第23話 スキルを進化させよ!
とりあえず僕は便器ドームのことを忘れた。
とにかく【災害龍】を倒す。それだけを考えることにした。
「お主じゃまだまだ弱い。我がお主を鍛えてやる」
「え?」
「ほれ、こっち来い!」
僕はウィン先生に手を引っ張られて屋敷の外にあるお庭まで移動させられた。
「まず魔法……今はスキルじゃったか。スキルはイメージじゃ。明確にイメージすることでより強くなる。ちょっとあのかかしに目掛けてやってみぃ」
「【ウィンドカッター】!」
「ダメじゃダメじゃ! その程度じゃ傷1つつけられんぞ!!」
僕はウィン先生に言われた通り、かかしに向かって【ウィンドカッター】を使うが、かかしには傷1つつかずダメ出しをくらった。
それからウィン先生による【ウィンドカッター】講習は2時間続いた。シラユキは呑気にお茶を淹れてもらってた。
そして2時間の時が経ち━━━━━━
「【ウィンドカッター】!!!」
遂にかかしの破壊に成功すると1つの表示が出てきた。
『スキル【ウィンドカッター Ⅹ】が【ウィンドエッジ D】へと進化しました』
……D? なんで?
不思議に思っているとスキルの詳細が表示された。
『【ウィンドエッジ D】:【ウィンドカッター】と【ウィンドエッジ】を組み合わせた対ドラゴン専用スキル。100m以内にいる全ての生物を強靭な刃で切り裂く(管理者には当たらない。ドラゴン族に対してのダメージは4倍になる)
取得条件:風のハイエルフによる特殊訓練を受けること』
少し不便になったような気がする。
これってユイと一緒に行動してスキルを使えば完全にアウトだよね。
まあ、シラユキに当たらないなら普段は気にする必要ないし、いいかな?
「うむ、これぐらいで良いじゃろ。他のスキルも強化してやりたいのじゃが、今はみんな災害龍を潰すために出掛けておっての。場所は特定されておるから討伐しに行くとするかの。準備はできてるかの?」
恐らくシラユキには簡易的な2つの選択肢が出てるだろう。
「場所はここじゃ。じゃあ頑張っての」
「「はい?」」
地図を見せるなり笑顔で手を振るウィン先生。僕とシラユキは呆けた声を出した。
え? なにこの人? 手伝ってくれないの?
「ほれ、さっさといかんか。報酬ならギルドに手配してある」
あっ、ダメだこの人。手伝ってすらくれなさそう。
というわけで僕とシラユキは地図に記された場所へと向かうのだった。
「……ダンジョンだね」
「うん」
指定された場所にはダンジョンがあった。
というわけでシラユキはアイテムボックスからカメラを取り出し、毎回恒例の生放送を始める。
「シラユキのダンジョン緊急生放送!! さあ、ネムちゃん! 行くよ!」
僕とシラユキは手を繋いでダンジョンに入る。このダンジョンには制約とか一切無かったので、【災害龍】の討伐とあってか、やはり難しいのだろう。
ダンジョン内に入るとやはり今までとは違って面白みもないただの洞窟になっていた。リスナーたちからも今回は強いヤツに挑むのかと期待していた。
「【ファイアボール】!」
『グピッ!?』
ダンジョン内には今まで見たことのないようなモンスターたちで溢れていた。
そして、奥に進むに連れてダンジョン内部の気温が下がっていくのが感じる。あまりに寒くて僕が震えているとシラユキは僕の衣装を【幼女ちゃんセット】に変更してくれた。
名前はともかくとして、衣装はコートにヘッドフォン、タイツにマフラーととても温かい衣装だった。
この衣装は全てセットで靴もムートンブーツに変わっていて、水色の手袋までしていた。
◇◇◇ リスナーの反応 ◇◇◇
151 幼女ちゃんだ!
152 『I love 幼女』が奉ってる神じゃん!
153 そういえば前回の大会で6位だったな
154 幼女のためなら何でもするヤツらじゃん
155 アイツら超怖い……
156 お前何された!?
◇◇◇ ◇◇◇
どうやらネットでも幼女ちゃんというのはかなり知れ渡ってるらしい。今度シラユキの携帯で検索してみよ。
「これで大丈夫でしょ?」
僕はシラユキと顔を合わせるとゆっくりと頷く。この先にいる【災害龍】というのは氷属性なのだろう。
あのロリババア【ファイアボール】を強化してくれれば良かったのに……
それから少し歩いてダンジョンのボス部屋へと続く扉を見つけたのだが、その扉の真横にある壁が透明なガラス仕様になっていて中が見えるようになっていた。
「ちょっと覗いてみよっか。どーんな感じになってるのかなー?」
僕とシラユキはガラスからボス部屋の様子を一緒に覗くと高さがあるのか真上から見てる感じだった。
ボス部屋を見てみると中には1つの凍った街があり、凄い広いマップになっていた。
そして、その街中を動きまわる全身が氷に覆われた一体の龍。アレが話に聞いてた【災害龍】なのだろう。
『キエエエェェエエェェエエェエェエエ!!!』
頭に響くような強い呻き声がボス部屋から聞こえてくる。
アレは明らかに今までのモンスターたちとはレベルが違った。
リスナーたちも「やべぇよやべぇよ……」としか言ってなかった。
「クエストだから退くことは出来ないし……ネムちゃん、準備するからちょっと待ってて」
シラユキは手に握っていた剣を鞘に戻すとアイテムボックスを弄り始めた。
シラユキのアイテムボックスからは銃火器や大砲などの『マジョリティーオンライン』史上最も火力の出るアイテムが並ぶ。
今回のボス部屋ではマップが広いということもあってか僕はシラユキから離れることができるらしい。
なのでシラユキは僕に【設置型爆弾】を装備させる。僕は爆弾を装備してるだけで手が震える。
「ネムちゃん、大丈夫だから頑張って!」
準備を終えたシラユキはこの前の『ミツマタノオロチ』のダンジョンで手に入れた【絆の鎧】を装備してリスナーの視力にダイレクトアタックしていた。
なのでシラユキは僕にカメラが追跡するように設定するとボス部屋への扉を開けた。
「残念ながら私、超本気なのでリスナーのみんなには見せられないデメリットを背負ってるからネムちゃんの頑張ってる姿が映るようになるけど、みんな応援よろしく!! では行ってきまーす!!」
リスナーたちはまるで聞き分けの良い犬のように返事をしていた。
そして僕とシラユキは手を繋いでボス部屋へと入ったのだった━━━━━━
名称 ネム(サポートキャラ)
ランク:A- 親密度:100%
解説:人気VTuber『シラユキ』の妹。シラユキのことが大好きで、シラユキのためなら何でもする。好きなことは頭を撫でられること。
少し歪んでるが、その姿はとても愛らしく見る者を癒す。
・特性:【自動魅了付与】【破壊不能】
・パラメーター
STR:130(+130) INT:270(+20)
AGI:380 DEX:90%
・スキル(10枠中6枠使用中)
・使用スキル
【ファイアボール Ⅸ】【アイスランス Ⅸ】
【ウィンドエッジ D】
・常時スキル
【歪み始めた人工知能】【守護者】
【パートナーを想う気持ち】
・特殊スキル
【アプリ連動】
・装備品
【契約の腕輪】【絆の短刀】【設置型爆弾】
・固有スキル
ーーーーLv.0




