第11話 このイベント終了まで、私の受ける全てのダメージは0になる!
僕は踏み潰され、今もマッスル星人たちの足下にいる。
マッスル星人の先頭集団は僕を踏みながらシラユキに攻撃を始めた。
「おらおらおらおらおらおら!!」
「きゃあああああああああああああっ!!!」
シラユキのHPゲージが凄まじい勢いで減少していく。もうダメかと諦めたそのとき、シラユキのHPゲージがほんの少し残った所で止まったのだ。
僕はおかしいと思ってシラユキの方を見るが彼女は今もなお、マッスル星人たちによってタコ殴りにされている。
僕の瞳からは涙が溢れた。普段あれほど優しいシラユキが目の前でボコボコにされている。僕はマッスル星人たちが……何も出来ない醜い自分が許せなかった。
シラユキは絶対に僕が━━━━━━
「【アイスランス】!!」
僕が守るんだ━━━━━━!!
僕が【アイスランス】を使うと地面からとても大きな氷の槍が出てきた。
「な、なんだコイツ!?」
「ネム……ちゃん……?」
「【アイスランス】【ファイアボール】【ウィンドカッター】!!!」
僕は無我夢中にスキルを放ち続けた。
HPの尽きたマッスル星人たちは次々と消えていく。そしてユイが驚いてる間に4分の3のマッスル星人を倒した。
「何やってるの! もういい!! 【エクスプロージョン】!!!」
突然過ぎるあまりに焦ったユイは崖であるにも関わらず爆発魔法を放った。
僕はシラユキを崖の外に押してスキルの直撃を避けたが、当然落下した。
「「「きゃあああああああああっ!!!」」」
「「「マッソオオオオオオオオっ!!!」」」
他のマッスル星人やユイたちも爆発魔法の反動で崖が崩れ、見事に全員が崖から落ちた。
高さを考えれば普通に考えて即死である。
「【暴風】!」
ユイはスキルを使って衝撃をやわらげるが、マッスル星人たちはHPやVITに基礎ポイントを振ってないのですぐに消えていった。
そして、僕と一緒に地面に撃墜したシラユキのHPゲージは減っていなかった。
「なんでまだ生きてるのよ!? チート使ってんじゃないわよ!!」
「使ってないよ!?」
言いがかりをしてくるユイとそれを否定するシラユキ。
確かに僕の中身はサポートキャラではなく、元人間。証拠隠滅は既にしてあるだろうが、チートといえばチートではある。
「【ファイアアロー】!」
ユイが突然速効性のある魔法をシラユキに放った。
シラユキはモロに受けたが、そのHPは減ることはなく、僕の身体からとある表示が出てきた。
『【破壊不能】』
この文字を見て僕とシラユキは思い出したのだ。
僕の持っているスキル【歪み始めた人工知能】と【守護者】だ。
【歪み始めた人工知能】は【守護者】の発動率を100%に変えるモノ。
【守護者】は管理者のHPが1以下になるとき50%の確率で発動して、ダメージを4倍にして肩代わりするモノで回数制限が無い。
そして、僕は【破壊不能】を持っている。
つまり、シラユキのHPは1以下にならないのだ。
シラユキは僕と顔を合わせるとにっこりと笑ったが、僕にはシラユキが「余計なことは言うなよ?」と言ってるようにしか見えなかった。
シラユキは両腕を広げながらユイに向かってゆっくりと歩いて行く。
これが強者の歩きなんだと僕は察した。
「【アイスランス】【アクアドレイク】【アースエッジ】!!」
ユイが連続でスキルを打ち放つが、シラユキは全て回避せず、両腕を広げたままユイへと近寄る。
僕はユイに【破壊不能】という文字が見えないように後ろを向いて女の子座りをして揺れる草木を眺めている。
なんとなくだけど、カメラはあの二人ではなくて、僕のことを撮影しているような気がした。
「ふふっ、さっきは随分殴ってくれたね? 私だけたくさん殴られるなんて不公平だと思わない?」
「えっ……ああっ……」
ユイが腰を抜かしてその場にペタリと座り込む音が聞こえた。
僕は咄嗟に耳を抑えて周囲の音がなるべく聞こえないようにするが、次の瞬間、ユイの悲鳴がイベントステージ内に響き渡ったのだった。
その日、彼女に何があったのか、僕たちは永遠に知ることは無かったのだった━━━━━━
こうしてユイのHPが0となり、シラユキの優勝となったのだった。
「シラユキさん、優勝おめでとうございます。最後だけ映像が乱れてネムちゃんしか映ってなかったのですが、あの時は何があったんでしょうか?」
「私とユイちゃんのアツいバトルがあったんですよ」
しれっと嘘をついたシラユキ。アレはバトルなどではない。一方的な蹂躙だ。
その証拠に準優勝チームのリーダーであるユイが横に立っているが、今も震えが止まっていなかった。
司会者は優勝した感想を聞くという段階を無くして今後の『マジョリティーオンライン』についての発表が行われた。
「今度のアップデート終了後からサポートキャラや一部スキルの調整、スマホアプリの連動が行われますので是非期待してお待ちください! アップデートはこの後すぐに行われますのでログアウトしてください!」
司会者がそう言うと次々とプレイヤーたちがログアウトしていく。
シラユキは僕のことを抱きしめて話しかけてきた。
「ありがとね。ネムちゃん」
それだけ言うとシラユキは僕のおでこにキスをして頭を撫でた。
僕はシラユキのぬくもりを感じた。
「じゃあアップデート後にね?」
僕は頷き、にっこりと笑いながらシラユキを見送ったのだった━━━━━━
名称 ネム(サポートキャラ)
ランク:C- 親密度:80%
解説:人気VTuber『シラユキ』の可愛い妹。触れた異性を【魅了】にするが、最近歪み始めた。シラユキのことが大好き。
・特性:【自動魅了付与】、【破壊不能】
・パラメーター
STR:110(+110) INT:210(+20)
AGI:350 DEX:88%
・スキル(10枠中5枠使用中)
・使用スキル
【ファイアボール Ⅳ】 【ウィンドカッター Ⅵ】
【アイスランス Ⅱ】
・常時スキル
【歪み始めた人工知能】【守護者】
・装備品
【契約の腕輪】【絆の短刀】
・固有スキル
ーーーーLv.0




