石を手に入れるには方法は二つ。
一つは鉱脈から魔石を発掘する事。
まあ、瘴気の溢れる場所だから、人間が長くいるのは難しいがな。
もう一つは魔物が死んだ時。
我々は体内に魔核という魔力の源を持っているが、死ぬと体が消滅して魔石に変化する。
魔物の性質やレベルによって、魔石の色や使える魔法も変わる。
人間は便利な生活の為に魔石を求め、危険を冒しても魔物を狩るのさ」
シヴァがため息をついた。
「だから我々にとって人間は、危険で忌むべき存在だ」




