第1話 終わりと始まり
20XX年、時代が進化するようにVTuberも進化していく。
そして彼らの戦場は動画上からVRゲームへと進出していった。
そんな時代のある日のこと━━━━━━
「危ないっ!」
それはあまりに突然な出来事だった。
トラックの急ブレーキの音、まだ5歳ぐらいの女の子の泣き声。
僕、佐々木夕輝には2つの選択肢が出てきた。
【女の子を庇う】【そのまま見過ごす】
こんなもの、判断するまでも無かった。余程自分が大切な人か他人の事をどうでもいいと思ってる人以外は同じ選択肢を選ぶだろう。
僕は咄嗟に女の子を庇い、高校生という短い人生で幕を閉じたのだった━━━━━━
次に僕が目を覚ますとそこは何もない白い空間だった。
「ここは……?」
周囲を見回しているとコツコツと誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
僕は足音のする方を向くとそこには1人の女性がいたのだ。
「あ、あなたは……!」
僕の前に現れたのは最近テレビやニュースなどで有名なVTuber『シラユキ』だったのだ。
彼女は僕を見て微笑んで話しかけてきたのです。
「ねえ、私の妹にならない?」
彼女の言葉に僕はポカンとして首を傾げた。
するとシラユキは微笑みながら会話を続けた。
「言葉が足りなかったかな? 夕輝くん、キミは死ぬ直前に女の子を助けたよね?」
「はい……」
「その女の子、私なの」
「……え?」
僕は思考が追いつかず、呆けた声を出した。
何故なら僕が助けた女の子はまだ5歳ぐらいの女の子。シラユキの会話能力から考えて、それは確実にあり得ないことなのだ。
するとシラユキは少し怒りっぽい雰囲気を出しながら言った。
「さては私を見た目で年齢を判断したね!? 私これでも15歳なんだよ!?」
もし仮にシラユキの身長が何らかの原因で5歳児に見えたとする。だとしたら何故シラユキは道路の中央で泣いていたのだ。
普通の15歳はまず道路の中央で泣くことはない。仮に泣いていたとしても腕で隠したりする。
わざわざ周囲の人にわかるように大声で泣いてる姿を見せる訳がない。
だから僕は何か事情があるのだと察し、もう死んで消えるぐらいならと思い、彼女に付いていくことを選択した。
「わかりました。妹になります。それで何をすればいいですか?」
「あっ、それはこっちでやるからそこで待ってて」
シラユキの言う通り少し待っていると僕の視野が段々低くなり、身体に違和感を感じた。
するとシラユキは僕に近づいて来て、急に抱きしめてきたのだ。
「かわいい!! どう? 何か変な所ある?」
シラユキは手鏡を渡してくれたので、僕は自分の姿を確認する。
輪郭は丸く、幼い感じを出しつつ、髪色はシラユキと同じ『雪』を連想させる銀髪で、瞳はシラユキの縮小版だと思われないよう光輝く美しい金色の瞳になっていた。
他は基本的に縮小版だが、ある部分だけが圧倒的な差を産み出していた。
「どうしたの? 私の胸が羨ましい? でもこれは私のだけだから誰にもあげなーい!」
シラユキはそう言って僕を抱きしめる。身長はシラユキよりも僕の方が小さく、ちょうどシラユキの胸に顔が収まる。本来なら窒息死一直線だけど、僕はもう死んでいるので窒息することもない。
興奮するかと言われると、しなくはないけど大きくなるモノもないので、一概に興奮してるとは言い難い。
こ、これがパイ乙……! おおっ、なんて柔らかさだ……!
「そういえば名前決めてなかったね。そうだね……ネムちゃん! 今日からキミはねむり姫だ!!」
シラユキが大声で僕を指さしながら言った。
たぶん自分の由来が『しらゆき姫』だから僕の名前も似たやつにしたんだと思う。
シラユキはテレビとかでもこんな感じだったので、裏が無くて安心した。
「そうと決まれば早速ログイン! Pちゃんお願いしまーす!」
シラユキがそう言うと僕たちがいた白い部屋が崩れ始め、僕は目を瞑った。
少し経ってからゆっくりと目を開けるとそこは最近実装されたばかりのVRゲーム『マジョリティーオンライン』の世界だったのだ。
「これがVR……!」
甲高く、とても可愛らしい声が草原に響く。
音や視覚だけでなく、臭いや感触など、これはまるで現実世界そのもの。
VRとはここまで進化をしていたのかと驚いた。
「テレビの撮影なんかも今度からはこのゲーム内で行われるようになったんだよ。だから他のVTuberとかも居るかもしれないよ」
シラユキは僕の手を引いて近くにある街を目指して草原を走り始めたのだった。
まあ、私が身長のあるキャラを主人公にすることなんてありませんよ。
ネムが110cmぐらい。
シラユキが現実世界で115cm、VR空間で157cmですね。
シラユキの場合は最初に5歳児ぐらいの女の子と言ってしまったのでこの身長になってしまいました。




